第24話 切り抜けるために
「ミラさん!」
ミラは完全にしっぽのダメージを受けてしまったようだった。持っていた杖は真っ二つに折れてしまっている。
「……へ、へへへ……肋骨……折れたみたい……」
「喋らないで! とにかくここから出て――」
「……無理……杖も折れちゃったし……折れた肋骨が肺に突き刺さったみたいで……ゲホッ!」
「ミラさん!」
「……魔法を……上手く……詠唱できない……へへへ……こ、これでウチも終わりかぁ……」
ミラは力なく半笑いを浮かべている。すでにドラゴンゾンビは俺達の方に狙いを定めているようで、 ゆっくりとその腐臭を漂わせながら近づいてくる。
……仕方ない。俺に選択肢はない。
今ここで戦える俺が……なんとかしなければならない。
「……ここでおとなしくしていてください。俺が……なんとかします」
俺はミラを床に置き、剣を抜き、ドラゴンゾンビに対峙する。
「……君が……なんとか? へ、へへ……無理だよ……オーガは運良く倒せたかもしれないけど……あのドラゴンは元々レベル87だったんだ……ゾンビになっていても……力はそこまで衰えていない……」
ミラの弱々しい声が背中から聞こえてくる。ドラゴンゾンビは少しずつ距離を詰めてくる。
「……君がウチの目の前で死ぬことは変わらない……へへへ……ウチまで死ぬとは思わなかったけどね……まぁ、良いか……」
「いいえ、良くないですよ」
俺は振り返ってミラのことを見る。ミラは苦しそうではあったが、少し目を開いて俺を見る。
「俺もミラさんも、死にませんから」
それと同時にドラゴンゾンビが咆哮をあげながら突進してくる。俺は剣を構え、念じた。
今、この瞬間だけ……この瞬間だけを切り抜ける力を、俺に……!
それと同時に、腕輪が光り輝き、俺とドラゴンゾンビ……そして、そのまま空間全体を包んでいったのであった。
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