第10話 願い
「だから! 私は言ってやったんだ! そんなに私のことをいらないというのなら私の方だってお前たちのことなんていらない、と!」
その後、リアの誘いで俺達は酒場にいた。
先程から聞いているのは、リアが俺のパーティに参加した顛末だ。
どうやらリアは毎回今日のようなこと……つまり、後先考えずモンスターに突っ込み、大ダメージを受けるということを繰り返してきたらしい。
そのため、前のパーティではヒーラー役や戦士役に多大な負担がかかり、結果としてリアはパーティを追放……言ってしまえばクビになったのである。
つまり……リアも俺と同じような境遇であったということだ。
「あ、あはは……で、でも、リア。今回のパーティではその……あまり危ないことはしないでほしいんですよ。俺もリアのことが心配だし……」
「何を言っている!? 私は誇り高きアーカルド家の令嬢だぞ! アーカルド家の者は戦いで倒れることはない! 私は一体でも多くのモンスターを倒す!」
リアは明らかに目が座ってしまっている。既に何杯も飲んでいるわけで……まともな話をしても意味がないだろう。
……まぁ、しばらくはあの雑魚モンスターの狩場にしか行かないだろうし、その時には俺がリアと一緒に狩りをすればいい。リアは反対するだろうが、何かしら理由をつければリアも納得してくれるはずで――
「おい! アスト! 聞いているのか!?」
「え? あ、えっと……ごめんなさい……」
リアが何かを話していたようだったが、まるで聞いていなかった。鋭い瞳でリアは俺のことを睨んでくる。
「お前……それ、なんだ?」
「え? あぁ、これ……」
いきなりリアは俺の手首を指差してくる。そこには銀色の腕輪が嵌められていた。
「それ……何かの装備か? あまり見たことないが……」
「あぁ……安物ですから……大したものじゃないですよ」
「ふぅん……そうか」
すぐにリアは興味なさそうに次の酒を飲み始めた。
一瞬俺は少し焦った。腕輪のことについて指摘されるとはまるで警戒していなかった。変なところでリアは敏感なのかもしれない。
しかし……その後もリアは酒を飲み続け、結局俺がリアを部屋まで送っていくことになった。
冒険者の多くは宿屋に部屋を長期でとっていたり、安い家賃で部屋を借りている。リアも安い部屋を借りているようだった。
「アストぉ……聞いているかぁ……」
酔っ払ったリアが、耳元で俺に呼びかける。
「はい……なんでしょう?」
「今度のパーティは……最高のパーティにしようなぁ……」
それだけ言って、リアはそのまま眠ってしまったようだった。
そんなの今の状況ではとても無理だと思いながらも……願わくば、俺もそうなってほしいと、思ってしまったのであった。
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