第115話 進軍 Advance
『Enge : Devil Online』
ナンバーワンプレイヤーランキング予想 (2022.8.21.21:35 更新)
1位 デメルギアス (悪魔)
2位 アルフレッド (悪魔)
3位 カイト (天使)
ダンデ・リ・ユニオンのプレイヤーカイトに対する経験値譲渡はインターネット上で物議を醸した。
悪魔から天使に対する経験値譲渡は意味が分からない。
自分がナンバーワンプレイヤーになる気が無かったとでも言うのか。
今まで応援してきたプレイヤーの意思を踏みにじる行為。
だが、そんなものダンデ・リ・ユニオンの心中には無かった。
なぜならこのゲームはあと数時間で消えると信じていたからだ。
それはつまりプレイヤーカイトがナンバーワンプレイヤーになることに懸けたのだ。
やるべきことは全てやった。
結局経験値も第三者に奪われることなくカイトに渡すことができた。
加えて情報も共有できた。
これ以上ない功績だった。
だが、中継を見ていたダンデ・リ・ユニオン及び澤田和俊は顔をしかめた。
「本気を出してきたね」
モニターにはたった一人の天使、カイトの姿が。
金色に輝いたその翼も目の前に広がる闇に呑まれそうだった。
その闇とは100を超えるプレイヤー。
レベルの制限を無視した違法なルール改正、全員が堕天使の翼を持っていた。
「どうやら観客の考えていることはどうでもいいらしい」
当然このゲームを見ている観客からの非難は大きかった。
何故突如としてレベル100を超えるプレイヤーがたくさん出てきたのか。
意味不明なレベル変動。
悪魔同士はなぜ敵対していないのか。
完全にプレイヤーカイトを狙った包囲網が形成されていた。
これはいくら何でも不公平だ。
だが、観客の非難は一切無視した。
どうやら事が全て終わった後に謝罪すれば済むと思っているのだろう。
重要なのはカイトを殺せるかどうか、それだけなのだ。
「これはかなり厳しいんじゃないですか?」
ダンデ・リ・ユニオンは澤田和俊に尋ねる。
「この数を一人で戦うならね」
含みを持たせたその発言の真意をダンデ・リ・ユニオンは掴めなかった。
*
金色に輝くその翼はレベルが300を超えた天使に与えられる称号の一つ。
この翼を手にしたプレイヤーはネメシス以外に存在しなかった。
だが、その歴史も塗り替えられた。
今、カイトの背には金色に輝く翼―――「勝利の翼」が確かにあった。
カイトは剣を握りしめ、迫りくる悪魔に目を向ける。
黒く、歪な形をした翼が機械音を響かせながら近づいてくる。
一つ息を吐いた。
ここが、正念場だ。
「おおおおおおおおおおお」
カイトが雄叫びを上げ、進軍を始めた瞬間、悪魔たちは呼応するように砲撃を開始する。
1000発を超える弾丸の雨がカイトに降り注ぐ。
カイトの移動速度はみるみる上昇していく。
地面に着弾する前に、悪魔に矛先が届いた。
一振り。
攻撃力がカンストを記録した死の剣。
斬られた防御なしのプレイヤーを確実に殺す悪魔の剣。
その剣は黒く、赤い火花を散らしていた。
カイトの目は赤く充血し、頭からは赤い火花が散る。
その火花が腕を伝い、剣へと伝播する。
その正体こそが脳波であった。
今、脳波が可視化されていた。
限界などとっくに超えていた。
カイトにとって、そんなことは些細なことだった。
≪ズザンッ!!!≫
前衛の悪魔が怯んだ。
衝撃波。
ネメシス直伝の横刃剣。
斬った対象に強力な衝撃波を与え、怯ませる。
怯んだ悪魔に追撃を与える。
衝撃波の強いポイントとしては相手のガードをも破れるところにある。
ガードブレイク。
一時的に無防備になった悪魔に死神の鎌が飛んでくる。
10の首が飛んだ。
近距離からの銃弾を避けるために一時的に撤退する。
追尾弾がカイトを追う。
弾丸は止まない。
だが、弾丸はカイトのスピードを捕らえられない。
カイトは後方に斬撃を飛ばす。
その斬撃は追尾弾に直撃し、爆発した。
空中で旋回するとまたカイトは悪魔の軍団目掛けて急接近する。
弾丸は最早、当たらない。
見切れる、そう確信していた。
筈だった。
≪ダンッ!!≫
放たれた弾丸に直撃した。
音が無かった、加えて姿が見えなかった。
なんだ、これは。
致死量のダメージは与えれらていない。
これは、一体。
バチッ。
カイトは異変に気が付いた。
身体が、動かない。
「ようやく止まったか」
声の主はこの軍団を率いている悪魔、アルフレッドだった。
東の都の王にしてレベル200を超える悪魔だ。
「悪く思うなよ、お前を倒せば金が手に入るんだ」
銃口がカイトに一斉に向けられた。
カイトの表情は崩れなかった。
この状況を打開する方法は。
思いっきり力を出しても破れない。
力じゃない、もっと根幹にあるシステムの話だ。
「死ね」
放たれた銃弾はカイトに直撃した、と思われた。
全ての弾丸は斬られた。
何千本もの刃によって。
「なぜ庇う?デメルギアス!!」
「……俺はあんたを過大評価してたみたいだァ……地に落ちたな!!カスがァ!!!」
こんな理不尽な、不公平な戦いがあっていいはずがない。
コイツは俺が倒す。
お互いの全力で、叩き潰す。
ネメシスの後継者は俺一人で十分だ。
デメルギアスは堕天使の翼を解放した。
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