第2話 口実

「なぁ、今日暑くね?」

これで今日15回目のセリフを

隣の席の佐藤が言ってくる。


「いい加減にそれやめてよ。もう15回目。」


「だって、あついんやもん。しゃーないやん。」


「鬱陶しいからもうどっか行ってよ。」


「なんだよ可愛くねー女。

てかさ、水売神社の紫陽花いま見頃らしいぞ。」


「あー、らしいね。さっき千佳ちゃんたちが言ってた。」


「なんだよお前興味なさげだな。女は花とかが好きなんじゃねーのかよ。」


「別に嫌いって訳じゃないけどさ、こんな雨の中わざわざ見に行く程でもないじゃん。」


「面倒くさがりかよ。ま、お前みたいながさつい女には花なんか似合わないかー。」


「その口1回縫いつけていい?」


「おー怖。てかお前、この前の約束守れよ!」


「何。約束って。」


「はぁ〜。忘れたのかよ。この前の日本史の小テスト、負けた方がコンビニの限定アイス奢るってやつだよ。」


「あー……。そういえばそうだった。でもあんた今日部活でしょ?」


「こんな天気で野球ができるかよ。いつもは室内でトレーニングだけど、今日はオフなんだよ。」


「あっそ。じゃあ放課後、いつものコンビニね。」


「……いや。今日はコンビニじゃなくて昇降口でまっといて。」


「え、なんで?」


「いいから。おれ、職員室に少し用事あるから、16:40ぐらいにいて。」


「はいはい。」

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