放置すればするほど強くなるゲームを5年間放置したらいつの間にか最強プレイヤーになってました。〜ぼっちは嫌なので最強であることを隠します〜
第100話 ネメシスvsデメルギアス Master and Pupil
第100話 ネメシスvsデメルギアス Master and Pupil
拡張された攻撃パターン。
それも全て彼の前では無意味だった。
デメルギアスが使役する帝は崩壊帝、その特殊効果はレベル概念を無視した防御不能の攻撃。
レーザービームを打ち込んでも身体を一捻りするだけで難なく避けられてしまう。
防御不能であっても回避不能な攻撃ではない。
そこがダンデ・リ・ユニオンの使役する帝との明確な違いである。
(何か、策は無いのか…?!)
思考を巡らせる。
今は何とかネメシスが近接攻撃に踏み込んでこないように足止めをしているだけに過ぎない。
少しでも気を緩めたのなら即座に間合いを詰めて攻撃してくるかもしれない。
だからあらかじめ遠距離から射撃を繰り返す。
その時、デメルギアスは自分がいつの間にか逃げ腰であることに気が付いた。
なんで自分は恐れているのだ?
いや、恐れるのも当然と言えば当然か。
目の前にいるのはこの世界で一番強いとされるナンバーワンプレイヤー。
彼と戦っているというだけで震えが止まらない。
標準がブレる。
俺は一体何をしたかったんだっけ?
ふと思う。
自分の行動理念さえ忘れそうになっていた。
それほどまでに彼は緊張し、そして本来のパフォーマンスを出せていなかった。
「やめだ」
ネメシスが剣を振った。
その衝撃波でデメルギアスの発砲は止まった。
ネメシスは動く気配が無い。
「お前はなんでそんなにも強い力を持っているのに遠くからの攻撃しか打ってこない?このままだと一生当たらないぞ」
デメルギアスは静かに相手の動きを探る。
「それに加えお前の動きには迷いが見える」
図星だ。
デメルギアスは思わず顔を背けた。
しかし、ネメシスの言葉によって再び彼は奮い立たされる。
「俺を殺すんじゃなかったのか」
その瞬間、彼の中に眠っていた何かが爆ぜた。
危うく目的を、見失うところだった。
異形の翼は変形する。
デメルギアスが念じたままに。
変形した翼は散弾銃だった。
そして自身の移動速度を上昇させ、ネメシスに近づく。
地を這うような高速飛行で間合いを詰める。
そして放つ。
放たれた弾丸は炸裂弾。
それも同時に10発。
ネメシスの前で炸裂した。
それで安堵するほど、デメルギアスは鈍っていなかった。
勢いを殺さず、そのまま突撃する。
変形されたその翼は剣。
炸裂した場所目掛けて剣を振るう。
その剣はようやく届いた。
ネメシスはデメルギアスの剣を受け止め、嬉しそうに笑った。
「そうだ!それでいい!!」
ネメシスがデメルギアスの剣を払うと、一撃をお見舞いする。
(剣が見えないッ!!)
後方に飛ばされたデメルギアスは背中に生えた翼でなんとか転がることを防ぐ。
そして弾力のあるクッションのように素材を変化させると、そのままの勢いでネメシスに果敢に攻撃を繰り出す。
今度は力を掛けて。
簡単に払われないようにするために。
だが、ネメシスは生粋の悪魔だった。
これまで天使サイドを経験したことはない。
そのため、銃の扱いには慣れているが、剣など全くの無知。
ネメシスに取って見れば木の棒を振るう小学生並みの技量しかなかった。
連撃を喰らわされる。
防御、しなければ、死ぬ。
ここまで貯めてきたレベルも、経験値も全て消滅する。
だが、体力残り僅かの所で、ネメシスは剣を止めた。
「なんで、?」
「お前にはまだ見込みがある。ここで殺すのは惜しい」
ネメシスは剣先をデメルギアスに向けながら続ける。
「俺がなぜ弾丸に当たらないか知っているか?」
デメルギアスは答えなかった。
「それは昔、俺が悪魔だったからだ。悪魔のチカラを全て熟知した上で俺は天使になった。仮にお前と銃撃戦になったとしても俺はお前に勝つだろう」
「何が…言いたい?」
「要するにだ、お前はまだ強くなれる。悪魔にとって堕天使の翼から生成する剣技の習得は第二フェーズだ。お前は自力でその門を開けた、それは評価に値する。だが、扱いきれていない。だからこそ成長の余地がある」
デメルギアスは思わず泣きそうになった。
敵であり、目標。
自分のすべてを投げ出しても勝ちたいと思った相手。
それがネメシスだった。
そのネメシス本人から強くなれると言われた、それはデメルギアスにとってこの上ない幸せだった。
「俺は、あなたを殺します…そのためなら何だってする…例えこの世界の全ての人間から恨まれようとも」
「俺から一つ試練を出そう」
「試練?」
ネメシスからの急な提案を不審に思う。
「心配するな、お前ならできることだ」
「そ、そうですか」
ネメシスはデメルギアスの優しく諭す。
「西都があるだろ?あそこに単独で乗り込み、破壊してこい」
「はかい?」
「全て、破壊だ」
敵であり、目標であり、憧れの存在であるネメシスから破壊命令が下された。
そんなの、やるしかないじゃないか。
即座に了承する。
間髪入れず、ネメシスは続ける。
「ただし!銃は禁止だ。剣のみ使い、西都を落とせ。その暁には俺ともう一度戦わせてやる。これは約束だ」
「え、それは一体…」
「全てはお前が強くなるためだ」
その瞬間、デメルギアスの目の色が変わる。
「わかりました、今から乗り込んで、破壊してきます」
「その意気だ」
ネメシスは満足したようにデメルギアスを見送る。
そして内心で笑いながら「コイツ、扱いやす」と本音を漏らした。
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