　またしても物騒な言葉に思わず俺はひきつった笑みを浮かべてしまう。

　リアといい……どうして実家に帰省するだけなのに、命の危機と隣り合わせなのだろうか……

「えっと……それは、大姉様とやらに殺されるという理解で良いんですかね？」

「……いえ。おそらく、私達の故郷に戻ればアナタは……すぐに殺されます。私達の故郷は……暗殺者の街ですから」

　暗殺者の街……名前だけ聞いても絶対に立ち寄りたくない場所だ。

「もしかして、その街というのは……街の人全員が暗殺者だったりします？」

「……その、もしかして、です」

　……これはある意味、リアの実家に帰るよりも危険かもしれない。俺もさすがに少し黙ってしまった。

「……どうです？　これだけ聞いてもミラ姉様の提案に同意しますか？」

「そうですね……確かに恐ろしいですが……あのミラが帰りたいと言っているのですから……俺はそれを実行してあげたいですね」

　俺がそう言おうとキリは目を丸くして俺のことを見る。それから、わざとらしく大きくため息をつく。

「……そうですか。アナタは……奇特な方ですね」

「え？　そ、そうですか？」

「……ええ。私は……そういう事、言われたことありませんから」

　すると、キリはなぜか俺に背中を向けてそのまま去っていってしまう。

「え……キリさん……？」

「……私はミラ姉様の提案には同意できません。ですが……アナタには同行します。アナタが私達の故郷に行って、死なずにいられるかどうか……それには興味がありますから」

　そう言ってキリは振り返って、うっすらと微笑む。

　その言葉を聞くと、本当にこれから危険な場所に行くのだということを、俺は強く実感する。

「……いや～、ありがとうね～、キリちゃんを説得してもらって」

　と、いきなり背後からミラの声が聞こえてくる。振り返るといつのまにかミラの姿があった。

「……『ステルス』でずっとこの場にいたってことですか」

「正解♪　……で、さっき言ったこと、マジなんだよね？」

「え？　それは、まぁ……適当なことを言ったつもりはありませんが……」

「へぇ……でも、もしかしたら……死んじゃうかもしれないんだよ？」

　ミラは鋭い視線で俺のことを見る。それは……いつものヘラヘラした感じのミラではなく、それこそ……暗殺者のような視線だった。

「……ええ。ミラは俺のパーティの仲間です。仲間のお願いは俺は……できる限りかなえてあげたいと思っていますから」

　俺がそう言うとミラも先程のキリと同じような目で俺を見る。俺は……そんなに変なことを言っているだろうか？

「……やっぱり、アスト君は、奇特な人だねぇ～」

　ミラは嬉しそうに目を細めながら、キリと全く同じ事を言ったのだった。

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