放置すればするほど強くなるゲームを5年間放置したらいつの間にか最強プレイヤーになってました。〜ぼっちは嫌なので最強であることを隠します〜
第97話 全てを破壊する者 God of Destruction
第97話 全てを破壊する者 God of Destruction
時は少し遡り、北都前荒野地帯。
ネメシスを囲う東都と西都からなる包囲網は確実に標的を捉えていた。
出現と共に何万という銃口がネメシスには向けられ、迫りくる最強に向かって発砲されようとしていた。
銃を構える一人の悪魔は思わず震えた。
静かにこちらに近づいてくる一人の天使はここにいる誰よりも悪魔だと思った。
静かに笑みを浮かべながらロングソードを抜く。
そして言葉を発する。
「よく狙って打て。どうせ当たんねーんだからよ」
東都と西都の指揮官は一斉に発射の合図を出す。
その光景は異様だった。
一人のプレイヤーに対して何万と言うプレイヤーが一斉に銃を構え、そして同時期に発砲する。
一人一発発射したとしてもその弾丸の実数は数万に及ぶ。
「冗談だろ…」
一人の悪魔の銃から発せられる弾丸を避けることは銃口の傾きや向きを観れば予測は出来なくはない。
だが、数が違いすぎる。
この数を予測するのは常人には不可能だ。
それを可能にするのはネメシスの観測眼と反射神経と動体視力か。
態勢を崩すことなく歩みを続ける。
何度も発砲されたが一度も当たらなかった。
しかし、ネメシスの剣が動いた。
ネメシスの右横から発せられた弾丸に反応し、ネメシスは剣を動かし弾く。
「やったぜ!ネメシスに剣を使わせたぞ!!」
大柄な悪魔は大声で叫ぶ。
発した弾丸は炸裂弾。
避けたとしても対象のプレイヤーの近くで炸裂し、ダメージを与えるというもの。
弾丸が当たらないのなら避けられることを前提に動くしかない。
そう考えた結果だった。
だが、ネメシスは即座にその悪魔をロックオンし、一瞬で間合いを詰める。
「ちょ、まっ」
≪ザンッ!!!≫
一撃、一刀両断。
悪魔側は一撃で葬り去られることは分かっていた。
なにせレベルが違いすぎる。
一人のプレイヤーを倒すために悪魔に近づいたネメシスは悪魔にとって格好の餌食だ。
「今だ!!殺れ!!」
周囲にいた悪魔がショットガンを構える。
しかし、一瞬でネメシスの周囲にいた悪魔の首が飛ぶ。
剣は見えない。
速すぎる。
瞬きをしただけで目の前に数十の死体が転がっていた。
至近距離での戦いは剣に分がある。
銃では標準を合わせるのが非常に難しい。
このままでは悪魔サイドは何も手出しができない。
遠距離からネメシスを打った場合味方である悪魔に着弾してしまう可能性があるからだ。
だが、指揮官は構わず発砲許可を下ろした。
「おいおい、混戦状態にする気か?」
ネメシスは嘆くが、攻撃の手は止めない。
その状態で視界が悪い中千の弾丸を避けなければならない。
普通に考えれば無理なゲームだ。
だが、それは悪魔も同じ。
味方を打つことを恐れて撃てない悪魔が多くいた。
悪魔側に迷いが生じた。
初めに弾丸が当たらなかったその時に既に勝敗は決していたのかもしれない。
このように戦況が泥沼化してしまえば最早打つ手はない。
後方にいたプレイヤーは撤退を始めた。
この場では狩られるのをただ待つ存在にしかならない。
そう判断したのだろう。
だが、その時、悪魔側の迷いを破るような攻撃が炸裂した。
「ダンデか!!」
ネメシスは上空を見上げる。
そこには異形の者が下界を眺めていた。
巨大な魔方陣のようなものが地面に生成される。
ダンデ・リ・ユニオンの特殊技【皆殺し】は範囲内に存在する全てのプレイヤーに一定のダメージを与えるというもの。
魔方陣の範囲は荒野全体を覆っていた。
「今回はノーダメクリアできると思ったんだが…!!くそったれ」
神の裁きが下される。
範囲内の全てのプレイヤーに999,999ダメージ。
防御は不可能。
避けるためには範囲外に逃げなければならない。
カンスト値ではないものの100万近くのダメージが全てのプレイヤーに与えられる。
当然殆どの悪魔は絶命する。
ネメシスにも初めてのダメージが入る。
だが、ネメシスの周囲には敵が居なくなった。
それどころか荒野にはダンデ・リ・ユニオンとネメシス以外のプレイヤーはいなくなった。
「ったく…単純技能でどうにもならん攻撃はやめろって」
ダンデ・リ・ユニオンは答えず攻撃を仕掛ける。
「ああ、奪われてんのか。んじゃ、助けてやるよ」
飛行能力で空へと飛ぶネメシスにダンデ・リ・ユニオンは対応する。
背中に生やした異形の翼を変形させる。
生成されしは漆黒の大剣。
ネメシスは特殊技を発動させる。
ネメシスの持つロングソードが赤く光る。
そして二つの刃は上空でぶつかり合う。
衝撃波が周囲に飛び散り、荒野には亀裂が入った。
攻撃の質量は同格だったのか、拮抗していた。
ネメシスは攻撃をしながら笑みを零す。
均衡が破られる。
ネメシスが攻撃力を高めたことでダンデ・リ・ユニオンは競り合いに負けた。
そしてネメシスはロングソードを振りかぶる。
「落ちろ」
≪ドッ!!!!≫
叩きつけられたダンデ・リ・ユニオンは下界へと落ちていく。
ネメシスは追撃を止めない。
持っていたロングソードに力を込め、ダンデ・リ・ユニオンの巨大な身体を目掛けて投げる。
一筋の彗星のような軌道を描きながら剣は突き刺さる。
そして高速でダンデ・リ・ユニオンに近づき、刺さった剣を握るとさらに奥へと突き刺す。
巨体は地に落ちる。
同時にダンデ・リ・ユニオンの体力は1になった。
姿は元に戻り、仰向けに倒れた姿で現れた。
ネメシスの大剣はダンデ・リ・ユニオンの顔のすぐ横に刺さっていた。
「…ネメシスか…」
意識が戻ったダンデ・リ・ユニオンはネメシスに気が付くと声を掛けた。
「お前がそのチカラを使うのは俺と戦う時だけだと思っていたぜ」
「オレもそのつもりだった」
身体を起こし、頭を抱える。
「なにがあった?お前が攻撃を受けるなんて珍しいじゃねぇか」
「少し気掛かりな事が起きた。考え事をしていただけだ」
気掛かりな事?とネメシスは聞いた。
「それはお前の本職の話か」
「このゲームの話でもある」
ダンデ・リ・ユニオンは真剣な顔をネメシスに向ける。
「頼む、ネメシス。俺を見逃してはくれないか?俺はこの世界でまだやることがある」
旧友からの真剣な頼みごとに一瞬怯んだネメシスだったが、フッと笑うと
「元々お前を殺す気なんかねーよ。あんな中途半端な状態で勝っても何にも面白くねぇ」
ダンデ・リ・ユニオンはニコリと笑うと静かに助かる、と言った。
「にしても、宿敵たる俺に頭下げてまでやりたいことってのは一体何なんだ?」
ネメシスからの問いにダンデ・リ・ユニオンは一瞬話すかどうか悩んだ。
しかし、話すべきであると判断したのか、一度頷き、ネメシスを見つめた。
「この世界では今実験が行われている」
「実験だぁ?」
ダンデ・リ・ユニオンは頷く。
「二人の人間を使った生死に関わる実験だ。その裏にはこのゲームの闇が潜んでいる。オレはそれを止めるために動く」
ダンデ・リ・ユニオンの決意にふーん、と相槌を打つネメシス。
「当てはあんのか」
ダンデ・リ・ユニオンは顎に手を当てる。
「倒すべき最大の敵は今回の実験に参加した二人の人間を常に監視している。そのために一番近くにいる存在、それが諸悪の根源であると踏んでいる」
ダンデ・リ・ユニオンは続ける。
「今回はナンバーワンプレイヤー云々のレースからは離脱させてもらう。オレが倒すべき敵はもっと強大だ。お前よりもな」
「俺よりも強大な敵がいるものか」
ダンデ・リ・ユニオンとネメシスは互いに笑う。
「お前は相も変わらず1番を目指すのか」
「いいや?どうかな。俺はこの世界で刺激に飢えている。新世代に託すってのもアリかもな」
「おいおい、冗談だろ?天下のネメシス様がそんなこと言うなんてよ」
「俺らはもう何年も戦ってきた。やることは雑魚を倒してレベル上げて強くなってお前みたいな強者と戦うだけだ。固定されてんだよ、それがこのゲームをつまらなくさせてるのかもな」
ネメシスは続ける。
「俺らが引退すれば自ずと新世代が出てくるんじゃないか?そうすればもっとこのゲームは面白くなる」
意気揚々と話すネメシスにダンデ・リ・ユニオンは言った。
「確かにな、お前がナンバーワンになってもゲーム内の時間を変えることしかしないからな」
ネメシスはそうだな、と笑った。
話し終えるとダンデ・リ・ユニオンはネメシスの肩に手を置いた。
「オレは行く。お前も自分のやるべきことを遂行しろ」
「別にやるべきことなんていう大層なもんはねーよ。ただ刺激を欲する老害だ」
ネメシスが言うとダンデ・リ・ユニオンは去っていった。
彼の抱えるものがどれだけ強くて大きなものであっても関係ない。
土俵が違うからだ。
ダンデ・リ・ユニオン、彼には彼の仕事がある。
ネメシスは空を見上げる。
辺りは静寂に包まれていた。
(俺のやるべきこと)
ネメシスがデメルギアスと出会ったのはその時だった。
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