第154話 おびき出し作戦
「どうやら、ホリアを心酔させたインキュバスもこの街に寄っていたようですね……しかし、困りました。その勇者に化けているというインキュバスがどこにいるのかわからないとなると……」
「そうですね……ただ、アッシュさんの話を聞くと、この街の周辺でインキュバスに遭遇したんですよね? だったら、この街の周辺を歩いていればあっちから見つけてくれるんじゃないですか? 若い女の子が歩いていれば喜んで飛びついてくるはずですよ」
「インキュバスをおびき出すってことですか? そうですね……」
サキの提案は一理あるが……さすがに危険じゃないだろうか。そもそも、そのインキュバスがどんなやつなのかも未だにわかっていないのだから。
「あ……! でも、それ、私は無理ですね……」
と、そんな提案をした直後に、サキが申し訳無さそうにそう言った。
「え? なぜです?」
「相手がインキュバスとなると、私がサキュバスってことが、その……匂い、っていうんですかね? そういうのでわかっちゃうんですよね……私もたぶんインキュバスなら、なんとなくわかるし……」
「そ、そうですか……それだと、他の人になりますが……」
心酔の影響を受けない、ということでラティア、キリ、サキに援助を要請したわけだが、サキがだめになると、ラティアかキリになるわけだが……
「言いにくいんですが……キリさんは難しいと思います」
と、俺がそう思っていると、サキが気まずそうな表情でそう言い出した。
「……なぜですか?」
あきらかに不機嫌そうな表情でキリはサキを睨む。
「えっと……いや、なんというか……さすがに危険じゃないですか?」
「……もしかして、私が子供っぽいから、インキュバスの趣味に合わないって言いたいんですか?」
キリの言葉にサキがしどろもどろになりながら俺の方に助けを求める視線を向けてくる。かといって、俺も助け舟を出せるようなことを言うことはできないわけだが。
と、キリはわざとらしく大きくため息を付いて首を横にふる。
「……わかりました。別にいいですよ。私はミラ姉様に言われたからついてきただけですし」
と、そう言ってからキリはラティアの方を見る。
「……で、私が駄目となると、この人ですか?」」
キリにそう言われ、俺とサキもラティアのことを見る。
「なんだ? 別に問題ないぞ。我に出来ることなら協力しよう」
ラティアは本当にこれからすることを理解していっているのかわからないが、余裕の笑みを浮かべてそう言った。
しかし、問題は……この作戦をリアが納得するかどうかである。
ああ見えてリアもリアで、かなりラティアに対して過保護な側面がある。危険がある作戦にラティアを一人で行かせるなんて、果たして納得するだろうか……?
「まぁ、私達もミラさんの魔法で隠れて遠くから見守っていれば問題ないんじゃないですか?」
と、俺の心配を見透かしているかのようにそう言ってくるサキ。俺もそれならば大丈夫だろうとは思っていたのだが……果たして……
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