第14話 廃坑へ

「う、うぅ……飲みすぎた……」


 ギルドに集まった時点で、リアは完全に二日酔いのようだった。まぁ、俺が確認できていた限りでもかなり飲んでいたからなぁ……


「大丈夫ですか? 今日は……やめておきますか?」


「大丈夫だ! 言っただろう? 私は頑丈だと」


 リアはムキになってそう言っているが……明らかに不安だった。


「いや~、準備できてる? じゃあ、行こうか」


 待ち合わせの時間にかなり遅れてきて、間延びした挨拶をしながらミラがやってきた。俺もリアも咎めることもせずに、ミラの言うとおりに、出発することにした。


 ミラの言う通り、確かに廃坑となった洞窟まではそこまで遠くないようだった。町から20分程歩くと、程なくして洞窟のような物が見えてきた。


「あれですね。あの中にオーガが住み着いているそうなんですよ」


「なるほど……それを倒せばクエスト成功なんだな?」


「そうです。準備はいいですか?」


 俺とリアは頷く。それから俺達はさっそく廃坑の中へと入っていった。


 確かに最近まで使われていたようで、使用感のあるツルハシやトロッコなんかが放置されたままになっている。


「おい、ミラ。魔物がいないようだが」


 リアの疑問は最もであった。オーガ住み着いているのならば、他の魔物もいても良さそうなものである。しかし、この廃坑にはスライム一匹の気配すらもない。


「あはは。どっかに隠れてたりするんじゃないですか。そのうち出てきますよ」


 そう言われてしまうと俺達も何も言えなくなってしまった。そして、どんどん廃坑の奥に進んでいく。


 と、広い場所に出た。どうやら、採掘場のようである。そこにもやはり魔物の気配は感じられなかった。


「おい。ミラ、本当にここにオーガなんて……ミラ?」


 と、リアが話しかけた先には……いつのまにかミラがいなかった。


「え……ミラさん、どこに行ったんでしょう?」


「アイツ……怖気づいて逃げたのか? まったく……こんなことだと、このパーティから抜けてもらうことになるな」


 ……そんなはずはない。ミラのレベルは83だ。大抵の魔物の前から逃げ出すようなレベルじゃない。むしろ、魔物の方が逃げ出すレベルだ。


 それなのに、なぜミラは消えて――


「仕方ない。とりあえず、一度町に戻って――」


「リア!」


 リアがそういった瞬間に、俺は同時に叫ぶ。しかし、リアはまるで気付いていないようだった。


 間に合わない……そう確信した瞬間に、リアの身体に太い棍棒がめり込み、鎧の上からでも骨を砕く音が聞こえる。


 そして、そのままリアは壁まで一直線にふっとばされた。


「そんな……どうして……」


 俺の前には……今までまるで気配を感じなかったことが嘘なくらいに巨大な体躯を持つオーガなのであった。

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