第55話 条件

「え……ど、どうしてですか……?」


 意味がわからなかった。メディはますます申し訳無さそうに深く頭を下げた。


「だって、メディさん、ギルド専属のヒーラーだったはずじゃ……」


「コイツはな、パーティに入りたかったんだとよ」


 アッシュがメディの頭をポンポンと叩きながらさも馬鹿にした調子でそう言う。


「で、俺が適当に募集をかけたら、コイツが馬鹿みたいにノコノコやってきたわけ……お前の知り合いだったのか?」


「……ええ。知り合いです」


「そうか。ま、残念だったなぁ~。コイツはもう俺達のパーティの荷物持ちってわけ」


 メディは今にも泣き出しそうだった。俺としては確かにメディは俺のパーティの仲間ではない……しかし、メディにはリアの怪我を直してもらったり、ミラのことを助けてもらった恩がある。


 そんな彼女が今にも泣き出しそうな顔をしている……しかも、俺が前に所属していたパーティのせいで。


 だとすれば、俺がこのまま黙っているわけには――


「メディを返してもらおう!」


 と、俺が何かを言おうとする前に、リアがまたしても高らかに宣言してしまった。


 ……俺が言いたかったが、まぁ……リアなら抑えられないよなぁ。


「あぁ? 返せって……コイツは、お前のパーティに所属してんのかよ?」


「してないな。だが! メディには世話になったことがある! お前のようなヤツがいるパーティに渡すわけには行かない!」


 俺が思っていたよりリアは怒っているようだった。しかし、俺も完全にリアと同意見だった。


「そうね。私もそう思うわ」


 と、メルも同様の意見を言う。しかし、アッシュの方はまるでそう言われても何も感じていないようである。


 というか……むしろ、こうなることをわかっていたかのように下卑た笑みを浮かべる。


「へぇ……返してやってもいいぜ。だがな……条件がある」


「……条件?」


「あぁ。この荷物持ちと……そのアストを交換することだよ」


 アッシュは嬉しそうにそう言った。リアとメルは呆然としている。


 ……そうだ。アッシュはこういうことを言い出すヤツなのであった。

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