第8話 協同

 「ふーん…すまないな、首に刃を当てる様な真似をしてしまって…勘違いしないでくれ、我々はあくまで仲間だ、互いに協力しようじゃないか」


 極度に緊張していた場の空気は幾分かは緩み始めていた。


 「信用にたりないというのなら私の妻と娘を人質にだそう、それでいいな?」


 「嫁さんと娘はいくつだ?」


 「30と15…」


 「20程下の嫁ね…さぞ可愛がっているだろうな…分かった、その人質を連れていく、信用しよう」


 何とか生きて帰ることができそうだ。これにより同盟は完成した。しかし、問題はこの後だ。仲間は同盟を受け入れてくれるだろうか。


 「それにしても…いい鎧だな…赤と金色が美しい」


 青い王はこちらをまじまじと見つめる。兜と盾と武器は置いてきてしまったので腕のあたりを抜き赤と青で染められた、膝の上程まで続く服。そしてその上に着た、赤い糸が隙間から見える青銅の鎧。今の全財産はこれだけだ。今できる精一杯のおしゃれだ。


 王は両手を打ち合わせる。


 「さて、あまりここに長いしてもらっては海の民たちの部下が何をするかが分からない、要件は終わったし、お引き取り頂こう」


 王が立ち上がると同時に、周りの兵士も槍を肩にあてがい一歩前に進み出る。


 「君たちは荒くれものの海賊だが今は仲間だ、ヒッタイトは今すぐ攻めるなどとてもではないができない、準備が必要だからな、だから君たちには宿をあてがおう、市中を見ても構わないが、騒ぎは起こさないでくれよ」


 王が再び、手を打ち合わせ、お送りしろ、と言うと俺の後ろの兵士たちが真横まで進み出る。そして、王が、さぁ、と呼びかけるので後ろを振り返り兵士に囲まれながらその部屋をでる。廊下では4人の兵士が左右に2人ずつ待たされており俺の前と後ろを囲った。前の兵士に続いて歩いていく。


 宮殿から出ると少し日が陰り始めていた。宮殿の前には、昼間はあまり見る暇はなかったが大きな石畳の広場が広がっており、そこにここまで送ってきた、馬に乗った態度の大きな上等な兵士がいた。


 「ははは、お会議はお楽しかったですか?ふん…、ついてきなされ」


 また、無性に腹の立つ物言いでこちらに呼びかけてくる男の後ろをついて歩いて砂浜まで戻る。朝は多くいた弓兵たちは、最初よりも少し多くなっていた。弓兵たちはその場にすわりすっかり緩んでいた。


乗り上げた船はどちらにも傾くことなく上に船員を乗せて微動だにしなかった。そしてそこには多くの仲間が丸い盾を小脇に抱えながら座り込んでる。


 「お仲間も、我らの兵もお疲れの様で…」


 馬上の男が振り返りもせずに言う。


 「では、この後、あなたたちを宿所にお連れするんで、お仲間に説明してきてくださいな」


 日はすっかり落ちて、船の後ろに見える水平線からは月がうっすら顔を見せようとしていた。砂浜は空の色を反射して黒い水色に染まっていた。仲間の表情は見えない。

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