第39話 死をも恐れず
「……そういえば、今の私達でも、そのダンジョンの攻略はできるのか?」
不意に、リアが不安そうにそう言ってきた。言われてみればメルの仲間が挑んだのは平均レベル30くらいのダンジョンという話だった。
だとすると、俺やリアはそのダンジョンを攻略するにはちょっとレベル不足な気がする。
「まぁ、普通なら無理ね」
「無理って……それではどうするんだ?」
「だから、普通なら無理って言ってんの。私は特別なヒーラーよ。仮にアンタ達が死んでも、私が生き返らせてあげられるわけ」
……メルの言っていることの意味が最初は理解できなかった。というか、理解したくなかった。
「えっと……つまり、メル、その死ぬことを前提で挑むってことですか?」
メルはむしろ、そう言ったつもりなのだが、という顔で俺を見る。
なるほど、メルもやはりそういう点では「まとも」ではないようである。
「……まぁ、無理にとは言わないわ。滅茶苦茶なことを言っているのはわかっているし。その場合は他の狩場でまずはレベルを上げて――」
「上等ではないか!」
と、いきなりそう言ったのはリアだった。
「私は誇り高きアーカルド家の令嬢……死など恐怖することもない! それに、自分よりレベルの高いモンスターを倒せば、私のレベルの上がり方も早いだろうからな!」
そう言うとリアは意気揚々と歩きだしてしまった。思わずと俺とメルは顔を見合わせてしまう。
「……アイツ、変わってるわよね」
「あはは……メルさんには言われたくないんじゃないですかね……?」
「……なんか言った?」
「い、いえいえ! 言っていませんよ。さぁ、行きましょう」
と、俺がそう言うとメルはなぜか少し嬉しそうに微笑む。
「……ありがとう」
そして、聞こえるか聞こえないかギリギリの声量でそう呟いていた。
それから、俺達はしばらくメルの案内で歩き……ついに――
「……ここよ」
メルは複雑な表情で目の前のダンジョンを見つめる。
怪物が大きく口を開いているような洞窟……ここに、メルのかつての仲間たちが今も呪縛から開放されずに彷徨っているのだ……
「……大丈夫ですか? メルさん」
俺が訊ねると、メルは首をゆっくりと縦に降る。
「……大丈夫。さぁ、行きましょう」
こうして、俺達はついに、メルの仲間たちを「救う」ためにダンジョンへと突入していったのだった。
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