生存者発見!?(3)

「ま、まさか、私達の世界を滅ぼしたのって魔族あなた達……」

「違うわよ」

 シアンさんが私を睨みました。

「人間を滅ぼして魔族わたし達に何のメリットがあるっていうのよ! 確かに『人間ども、この私が支配してあげるわ!!』って、思った事もあるけどっ」

 ……やっぱり、あるんですね。

「なのに、勝手に戦争を起こして、勝手に滅びて、そのお陰で私はあんな怪物だらけの地上を三百年以上生存者を探し回る羽目になって……」

 そこまで言ってシアンさんはハタと何かに気付いたようです。

「あんたら……何歳?」

「女性に年齢としを聞くなんて、魔族は余程の礼儀知らずなのかしら」

 未だ警戒しているのか、単なる嫌悪感からなのかセカイさんの言葉には棘があります。

「まあ、待って下さいセカイさん。あの時以来、初めて会えた向こうの世界の知的生命体ですよ。少しは話を聞きましょう」

「あんたの言い方にも悪意を感じるわ……」

 シアンさんは不満そうな表情をしていますが、とりあえず見なかった事にして私は自分の年齢を答えます。

「ちなみに私は永遠の十五歳です」

「そもそも私に年齢なんて関係ないわ」

 私もセカイさんも、言っている事に間違いはありません。

「何をアイドルみたいな事、言っているのよ……」

 だけど、そんな私達をしらけた目でシアンさんは見ています。本当にそうなんですが、そう聞こえてしまいましたか。

 無駄に話を長引かせても仕方ないので、私はシアンさんにセカイさんとの関係を簡単に説明しました。

「あんたらが『世界の意志』!?」

 流石に魔族。『世界の意志』の存在は知っていたようです。そのせいか、シアンさんは最初こそ驚いたものの、すぐに落ち着きを取り戻しました。

「だからあんた達、三百年経っても変わらず生きているのね」

 私達のここまでの経緯に納得したシアンさんでしたが、突然真剣な表情で私の前に身を乗り出してきました。

「だったら何であんた達、あの戦争を止めなかったのよ!?」

「私が目を覚ました時には、もう世界が滅んでいたんです」

 なにソレ、という呆れた顔で私を見ていたシアンさんでしたが、すぐにまた真剣な眼差しで私に迫って来ます。

「それなら、今の荒れ果てたあの状況を何とかしなさいよ!!」

「出来たらここにいると思いますか?」

 何の躊躇もなく淡々と答える私の前でシアンさんは床に突っ伏してしまいました。背中から絶望感が漂ってきます。

「それにしても、どうしてそこまで人間を探しているんですか? しかも、三百年以上もずっと」

 魔族にとっても人が滅ぶのは喜ばしい事ではないのはシアンさんを見ていてわかりましたが、そこまで長い時を探し続ける理由は何かあるのでしょうか。

 その疑問にはシアンさんではなく、横にいたセカイさんが答えてくれました。

「そもそも人間がいないと何も出来ないからよ。善がいないと悪もないし、光が無ければ闇も無い。魔族の存在意義も無くなっちゃうのよ」

 言われて納得しました。確かに対になる存在がいないと魔族も魔族である意味がない。シアンさんもこれには図星だったみたいで。

「そうよ! だから人間を見つけたら捕獲して保護するつもりだったのよ!!」

「「保護!?」」

 魔族らしからぬ発言に、思わず私とセカイさんの声がハモってしまいます。

「まさか、保護した人を集めて自分が支配者にでもなろうという気ですか?」

 そうして自分が世界の王になろうとしているのでは。しかし、その懸念はすぐに杞憂に終わります。

「そんな小さい事はどうでもいいのよ。何もかも人の存在があっての事なんだから!」

「は、はあ……」

 魔族といえど、ここまで追い詰められてしまうと支配者の座すら小さくなってしまうんですね。

「ま、まあ、いいわ……」

 シアンさんの目が不穏に光ります。

「世界の意志とはいえ、そこの娘は一応人間。やっと見つけた一号ってわけね」

 私を見て、シアンさんはニヤリと笑みを浮かべました。

 ──そういう事ですか。

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