特別1節 年末スペシャル(2020年に投稿したものです)
「クリスマスだねぇ。兄」
「そうだな」
4人で朝食を食べながらつぶやく。俺の横礼が座り腕に抱き着いている、対面にはその光景を頬を膨らませて睨みつけるゆずき、そして左斜めに妹の舞が黙々と食べていた。ゆずきからの視線に逃げるように視線をカレンダーに反らす。
クリスマス。俺はキリスト教信者じゃないからざっとした事しかわからないがキリストの降誕祭らしい。(因みにキリストの誕生日ではない事に最近知った)
去年までは、妹と二人でゆっくりと過ごしゲームのイベントをするのが日課になっていたが、今年は家族が増え騒がしくなっている。特に寄生体である礼とゆずきに関しては、そっちの欲が強く聖夜ならぬ性夜に持ち込もうとする始末。
二人に襲われた時には「お前らア”マ”ゾ”ン”のシーズンツーを知らねぇのか!」と叫んでしまったほどだ。
まぁ、それは置いておいて。窓を見れば一面真っ白の雪景色。関東統合都市何かは積雪が一センチ積もっただけで電車止まるんだろうな。
「どうするんだいマスタ―。これじゃあ外出できないと思うけど」
「うーん。雪降ってますからねぇ。先輩、これケーキ買えないんじゃないですかぁ?」
「それは確かに。けど、今回は精華さん達も家に来てパーティするって言ってるから。連絡入れれば買ってきてもらえるんじゃないか」
「確かに、てかこーんな寒い中外に出るとか自殺行為かよ。はぁ、布団の中に籠ってエロゲ―したい」
妹の言いたいことはわかるんだけど、折角雪が降り積もっているのだし今しかできないことを体験して見るのも良いかもしれない。
「……雪合戦とか雪だるま作りとかやるか?」
「マスターがやるなら」
「先輩しだいですね」
「肌着6枚着なきゃ」
茶色のダップルコートと手袋に上下の下着をちゃんと着込む。
舞はオレンジ色のようなPコートと赤と緑のマフラー、モフモフな手袋に長ズボン、そして地面からの冷気を防ぐための厚底ブーツ。
礼は黒色を基準にし、リボンがピンクのケープに黄色のチェックブラウス、ミニスカートにタイツとハイヒール。雪で遊ぶことを考慮してないな、特に靴。
ゆずきは全体的にまとまっており、白い耳当てに紫色の生地に白いラインが入っている。そして妹と同じPコートの下には深紫のカーディガン。赤目のスカートにタイツにブーツと、まだ比較的考えた服装をしていた。
さて、準備も出来た事だし遊ぼうか。そう思い扉を開けると目に飛び込んできたのは。
「何だアレ?」
「ブラックホールっ!兄ヤバいって」
「マスター下がって」
「これはぁ……」
黒い渦が地面から10センチ浮いたところに聳え立っていた。半径1メートルを超え、成人男性を飲み込めるほどの大きさだ。
普通に考えてこんなの現実じゃない。
「……だんだん近づいてない?」
そう現実逃避したかったが妹の言葉に意識が戻る。確かに近くなっていっている。
命の危機。そう認識した4人の行動は迅速だった。近くにいる人間を背負ってバックステップを開始。しかし、この瞬間を待っていたんだ!と言わんばかりに超加速。
「うお!」
「きゃ!」
「ちょっとっ」
「あにぃぃぃぃぃぃぃい」
そうして四人は穴へと吸い込まれてしまうのであった。
「な、なるほどあんた達がここに来た理由は理解したわ」
「それは、大変だったね。ちょうど、家(うち)もクリスマス、パーティをしようと思ってたんだ」
「秋(あき)ねぇがいいなら私も構わないわよ」
「面目ないです」
目の前の武家屋敷から出てきた二人の女性に対して頭を下げる。
あの後、空中から地面にほっぽり出された俺たちは子の武家屋敷の前に居た。ザ和風、ここまで立派なものを目に収めるには京都に行かなくてはならないだろう。
とにかく、外に居ると寒くて凍るので取り付けられたチャイムを押して出てきたのが先ほどの人たちであった。
信偽が定かではない……いや、俺だったら薬物を決めていると思うだろう不審者たちを門前払いしなかった。
