まぞらいろのおもい
丁度去年の今ごろ、日に日に三島の話題が増えていって、教室でも楽しそうに友達とこそこそ話をして。
何より笑顔が増えた。
すべてが輝いて見えるように過ごしていた。
へへ、と膝の間から声が聞こえた。
「一緒に高校最後の夏を過ごしたいなーなんて思ってね!」
「うん」
「いっそ告白してやろうと思ってさ!」
「そっか」
「そしたらさ、はは、見事に玉砕っていうか、さ」
ちらりと隣を見てみれば、声色に反して想像通りの栞菜がいる。
僕がなにも言わずにいると、彼女は大きく息を吸った。
「『ごめん、他に好きな人がいるんだ』 だーってさ!」
「……そっか」
「……わかってたんだ。わたし、三島にも好きな人がいるって」
「……」
「はは、すぐわかったんだよ!だってわたし、三島が好きだもん」
栞菜は顔をあげ、湿った声で僕に笑いかけた。
「B組の神田さん。のほほんとしてて、誰にでも優しくて、可愛い女の子!って感じなんだ」
「へえ」
「なんだか納得しちゃうよね!男子って大体ああいう、俺が守らなきゃ!ってタイプが好きでしょ?」
「そーだな」
「な!?まさか雪斗、お前も可愛い系の女子がタイプかーーっ!!」
いたっ、いって、いたいってば。
栞菜は突然僕の肩を叩き始めた。
正面を向けば今度は胸板めがけて両手で叩いてくる。
やがてそれは力を失い、ぎゅっと僕のシャツを握って止まった。
「…わたしには、無理だよ」
「……」
「あんなに白い肌なんて持ってないよ。あんなふわっとした雰囲気なんてない、女の子らしい可愛さなんて、ないよ…」
「……」
「くやしいよ…っ!くやしいんだよバカーーーっ!!」
「だったら、早く泣けよ」
「…え?」
顔をあげた栞菜の頭を掴み、下に向ける。
のわっ、と驚いた声が聞こえたけれど、無視をした。
「さっさと泣いてすっきりしろ、落ち着くまで一緒にいてやる。
本当は初めからそうしたかったんだろ?」
「…う、ううっ…雪斗のバカ…バカバカバカ!!」
それからはしばらく、僕は彼女の頭に手を置いたままだった。
きれいな真夏の青空に響くにはあまりに合わない、大きな泣き声を聞きながら。
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