第5話 ヒーラー

「えっと……最後の方は……」


 リアの右隣にいる人物に目をやる。その人物は長い黒髪に、回復術士……ヒーラーがよく着る白い服を着ているので、彼女がヒーラーであることは理解できた。


 しかし、まるで刃物のように目付きが悪い。ヒーラーはなんとなく優しそうな人が多いイメージだったのだが……


「……メル。見ての通りだけど?」


 ……明らかに態度が悪い。まるで俺を汚物を見るかのような視線で見てくる。なんだろう……俺、まだ何もしていないのだが……


「メルさんも優秀なヒーラーなんですよ」


 受付嬢はそう言う。俺はうなずきながら、恐る恐る彼女を見る。


「レベル93」


「……へ?」


「私のレベル。そこの魔法使いより上だから」


 そういって、鼻で笑うようにメルは、ミラのことを見る。ミラはヘラヘラと笑っているだけで怒るわけでもなかった。


「あ……そ、そうなのですか……」


 俺が曖昧な返事をしてしまうと、彼女は不機嫌そうに俺のことを睨む。


「何? 疑ってるわけ?」


「え……そういうわけじゃないんですけど……」


「冒険者証なんて見せないわよ。まだこのパーティでやっていくなんて決めてないんだから」


 メルは憮然とした態度でそう言う。なんだか……こっちの子はかなりとっつきにくい感じである。


「……じゃあ、パーティメンバーの紹介は終わりですね。私はこれで」


「え……ちょ……」


 俺が止める間もなく、受付嬢はそのまま去っていってしまった。


 残ったのは俺と新しいパーティメンバーと……気まずい雰囲気。


 その時、俺はなんとなく思ってしまった。


 なんだか……お荷物を押し付けられたのではないか、と。


 といっても、当の俺本人も、お荷物だからこそ、パーティをクビになったわけなのだが……

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