第131話 ライバル登場……?
「……えっと……サキさん、ですよね? その……誰かと感が違いしていませんか?」
思わず俺はそう聞いてしまった。そもそも、なぜこの目の前の女性はそんなことを言ってきたのだ?
「いいえ! 人違いなんかじゃありません! 私はアストさんを探していたんです!」
しかし、はっきりとサキはそう言った。どうやらサキは、俺のことを誰かと勘違いしているわけじゃないらしい。
「えっと……そもそも、俺はパーティの一員であって……俺のパーティってわけじゃないんだけど……」
「え? そうなんですか?」
サキは目を丸くしてそう言う。
「そうよ。私達のパーティには勇者がいる。パーティのメインは勇者でしょ?」
メルもそう言ってサキに指摘する。しかし、なぜかサキはメルのことを怪訝そうな顔で見つめていた。
「えっと……アナタは、誰ですか?」
「私はメル。このパーティのヒーラー」
メルがそう言うとサキは大きく頷いた。そして、なぜか珍しいものでも見るかのようにメルのことを見ている。
「えっと……何? 私、なんか珍しい?」
メルも同様に感じていたのか、苦笑いしながらサキに訊ねる。すると、サキは満面の笑みでメルのことを見る。
「いえいえ。これが私のライバルなんだぁ、って思っていました」
「……は? ライバル?」
「えぇ。だって、私、見ての通りヒーラーですよ。私がこのパーティに入ったら……私以外のヒーラーは必要ないじゃないですか」
満面の笑みでサキが言ったのは……とんでもない宣戦布告だった。メルは唖然とした様子でサキを見ている。
「……えっと、サキさん。その……そもそも、今パーティでは新しいメンバーを入れようとかそういう計画はなくてですね……」
「そんなぁ……! アストさん! お願いします!」
と、いきなりサキは俺の腕に抱きついてきた。柔らかい感触が俺の腕に当たり、思わず俺は反射的に腕を引っ込める。
その様子を……隣のメルがとんでもなく冷ややかな視線で見ていた。
「……とにかく、俺の判断ではどうにもなりません。リアに話を聞かないと」
「なるほど! リアさんですね! 分かりました! 私、先に行ってリアさんにお願いしてみます!」
そう言ってそのままサキは教会から飛び出していってしまった。残された俺とメルはその後姿を呆然と見つめる。
「あはは……なんだか、可愛らしい人でしたね……」
「はぁ!? あれが可愛らしい!?」
メルが信じられないという顔と、とんでもなく大きな声で俺にそう言う。思わず俺はその迫力に圧倒されてしまう。
「あ、いえ……その……」
「……行くわよ。私達も」
そう言ってメルも急ぎ足で教会の出口に向かう。俺は……なんとなく、またしても、面倒なことが起きつつあるのではないかと感じてしまうのであった。
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