第22話 窮地
「あちゃ~。まぁ、もう半年くらい前のことだからねぇ。やっぱり死んじゃったんだねぇ」
俺は確信した。ヤバい。「まとも」じゃないどころの話ではない。ミラは明らかに「ヤバい」人じゃないか。
「お。装備からするとコイツがヒーラーかな? コイツ~、最後までウチに何か魔法でもかけようとして悪あがきしやがって~」
そういって、ミラは遺体の方に近づいていって、ヒーラーの骨をつついている。どうやら自分がやったことについてはまるで悪いことをしたという自覚はないようである。
なんとかこの状態を今の俺の力で脱出したいが……身体がまるで動かない。完全に麻痺の魔法がかかってしまっているらしい。
しばらく白骨で遊んでいたミラだが、飽きたようで俺の方に戻ってきた。
「お、俺も……放置していくつもりなんですか……」
俺はミラに訊ねる。しかし、ミラはクビを横にふる。
「いやいや。そんなことしないよ。この半年さぁ……麻痺魔法をかけた奴らがどうなったか気になってたんだよねぇ。あ、死んでるだろうなぁってのはわかってたんだけど、やっぱり目の前で確認しておかないとね……だから、君には今、ウチの目の前で死んでもらうね」
そう言うとミラは俺に杖の先を突きつけてくる。
「大丈夫だよ~。私の『ポイズン』の魔法は強力だからさ。苦しむのは短い時間だし、ウチも目の前で君が毒で苦しむ様を見られるし……お互いウィンウィンでしょ?」
そういって、ミラが今にも俺の魔法をかけようとした……その時だった。
『ギャァァァァァ!』
ミラの背後からけたたましい雄叫び声が聞こえてきた……というより、今、俺とミラがいる空間全体に響き渡る程の大きな声……咆哮だった。
ミラは俺に杖を向けるのをやめ、背後を振り返る。俺も目だけ動かしてそちらを見る。
「え……なにこれ……」
ミラの背後に現れたのは……巨大なドラゴンだった。
しかも、ただのドラゴンではない。その身体は腐敗しているようで、所々骨が見えている。そして、周囲には腐臭が撒き散らされている。
「ドラゴンゾンビ……」
ドラゴンゾンビはドラゴンが死んだ後、変化するモンスターだ。といっても、普通はドラゴンが変化することはなく、周囲の魔法を使うモンスターがドラゴンに、魔法「リヴァイヴ」をかけることで、ゾンビとなって復活するのだ。
そういえば、ミラはたしか、このダンジョンのボスはドラゴンだったと言っていたが……と、ミラはドラゴンゾンビに向けて杖を構え、魔法を唱える。
「『ポイズン』! 『パライズ』!」
続けて魔法を放ったようだったが……ドラゴンゾンビに変化はなかった。それもそうだ。ゾンビ系のモンスターには状態異常に耐性があるモンスターが多い。
つまり……ミラにとって最悪の相手が目の前に現れたのだ。
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