第132話 新しいメンバー

「……しかし、大丈夫ですかね」


 ギルドの集会所に向かう途中、俺は思わずそう呟いてしまった。


「大丈夫って……何が?」


「あ、いえ……その……あのサキっていう人、リアに会うって言ってましたけど……ああいう感じの人がリアに会って大丈夫かなぁ、って……」


「……何が言いたいわけ? 意味わからないんだけど……」


 うまく説明できなかったが、俺が言いたいことは集会所にたどり着くと、目の前で実際に繰り広げられていた。


「すごーい! リアさんって強いんですね!」


「フフッ……大したことはない。ただ、私は敵から逃げたことはないからな!」


 集会所で既にリアとサキは出会ってしまっていた。リアはドヤ顔でサキに接しており、サキもリアの話を目を輝かせて聞いている。


「おや、アスト君。来たんだね」


 と、リアから少し離れた場所に、ミラが立っていた。


「ミラ……ミラはあの子……サキとは話しましたか?」


「うん。というか、あれ……何?」


 ミラが横目でサキのことを見る。


「……このパーティに加入希望のヒーラーらしいわ」


 サキが相変わらずの敵意むき出しの視線でサキを見ている。


「ヒーラー……え? じゃあ、ウチのパーティ、ヒーラーが二人に増えるの?」


「そんなわけないでしょ。このパーティのヒーラーはこの私! アンタもそう思うでしょ?!?」


 珍しくメルがミラに迫っていく。ミラも少し驚きながらも小さく頷いている。


「おい! 皆!」


 と、リアが俺たちの方に駆け寄ってくる。


「あ、あぁ、リア……その、今話していたのですが――」


「紹介しよう! このパーティの新しいメンバーのサキだ!」


 ……まぁ、こうなってしまうよな。大方想像できた展開である。


「よろしくお願いします! サキです!」


 満面の笑顔でサキは元気に挨拶をした。


「サキはずっと参加できるパーティを探していたそうなんだ。それで……なんと! このパーティの噂を聞いて参加したいと言うのだ!」


 こちらもこの上なく嬉しそうにそういうリア。まぁ、自分のパーティが噂になっているなんて聞けば、嬉しいのはわからなくもないが……


「はい! リアさんのパーティは、勇者さんも戦士さんも魔法使いさんも、優秀だって聞いていましたから!」


 ……露骨にヒーラーのことには触れていない。チラリとメルを見ると、怒りで少しプルプルと震えているようだった。


「私はサキが参加することは良いことだと思う。もちろん、このパーティにはヒーラーとしてメルがいるが……ヒーラーが増えることはパーティの戦闘をより安全にすることにつながるからな!」


 そう言われてしまうと、否定することができなかった。実際、ヒーラーが二人体制のパーティは少なくない。だが、問題は――


「……私は、嫌なんだけど」


 メルは低い声でそう言った。その場にいた全員がメルのことを見る。


「メル……そんなこと言わないでくれ」


 リアが困り顔でそういうが、メルは全く譲る様子はない。


「……もし、その子がパーティに参加するっていうなら……私、抜けるから」


 そう言うとメルはそのまま踵を返してギルドの出口に向かって出ていってしまった。


「え……ちょっと! メル!」


 慌てて俺は反射的にメルのことを追いかけてしまったのであった。

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