第103話 魔法使いの相談
リアの実家……ラティアがいた城での一件からしばらく経った。
俺たちが連れてきたラティアは、今はリアの部屋に住んでいるらしい。リアの部屋、そこまで広くないはずだから、ラティアが狭い思いをしていないか心配である。
レイリアを封じ込めた吸魂の剣も、今の所、何も問題はないようである。もっとも、あのレイリアが永遠におとなしくしているとは思えないが……
兎にも角にも俺は久しぶりにパーティでのクエストを受けることもなく、のんびりすごそう……そう思っていた。
そう思っていたの……のだが。
「いや~、悪いね。呼び出しちゃって」
あまり悪びれていないようにそう言うのは、ミラだった。なぜか俺はミラに呼び出され、ギルドの集会所までやってきていた。
「……今日はお休みにしようって話したはずですが……というか、他のみんなはどうしたんです?」
「え? 呼んでないよ。だって、この相談は、アスト君にしかできないからさ~」
気持ちの悪い甘ったれた声を出して上目遣いで俺を見るミラ。逆に怖い。
「……で、その相談ってなんですか?」
「それはね……あ! キリちゃーん!」
と、ミラがいきなり俺の背後の方に向かって声をあげる。見ると、向こうからやってくるのは、小さな魔法使いらしき人影だった。
「キリって……え? もしかして……」
「うん。ウチの妹のキリちゃん。ずっとギルドに呼び出し依頼をかけていたんだけどさ~、中々応じてくれなくてね~。ようやく昨日会えたんだ~」
嬉しそうにそういうミラとは対象的に、やってきたキリは……げんなりとした表情をしていた。
「……あ、どうも。お久しぶりです」
「あ、あぁ……えっと……あれから、どうしたんです?」
俺がそうきくと、キリはムッとした顔で俺を睨む。
「……アッシュさんのパーティを抜けてからどこからもお呼びがかからなくて……未だに一人ものですよ……」
「あ……そ、そうなんですか……」
いかんせん、俺達のせいなので言葉をかけることができなかった。げんなりしているのはそのせいか……
「だからさ~、言っているじゃん。アスト君に頼んでパーティに入れてもらおうって」
「姉様のいるパーティになんか入りたくありません!」
ミラの言葉に対して過剰に拒否するキリ。明らかに、ミラに対して怒っているようだ。
と、いきなりミラは俺の耳元に口を近付けてくる。
「相談ってのは……このことなんだ」
「え……キリさんと仲直りしたいってことですか?」
俺がそう言うと、ミラは少し申し訳無さそうに苦笑いしながら俺を見る。
「惜しいね~。正確には……私達三姉妹全員の仲直りを、手伝ってほしいんだよね~」
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