第52話 会いたくない人
「あ! アストさん!」
と、街へ戻るなり、ギルドの受付嬢がまるで俺を待っていたように慌てて走ってきた。
「あ……どうも」
「どうもじゃないですよ。とりあえず、早くギルドに来て下さい」
「え? 俺……何かやっちゃいましたか?」
気まずそうな顔でそう言ってみるが受付嬢は答えてくれなかった。仕方なく俺達はギルドの集会所まで行くことになってしまった。
そして、集会所に着くなり、受付嬢は前方を指差す。
「あの人が『アストってヤツはいるか?』って探しに来たんですよ」
俺を探している人? まったく思い浮かばなかった。しかし、受付嬢は機嫌悪そうにそういうとそのまま去っていってしまった。
「アスト……知り合いなのか?」
リアが不思議そうに訊ねる。
「いや……俺を探そうとする知り合いなんて思いつかないんですけどね……」
「もしかして、前世の知り合いなんじゃないの?」
リアには聞こえないような小さな声で、メルが俺に耳打ちしてくる。
「……そうですね。確かに前世だったら、探される理由は思いつきますが……」
「とにかく、会ってきたら?」
メルに言われて俺は受付嬢が示した人物の方へ近寄っていく。
「あの……俺を探しているって聞いたんですけど……」
俺が遠慮がちにその人物に話しかける。すると、話しかけた人物はこちらを振り返った。
「あ」
思わず俺は声を上げてしまう。
赤い髪に明らかにガラの悪そうな目つき、そして、相手を常に馬鹿にしているような表情……
「よぉ、アスト。やっぱりお前、この街にいたんだなぁ」
その人物はさも嬉しそうに俺のことを睨めつけながらそう言った。
「……アッシュ」
俺は彼の名前を口にする。正直……あまり再会はしたくなかった。
なぜなら、アッシュは……俺の前のパーティ……つまり、俺が二回目のクビを宣告されることになったパーティの勇者なのだ。
「お前、一人か? パーティは?」
「え……まぁ、組んでますが……」
「はぁ? お前みたいなクソ雑魚と組んでる冒険者がいるってのかよ!? アヒャヒャ! ソイツは傑作だなぁ!」
大声で笑うアッシュ。俺はゆっくりと背後にいるはずのリアとメルの方を見る。
……って、メルはいるが、リアの姿がないぞ? どこに行って――
「おい!」
と、すぐ近くでリアの声がした。
「あぁ? なんだ、テメェ」
「私はリアという者だ。貴様、今、私の仲間のことを馬鹿にしただろう!」
リアは完全にキレて、アッシュに直球で文句を言ってしまった。
どうにもこれは……完全に面倒なことになったようであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます