第21話 魔法使いのワケ
「私ね、元々はアサシンだったんだ」
唐突に昔を懐かしむように目を細めてミラは話しだした。
アサシンといえば……パーティの中ではあまり人気のない職業だ。モンスターと戦うといっても、不意打ちや暗殺が専門で、あまり良いイメージがない。
「結構さぁ、頑張ってたんだよ? でも今よりも暗い感じが不味かったのかなぁ……パーティメンバーに『お前、俺達を殺そうとしてないか?』って聞かれちゃったんだよねぇ……酷くない?」
すでに反応することも満足にできないくらいに、魔法が全身に行き渡ってしまっているようである。しかし、構わずにミラは話を続ける。
「ま、殺しちゃったんだけど」
「は……はぁ……?」
「いや、だって……ねぇ? そんな簡単に上手く行くと思わないじゃん? でも、上手く行っちゃったんだよねぇ……」
そう言いながらミラは自分の杖を見つめている。
「それから新しくパーティに入ろうとしたんだけど……パーティが私以外全滅したってことは結構広まっちゃってね……そんなアサシンなんて仲間にしたくないって人が多くてね……で、魔法使いに転職したんだ。暗殺もできなくなると思ったしね」
「じゃ、じゃあ……なんで……」
「だって、ウチが使える魔法ってさぁ……なんというか……嫌らしいものばっかりなんだよね?」
「嫌らしい……?」
「そうそう。普通魔法使いって火炎魔法と氷魔法とか派手な魔法使うんでしょう? でも、ウチは使えないんだよねぇ」
苦笑いしながらそういうミラ。
なるほど……今俺が身を持って体験している相手を麻痺させる魔法『パライズ』……これを使うということは、彼女が言う「嫌らしい」が表すのはなんというか……敵として相手にしたくない魔法ということであろう。
「しかもさぁ……ウチ、天才みたいでね? ウチが使う状態異常魔法は耐性がない場合は、人間だろうとモンスターだろうと100%効いちゃうみたいなんだよね? それってさぁ……つまんなくない?」
そういって、ミラは立ち上がって俺に向けて杖を構える。
「前のパーティでもこのダンジョンを攻略する時にメンバーに向けてバレないように試したんだけど……そのパーティのヒーラーが気のつくやつでさぁ。ウチが魔法使っていることがバレちゃったんだよねぇ」
「……それで……どうしたんです……?」
「そりゃあ、今すぐパーティをやめろって怒られちゃった……でも、とりあえずダンジョンを攻略するまでは待って、ってなんとか謝ったよ。ま、ここのボスのドラゴン倒した後に全員に『パライズ』の魔法かけた後、宝箱の中身だけもらって私だけ転移魔法で帰っちゃったけど」
「え……じゃあ……その時のメンバーって……」
「さぁ……? って、あれじゃない?」
そういってミラはちょうど俺の視線の先を指差す。その先には……3人分の白骨遺体が床に転がっていたのであった。
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