第23話 因果
ドラゴンゾンビは明らかにミラの方を見ている。俺には……気付いていないようだった。
ミラはチラチラと俺の方を見ている……かと思うと、俺の身体が急に自由になった。
「え……」
俺は驚いたが、思わずそのまま立ち上がってしまった。どうやら魔法が解除されたらしい。
「あ……あっちにも餌がいるよ!」
と、ミラが大声をあげると、ドラゴンゾンビは俺の方を向く。ミラがニヤリと微笑むのがわかった。
アイツ……俺の方にドラゴンゾンビの注意を向けるために、わざと俺にかけた魔法を解除したな……
ドラゴンゾンビはその濁った瞳を俺を見ている。完全に俺を狙っているのはわかった。
と、その時ミラがいきなりドラゴンゾンビから離れるように走り出した。そして、充分に距離をとってから再度杖を構えて魔法を唱える。
なんだ……状態異常の魔法はドラゴンゾンビには効果がない……だとするとミラが他に使う魔法といえば――
「あ!」
ミラが俺の魔法を解除し、ドラゴンゾンビの注意を俺に向けた理由……俺はそれをようやく理解した。
ミラはまたしてもニヤリと微笑む。アイツ……転移魔法で逃げようとしている。
しかし、すでに魔法の詠唱を始めている以上、引き止めることもできない……と俺が諦めたその時だった。
ドラゴンゾンビは俺に視線を向けたままで……その巨大なしっぽを思いっきりミラに向けて振り下ろした。
「え?」
完全に魔法の詠唱に集中していたミラはしっぽの一撃を避けられなかった。まるで巨大な丸太のようなしっぽが、ミラの身体に勢いよく叩きつけられる。
「ミラさん!」
思わず俺は叫んでしまった。ミラはしっぽを叩きつけられたことでその場から思いっきり吹き飛ばされてしまった。
俺は先程まで殺されそうだったというのに、ふっとばされたミラに駆け寄っていってしまったのだった。
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