第13話 警告

「うふふ……これでクエスト達成だぁ……ふふふ……」


 背負ったリアがまたしても何か夢を見ているようである。結局、ミラはリアに飲ませるだけ飲ませて、会計を済ませるという時になっていなくなってしまった。


 俺はリアを背負って相変わらず送っていくハメになってしまったのである。


「ちょっと」


 と、背中のリアが完全に眠り始めた頃に、背後から誰かが俺に声をかけてきた。振り返るとそこにいたのは……


「メルさん……」


 我がパーティのヒーラー、メルだった。


「アンタ達、さっきまであの魔法使いと一緒にいたでしょ?」


「え……まぁ、そうですけど……」


 メルは怪訝そうな顔で俺のことを見ている。


「……アイツ、なんて言ってたの?」


「え……あー……クエストを受けたから、俺達も同行してほしい、って……」


 それを聞いてメルはさらに顔をしかめた。


「……そのクエストに、アンタ達、行くつもりなの?」


「え……まぁ、リアさんが乗り気なので……」


 メルは俺の背中のリアを見ると、馬鹿にしたような視線を向けた後で、今一度俺のことを見る。


「……アンタ、気をつけたほうがいいわよ」


「え……気をつけるって……大丈夫ですって。クエスト自体はそこまで危険なクエストじゃないですから」


「そうじゃなくて……あの魔法使いよ」


 メルは周囲を警戒しながらそう言う。まるで誰かにこの話を聞かれるのが困ると言った感じだ。


「え……ミラさんにですか? いや、まぁ……確かに掴みどころのない感じの人ですけど……」


「それにアイツがどんな魔法を使うのか、私もアンタもわからない……だから気をつけないって言っているのよ」


 そう言うとメルは俺に背中を向ける。


「忠告は、したから」


「あ……メルさんは一緒に行ってくれないんですか?」


 俺がそう呼びかけても、メルは振り返らなかった。


 忠告って……俺にはミラが何か悪いことを企んでいるようには……いや、胡散臭い感じはする。


 実際、俺はどこかで悪い予感がしていたのであった。

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