第37話 願いと条件
しばらくの間、あまりにも壮絶すぎる話のために、俺も何も言えなかった。
「そんなことが……で、でも! 今のメルさんならそんなヤツ、簡単に倒せるんじゃないですか?」
俺はかなり考えた後でようやくそう言うことができた。しかし、メルは首を振った。
「アイツを倒すために必死に鍛えたわ。でも……ヒーラーの火力には限界がある……誰かと組む必要があったわけだけど……あまりにもレベルを上げすぎたわ」
……なるほど。レベルを上げすぎたせいで、組むパーティの仲間は、低レベルのダンジョンなんかに行ってくれないというわけか。
「それで……このパーティに?」
「入ったのは別に偶然だったわ。でも、同時にもしかしたら、と思った。アンタもあの勇者サマも当時の私達より弱いしね」
「あ、あはは……でも、それだと今度は『ネクロマンサー』に勝てないんじゃ……」
「勝てるでしょ? アンタなら」
メルはそう言って鋭い目で俺を見る。どうやらメルもすでに俺の隠していることに感づいているようである。
しかし……今の事情を聞いてしまうと、さすがにそれも仕方ないかと思う。
「……改めて言うわ。私と……ダンジョンに行って」
メルはそう言って立ち上がると、頭を深く下げた。無論、俺も断る気はなかった。
「……わかりました。役に立てるかわかりませんが、行きましょう」
「……ありがとう」
「ただ……一つ条件があります」
「……条件?」
メルは怪訝そうな顔をする。無論俺が提示する条件とは……ただ一であった。
それがおそらくメルにとってはあまり納得できないものであったとしても、それは提示すべき条件だったのである。
「よし! ではそのダンジョンとやらにさっそく行くとするか!」
意気揚々とそう言ったのはリアだった。
一方でメルは明らかに不機嫌そうに俺を見ている。俺がメルに出した条件それは、リアをそのダンジョン探索に同行させるということであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます