第56話 提案
さすがに予想はできていたが……俺も絶句してしまった。リアもメルも明らかに怒りを抑えている表情だった。
「あ……い、いいんです。皆さん、私、ずっとパーティに所属したかったので……」
と、その感じを察してか、メディが申し訳無さそうにそう言う。
「だ、だから……私は荷物持ちだとしても、アッシュンさんのパーティにいさせてもらえるのなら……それで――」
「良くない!」
と、やはり我慢の限界だったようで、リアがそう言ってしまった。
「メディ! そんなヤツのパーティにいるなんて絶対に良くない!」
「え……で、でも……り、リアさん……リアさんは……私をパーティに入れてくれるんですか?」
メディの予想外の発言に、リアも黙ってしまった。俺もその発言は予想外だった。
確かに……俺達はメディをパーティに加えなかった。仮に、アッシュのパーティを抜けた場合、メディを引き取る場合が出てくるが……
「おい、ソイツの言うとおりだぜ? お前、コイツを俺のパーティから奪ってその後はどうするつもりだよ?」
アッシュは馬鹿にした調子でリアにそう言う。リアは少し困った顔をしながらも、何か思いつめたような表情をした後で、先を続ける。
「あ、あぁ! 引き取るとも!」
さすがに俺も驚いてしまったが……一番驚いたのはメルだった。
「え……ちょ、ちょっと……アンタ、本気で言っているの?」
メルが慌ててリアに確認する。リアは「ダメか?」と申し訳無さそうにメルにそう言う。
しかし、メルもその表情を見ると、呆れながらもアッシュの方に向き直る。
「……ええ。私も同意するわ」
そう言われて驚いたのはメディだった。まさか、自分を引き取ってくれるパーティがあるなんて思っても見なかったのだろう。
「……もちろん、俺も賛成です。で、どうします?」
俺がそう言うとアッシュは明らかに不機嫌そうに俺達を見ている。
「……か、勝手なこと言ってんじゃねぇぞ! コイツは俺が雇った荷物持ちなんだ! お前達にそう言われて渡すわけねぇだろ!」
アッシュは急に態度を変えてそう言う。まぁ、こう言ってくるであろうことはわかってはいたが……
「……では、どうすれば?」
「どうするもこうするもねぇ! 俺はそんなの認めないって――」
「じゃあ、実力で勝負すればいいんじゃな~い?」
と、いきなりどこからか間延びした声が聞こえてきた。そこにいた全員が一度に振り返る。
「例えば……決闘とかさぁ?」
いつのまにかそこにいたミラが、笑顔で物騒な提案をしてきたのであった。
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