多少狼狽しながらも真摯に話を聞く女性。腰まで届く絹のような美しい黒髪で毛先がやや朱色に染まっている。右頭部には花を模した|髪飾り(かんざし)、服装は肩や胸元が露出した明るめの赤色を主としている和服にミニスカートに白いハイソックスと下駄。そして、腰に掛けられた刀。
容姿は、ツリ目ながらも優しく黒い瞳がこちらを見ていて、唇もふっくらとした桜色。そして礼と同じほどのプロポーションを持っている。つまり胸が大きいのだ。口調はわ、ねを使う結構バシバシいう人。けど、ただ強く言うのではなく口調が柔らかいから不快には思わなかった。
そして、秋ねぇと呼ばれた女性。こちらは和服なのは変わらないが対照的に青い。服もそうだし髪色も全体的に青みが架かっている。身長も胸の大きさも先ほどの女子より大きいし、雰囲気的には精華さんに近い。
けど、どちらかと言うとたれ目で視線を外すとすぐに惰眠を貪る。まるで妹がだらけているような感じかな。
まるで大和美人の姉妹。そんな言葉が当てはまった
「……確かに、こんな極寒の雪化粧で他人とは言え放っておくほど冷感じゃないしね。良いわ上がりなさい。歓迎するわよ」
「ありがとうございます」
「ただし、料理とかの手伝いはすること。わかったわね」
こちらから踵を返したと悪露でもう一度振り向き。
「そう言えば名乗ってなかったわね。私の名前は渦木咲夜よ。気軽にサクヤでいいわ。で、何時もだらけてるのは渦木秋。私は秋ねぇって呼んでる。呼ぶときは秋で良いと思うわ」
「よろしくー」
だらーんと腕を振りながら武家屋敷に入っていく姉妹。
「おっぱいデケェ……っ。これは、礼ちゃんに負けず劣らずのボリューム!?」
「初対面の人間に抱き着いて胸も揉もうとするつもりなのか……!」
妹の暴走(もうそう)に引きながら彼女らの後を俺たちは付いて行った。
その様子をちょっと距離を取って眺めている人間が居た。礼とゆずき所謂、寄生体である彼女たちはあの姉妹の雰囲気と魔力波長を感じ取っていた。
「あれは……僕と同類かな?けど、ちょっと違う」
「ですねぇ。私達より強いと言うか本質に近いと言うか。こっちを暗闇だと例えれば、あちらは深淵ですねぇ」
「……おーい。早く上がろうぜ。雪遊びはチョット延期でいいか?」
「そそ。早く入ろうよ皆。腕が凍って釘が打てるぐらい硬くなっちゃうよお」
「ごめんなさい、マスター。今行きます」
「そうですねぇ。確かに立ってるのもアレですしぃ、上がらせてもらいましょうかぁ」
振り向いたご主人を待たせないため、駆け足で後ろを詰めていく。
また、もう一方のサクヤ達にもその独特の気配を感じ取られていた。
「あれは、天然物の人間じゃないわね。……かと言ってシエルやハーゼのような妖精族(エルフ)や兎人族じゃ無い。どちらかと言えば私と秋ねぇに近い存在」
「第一世代の成功例は、サクヤしかいないし……第二世代は、あの四人で。第三世代?それにしては、無駄が多いと言うか、欠けてると言うか。まぁ、今後関わるかどうかは置いといて、とにかく案内しましよかしら」
「OK」
黒髪を流しながら付いてきているかみる。どうやらちゃんと居るようだ。
四人とも靴を脱ぎ室内を見渡しながら家に上がる。やはりと言うか、ここまでの武家屋敷は中々物珍しいのだろう。
私も、ここまでの物を用意するなんて思って居なかったけれど、やっぱり持つべきものは姉だよね。
今、俺の表情を見ている人は顔が間抜けに見えるのだろう。しかし、ここまでの和風建築は視たことが無い。中学三年生の時に京都に行ったことがあるが、金閣の外観を見上げて圧倒されたがこれはそれ以上であった。
鼻孔をくすぐる木材の香りに温かさ、確かに現代に合わせるように電子機器などが置かれているが、どれも雰囲気を侵害しない物であった。
「ふふ。さて、こっちにリビングがあるわ。付いてきて。荷物はそこに置いてね」
「はい」
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