第35話 討伐と救済
「……えっと……酔っているわけじゃないですよね?」
俺がそう聞くと、メルは鼻で嗤った。
「酔った上での冗談だったら、いいんだけどね……」
「……それって……すごいことじゃないですか!」
俺は思わずそう言ってしまった。すると、俺の反応が意外だったのか、メルは目を丸くして俺のことを見る。
「……すごい? 本気で言っている?」
「え……だって、その魔法があれば……いろんな冒険者が救われるじゃないですか!」
俺がそう言っても、メルはあまり嬉しくなさそうだった。何かワケがありそうである。
「そうよね……私も、最初はそう思っていたわ」
「思っていた、って……どういうことです?」
「……私が前のパーティを追い出された理由は、さっき言ったわよね?」
「え……まったく回復しないから……でしょう?」」
「そうよ。私は回復できないんじゃない……しないだけ。はっきり言うけど、私、ヒーラーとして自分は天才だと思うわ。実際、昔はそう思ってた」
そう言って、メルはワインを口に含む。それを飲み込んでから目を細める。
「昔に……何があったんです?」
俺がそう聞くと、メルは無言のままにグラスに口を付けた。それから、小さくため息をつくと、俺のことを見る。
「……アンタは何回パーティをクビになってるの?」
「え……えっと……お恥ずかしながら二回目です……」
「そう。私は……もう数えるのやめちゃったな」
メルはそう言ってから立ち上がり、窓辺に近づいていく。白い肌が少しだけ紅色になっていた。
「……最初のパーティは……私の全てだった。というか、全員、村の幼馴染だったから、昔からの知り合いだったのよね」
「そ、そうなんですか……それじゃあ、なんでメルさんはクビに?」
「クビになんてなってないわ。私の幼馴染達は今でも……あのダンジョンを彷徨っているわ」
「彷徨っている……それって……」
メルはそう言ってから少し間をおいてから、夜空を見上げる。
「……アンタに頼みたいの用事っていうのは、その事よ」
そういって、メルは俺の方に近寄ってくる。それから、俺の目をジッと見る。
「私の幼馴染達を……
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