第161話 突撃
「……そういえば、アッシュは大丈夫なんでしょうか」
思わず俺はそう言葉に出してしまった。思わば、完全にアッシュのことは放置してしまっている。今も一人でホリアのことをこの広大な城の中で探し回っているんじゃないだろうか?
「……それなら、問題ありませんよ。アッシュなら勝手にホリアまでたどり着きます」
俺の疑問になんのことはないという感じでキリが応える。
「え……でも、アッシュは道標もないわけでしょう? どうやって……」
「……以前、まだ私がアッシュのパーティにいた頃の話です。あるダンジョンを探索していた時、ホリアがどこかで迷ってしまったんです。私は今やっているみたいにホリアを探索しようと提案したんですが。アッシュは必要ないって言ったんです」
「必要ないって……じゃあ、ホリアはどうしたんです?」
「……どういうわけか、アッシュは直感的にホリアがこちらにいるってことがわかるみたいなんです。道標も必要なく、アッシュはどんどんダンジョンを進んで行って、最終的に……ホリアを発見したんです」
キリも未だに信じられないという感じで俺に話している。しかし、もし、キリのは話が本当なら、アッシュは自力でホリアを見つけることができるということになるが……
「……ちょっと待ってください」
と、急にサキが口を開いた。
「どうしました、サキ?」
「大人数の……女性の匂いがします。大きな部屋に大勢の女性が居ますね」
「大勢の女性……それって、ロエメスの街から消えた女性ですか?」
「おそらく……ですが、ここ、別に地下牢ってわけではないですよね? つまり、インキュバスが大勢の女性を侍らしている……そういう部屋なんだと思います」
なるほど……どうやら、ようやく俺達はお目当ての部屋にたどり着いたようだ。道標も少し進んだ先で停止している。
そして、その前には……それこそ、王の間につながるようなそこだけ特注な感じの扉がある。
俺達は扉の前に集合し、準備を整える。
「……キリ、いいですか?」
キリには扉に呪文をかけてもらう。しかし……キリが怪訝そうな顔で首を傾げる。
「……この扉、既に開いています」
「え? じゃあ、もうアッシュが……」
俺はリアの方に顔を向ける。リアは小さく頷く。
「……わかっている。姉上のことは心配だが……私はステルスの状態を維持する」
「お願いします。俺達は……このまま部屋の中に飛び込みましょう」
「あ、あの~……私も戦闘力はほぼないのでステルスのままで良いでしょうか?」
と、サキが半笑いを浮かべながらそう聞いてくる。まぁ、実際その通りなのだから、仕方ないのだが。
「……ええ。サキには万が一、この扉の先でアッシュかラティアが怪我をしていたら手当をしてもらいます。いいですね?」
サキが頷くと、俺とキリは顔を見合わせて、小さく頷く。そして……そのまま俺が扉を思いっきり蹴飛ばした。
「ラティア! 無事ですか!?」
部屋に入ると同時に、冷たい大気が俺の頬を撫でる。
部屋の中央にいるのは、ラティア……そして、そのすぐとなりにアッシュがいた。
そして、その周りには大勢の冒険者の装備をした女性達が、彼らを取り囲んでいたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます