第53話 侮辱
「……へぇ。お前がアストのパーティの勇者かぁ」
アッシュはまるで珍しい動物でも見るかのようにリアのことを見ている。リアは明らかに機嫌悪そうにアッシュを睨みつけていた。
「……ま、クソ雑魚のアストにお似合いのクソ雑魚勇者って感じだな」
「なっ……! き、貴様!」
「待て待て。あくまで俺が見た感想を言っただけだ。テメェが強いのか弱いのかなんて知らねぇし、知りたくもねぇよ」
そう言ってからアッシュは今一度俺の方に向き直る。
「探してたんだよ、アスト。お前をよ」
「……俺はアナタのパーティをクビになったハズですが?」
「あぁ。お前がクソ雑魚すぎて何の役にも立たなかったからな。実際、お前が抜けた後は、俺のパーティ全員、俺の好みの女になったんだよな、これが」
下衆な表情でそういうアッシュ。確かに俺がいたときもアッシュのパーティは俺以外全員女の子だったが……
「そうですか。それは、良かったですね……では、俺に用なんてないでしょう?」
「あるんだな、これが。なぁ、アスト。お前……俺のパーティに戻ってくる気はないか?」
「……はぁ?」
理解できなかった。俺をクビにしたのはアッシュ当人だ。今更俺にパーティに戻ってこいって、一体どういうつもりで――
「ちょうど、装備やアイテムが多くなったからよ、荷物持ちが丁度あと一人欲しいんだわ」
……なるほど。まぁ、予想はできていたが。
「な、悪い話じゃねぇだろ? こんなこと、お前にしか頼めないしさぁ。断らねぇだろ?」
明らかに馬鹿にした表情で俺にそういうアッシュ。
正直、以前だったら俺は適当に受け流していただろう。しかし、今はリアとメルという仲間がいる……仲間の前でこれ以上恥ずかしい格好は見せられない。
そう思って俺がきっぱりと断りの返事を突きつけようとした……その時だった。
パシン! という何かが叩かれる音がその場に響いた。
「え……?」
それは何の音であったか……答えは、いつの間にかアッシュの前に立っていたメルが、思いっきりアッシュの頬を引っ叩いた音だった。
「……アンタ、最低」
そして、メルは心底軽蔑しているのだとわかるような調子でアッシュにそう言ったのであった。
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