追放された俺が辿り着いたのは、追放者だらけのパーティでした。

第151話 心酔、再び

「えっと……話を聞いた限りでは、私と同じような人の仕業っぽいですね。間違いなく、心酔の能力を使われたんでしょう」

　アッシュの話を聞いて、俺達はさっそく、サキを呼んで連れてきた。サキも話を聞くと、俺達の予想通りの反応を示す。

　アッシュをあまり刺激しないよう、少し離れて俺達は話し合っていた。

「じゃあ……ホリアは、サキュバスに心酔してしまったということです？」

　俺がそう訊ねると、サキは首を横にふる。

「う～ん……その人、男性だったんですよね？　男性だったら、サキュバスではなくインキュバスです。だけど……少し引っかかるんですよね」

　サキは考え込むように腕組をする。

「何が引っかかるのよ？」

　メルが訊ねるとサキは苦笑いしながら応える。

「その……インキュバスは本来あまり人前に出てこない魔物なんですよ。女性冒険者が集まりそうな場所で待ち構えて、そこで相手を心酔させるなんて……自分から冒険者のパーティに話しかけてましてや男性冒険者がいるのに……」

「……ソイツが少し変わったヤツだっただけじゃないの？」

「あはは……まぁ、そうですね。私みたいにパーティが崩壊するのを見るのを楽しむサキュバスがいますから、男性冒険者から女性冒険者を寝取るインキュバスがいるかもしれませね」

「寝取る……そ、そんな……ホリアぁぁぁぁぁ……」

　と、俺達の会話が聞こえてしまったのか、またしても泣き出してしまうアッシュ。と、メルがサキの頭を小突く。

「余計なこと言わないの。もういいわ。アンタは家に戻ってなさい」

　と、メルがそう言うと、サキは不安そうな顔をして俺達を見る。

「えっと……もしかして、インキュバスからその女性を取り戻そうとしてます？」

「まぁ……最終的にはそうなると思うけど……」

　俺がそう応えると、サキは首を横にふる。

「えっと……インキュバスは女性に対して特化した心酔の能力を持っています。そのインキュバスのレベルによりますが、おそらく、皆さんで行った場合、高確率で苦戦すると思います」

「え……じゃあ、どうしろっていうのよ？」

　メルがそう言うとサキは少し得意げな顔で話を続ける。

「そうですね……皆さんには、アストさん以外、この前私にやったみたいに隠れていてもらった方がいいんじゃないですかね？」

「はぁ？　それじゃあ、アスト一人だけで戦え、っていうの？」

「あ……で、でも……困りますよね？　アストさん以外の皆さんが魅了にかかっちゃったら……」

　サキにそう言われて、女性陣は顔を見合わせる。

「……確かに、インキュバスの心酔の能力も、サキュバスと同様な場合、状態異常無効の魔法をかけていても厳しいかもしれないね」

　ミラが冷静にそう言うと、リアもメルも何も言えなくなってしまったようだった。

「その……それならば、どうすればいいんだ？　今回はアスト一人で行くというのか？」

　リアが不安そうにそう言う。サキも少し考え込むようにしてから話を続ける。

「そうですね……心酔の能力って実は効きにくい相手がいるんですよ。例えば、人間だったら、子供っぽい人には効きにくいし……あぁ！　あと、私みたいな女性型の魔物にも効きにくいですね！」

　サキがそう言うと、今一度女性陣は顔を見合わせる。そして、なぜか安心したように頷いていた。

　俺は安心……ではなく、嫌な予感がしたのだった。