第116話 模倣 Copy bullet
堕天使の翼が衝突した。
90の黒い歪な翼が連なり、闇を作り出す。
それを迎えるのは一つの黒い翼。
デメルギアスの堕天使の翼はレベル100の翼を凌駕していた。
形、大きさ、質量、攻撃の数。
全ての面でレベルの差を見せつけたデメルギアスの翼は何体束でかかってきたとしても薙ぎ払える力を持っていた。
アルフレッドにとっては予想外だった。
本来ならばカイトを行動不能にした時点で勝っていた。
そして懐に莫大なお金が入ると思っていた。
だが、悪魔であり、尚且つ敵であるデメルギアスが何故かカイトを庇った。
それは誰もが予想できなかったことだろう。
まさか、チーティング行為に気付いたのか。
アルフレッドは突如として冷や汗をかいた。
その事実に気付かれてしまえばアルフレッド自身の信頼の失墜に繋がりかねない。
隠滅が必要だ。
その為にもデメルギアスを倒す必要がある。
そんな手を使ってでも。
勝者こそ、強者だ。
アルフレッドは再び記号を唱える。
そして標的をデメルギアスに絞る。
味方の悪魔をばっさばっさと薙ぎ払うデメルギアスの動きを完全にとらえた。
これは自動標準かつ無音で放たれる防御不能の
異質な物体がゲーム内に再び顕現した。
この世界にあってはならない物質。
それが今、デメルギアスに着弾する。
バチッ。
デメルギアスの外殻に着弾した。
「?!」
外殻。
デメルギアス本体には当たらず、デメルギアスを覆う堕天使の翼の応用、防御壁に当たった。
また、外殻も破れることなく、一時的に紫の稲妻が走るエフェクトが表示されただけだった。
当然自分の皮膚に付着した虫に気付くようにデメルギアスに情報が伝わる。
何かが外に張ったバリアに着弾した、と。
その先にはアルフレッド。
デメルギアスは全てを察した。
「俺に向けて、それ、撃ったんだな」
デメルギアスの堕天使の翼はそれを解析した。
そして分解、情報の一部が判明。
提供元、株式会社Thunderのアドレス。
対象を300秒間行動不能にする
解析完了。
デメルギアスが扱う堕天使の翼は解析ができた後、自らの弾丸として扱うことができる。
加えて彼の持つ帝が吠える。
崩壊帝、特殊効果【階級無視】。
ゲーム内に存在するレベルの概念を無視した攻撃を繰り出すことが可能になる。
デメルギアスの周囲を囲む障害物が全て破壊の対象だった。
「死ねェェェ!!」
全方位に、防御不可能の行動不能のする弾丸が飛び散った。
違法かどうか、グレーだが、違法にレベルを上げてもらった悪魔の軍隊はもはや異議を唱えられる立場にいない。
90の悪魔が行動不能に陥った。
その瞬間にデメルギアスの堕天使の翼で作り上げ、西都を陥落させた剣が飛ぶ。
ネメシスを倒した剣だった。
悪魔は消滅した、一人を除いて。
「慢心だな、デメルギアス。私を倒すのを忘れているぞ」
負傷しているが、まだ戦意は健在だった。
だが、デメルギアスはアルフレッドの方向に顔を向けていなかった。
「そういえば、あの弾丸。別の人間に二発目を撃った場合、」
アルフレッドに強烈な寒気が襲った。
「一発目に撃った人間の縛りは解除されるらしいぞ」
≪ザンッッ!!!≫
一振り。
縦から振り下ろされた死の刃は確実にアルフレッドを両断した。
カイトはアルフレッドを見下ろし、興味のない、冷たい視線を向けた。
そして視線の対象をデメルギアスに切り替える。
「良かったなァピンピンしてて」
「余計なことしてんじゃねーよ」
互いに威嚇し合う。
だが、その表情は穏やかに見えた。
デメルギアスは羽を構える。
カイトは剣を構える。
「あの弾、撃っていいぞ、もう避けられる」
「撃つわけねーだろ、馬鹿か。そんなん使わなくてもお前なんか余裕に殺せるわ」
今、二人の弟子による最終決戦が始まる。
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