第77話
「ははっ、こいつは相当にオンボロだな」
つぎはぎの巨神に乗り込み、阿賀野はリーゼを起動させる。そして、理解したのは彼の乗るリーゼの脆弱さ。
訓練のために乗っていたリーゼにも劣る、機能。
無理な稼働をさせ続ければ自壊する。
「まあ、無理させてもらうがな」
本来、リーゼですら耐用不可能の制動をしようとしている。
そうしなければリーゼの中でも劣る、このパッチワークリーゼでは、タイタンを相手取る事はできない。
偶然だったのだろうか。
性能において、タイタンは基本的に速度以外はリーゼを凌駕している。
そんなタイタンと戦い勝利するにはパイロットの腕次第だ。
「アイツらじゃ動かせねぇだろ、コイツぁ」
奇跡の様に、ピースが揃っていた。
パッチワークリーゼを動かし、さらにはタイタンを打倒し得る可能性が。
元来であれば、それは人型の巨大な鉄屑。自爆兵器として運用するつもりであったはずだ。
いや、現状も変わらない。
ただ、上手く最強が扱っているだけに過ぎない。少しでも苦戦が、敗北の未来が見られれば即座に自爆させられるだろう。
リーゼに乗り込んだ三人の視線の先にアスタゴの大陸が見える。
時刻は深夜。
月光が大陸を仄かに照らす。雲が僅かに星を隠す。上陸作戦が始まろうとしていた。
「よし、行くか……」
通信機のスイッチを入れて、立ち上がる。
『四島』
九郎の声が響く。
返答はない。
『行くよ』
美空が告げると、三機はアスタゴの大地に降り立った。
『リーゼパイロット、アスタゴを蹂躙せよ!』
そんな指令、知った事かと、美空と阿賀野は駆け出した。全速力だ。
誰かの命令など関係ない。
好きなように暴れて、成したいことを成すだけだ。目的などそれぞれ。
二人の乗るリーゼが駆け抜けようとすると、目の前には三機のタイタンが現れる。
銃を構えたそれらは、冷静沈着に負けるはずがないと言う自負を持って銃口を合わせ、弾丸を撃ち放つために撃鉄を弾く。
────前に、阿賀野の投げた大剣によって一機が両断される。
戦闘開始から、約十秒にも満たない時間の中で一機の戦線離脱を確認。
そして、呆気にとられた残りの二機を冷徹無比な銃撃が撃ち抜く。
『ふっ!』
阿賀野と九郎の手によって。
異様なまでの戦闘行為の慣れ。
慈悲なき簒奪。
紛れもなく、彼らは最強の戦士だ。今まで戦ってきた数々の陽の国の兵士が、玩具の兵隊に見えてしまうほどに。
命を奪い、戦い、勝利し、その歩みを進める。
ここから、進撃の開始だ。
「よっ、と」
地面に突き刺さった大剣を抜き取る。僅かに阿賀野の乗るリーゼの右腕から軋むような音が響いた。
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