生存者発見!?(4)

 その時、突然私の視界が遮られました。セカイさんが私とシアンさんとの間に割って入ったらからです。

「勝手な事を言わないでくれるかしら」

 毅然とした態度でシアンさんと対峙するセカイさん。こういう時はとても頼りになります。

「トワは私の一号よ。いえ、二号も三号もない、オンリーワンの嫁なのよ!」

「……………………………………」

 セカイさんは高らかに宣言しました。全然頼りになりません……。

 突然のセカイさんの虚構に面食らった表情をしていたシアンさんでしたが、戸惑いながらも話を続けました。

「な、なにを言っているのかよくわからないけど、とにかく保護させてもらうわ。他の世界の人間と交わって元々の純粋な血が失われても困るしね」

「ま……交わっ!? 何て事を言うのよ、この魔族。トワと交わっていいのは、この私だけ……」

「ちょっと黙ってて下さい」

 私に叱られ横でシュンとしているセカイさんは放っておいて、シアンさんと話を続けます。

「詳細はともかく、あなたが向こうの世界を大切にしているのはわかりました。でも、仮に私達を保護してあなたはどうするつもりですか?」

「は? だから保護は保護で……」

 キョトンとしているシアンさん。私の言った言葉の意味がわかっていないようです。

「例えば、私達の住む場所や、生活、安全などは保障されているのでしょうか?」

「……………………………………」

 口をパクパクとさせ、何も言葉が出ないシアンさん。やはり、これは……。

「全くの無計画なわけね」

 私の頭の中に浮かんだ事を呆れた仕草でセカイさんが代弁してくれました。

 この魔族さんは行動力はあるけど計画を立てるのは苦手な様子。いわゆる勢いだけで突っ走るタイプの人ですね。

「か、考えてるわよっ。失礼な人間ね!」

「ふ~~ん。それで、どんな事を考えているのかしら?」

 冷や汗をかき、慌てるシアンさんをニヤニヤといやらしい笑みを浮かべ見つめるセカイさん。絶対楽しんでますね。

「ま、まずは小さくてもいいから家を建てて……庭に花壇を作って、花をたくさん植えて……」

 ──それは、いったいどこの新婚さんの話ですか。

「もう、いいです。どの道保護されるつもりもないですし」

「はあっ!?」

「私達はここを離れるつもりはないですし、逃げたり隠れたりする気もありません。他に行く所もないですから。それならあなたも無理に私達を保護する必要はないのでは?」

「う、むむむ……」

 シアンさんは難しい顔をしています。自分の無策をうやむやに出来る良い状況ではあるが、素直に人の言う事を聞くのは、魔族としてのプライドが許さないといった感じでしょうか。

 だから、私はシアンさんのプライドも保たれるよう、もう一つ付け加えます。

「そのかわり、お願いもあります。それも大魔族であるシアンさんを見込んで」

「な、何かしら。そこまで言うなら聞いてあげないでもないけどっ……」

 シアンさんは満更でもない様子。目元と口元が緩んでます。この人もセカイさん同様おだてには弱いようです。

「ちょっとトワ。魔族に頼み事なんて」

 一方セカイさんは不満そうな表情で私とシアンさんを見ています。本当に魔族が苦手なのか、相手が相手なだけに心配なのか。

「大丈夫です。セカイさんにとっても悪くないと思いますよ」

 そう言って私はシアンさんに向き直しました。そして茶化すような事はせず、真面目に一つの提案をします。

「今の私達はこちらの世界での生活もありますし、長期間この場所から離れて動き回る事は出来ません。そこでシアンさんには向こうの世界での生存者の捜索を続けてほしいんです。シアンさんにはそれだけの能力ちからがあるでしょうし、お互いに同じ目的なら悪くないと思うんですが?」

「確かにそうかもしれないけど。何かしら、少し引っかかるのよね……」

 意外と鋭いですね。冷静に考えれば、ただの使い走りですから。

「無理みたいよ、トワ。大魔族さんも大した事ないわね」

「はあっ!? 無理なんて言ってないじゃない。誰にものを言ってるのよ。いいわ、やってやるわよ!」

 セカイさんの安い挑発に乗ってくれました。ナイスです。

「ただで行ってくれとは言いません。私の作ったアイテムを差し上げるので持っていって下さい」

「アイテム?」

「この家の先に、私の魔法で作ったアイテムを販売するお店があります。そこまで一緒に来てもらえますか?」

「……さっきみたいな呪われた物じゃないわよね?」

 シアンさんは警戒心をあらわにします。あんな事があった後だから仕方ないですね。私もその気持ちよくわかります。

「それにしてもトワって言ったっけ? あんた魔族である私を前に平然としているなんていい度胸ね」

 その言葉に私は何の感情も込めず答えました。

「誰もいない世界より怖いものってありますか?」

 しばらくの間キョトンとした表情を見せたシアンさんでしたが、すぐに素っ気なく答えました。

「確かにね……」

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