第91話 デメルギアスvsシュベイン Second Round

 堕天使の翼 対 堕天使の翼。

 レベル100を超えたプレイヤー同士の戦いはこのゲームが終盤に差し掛かっていることを意味する。

 堕天使の翼を手にしたプレイヤーを低レベルのプレイヤーが太刀打ちすることは困難極まりないため、ほぼ敵なしの状態が続く。

 ただ、高レベルのプレイヤー同士の戦いは激化する。

 終盤戦となれば誰よりも強く、そして高いレベルを保持していなければナンバーワンに成れない。

 自分が強くなるために、相手を打ち破る必要があるのだ。


 ここで今一度ナンバーワンプレイヤーの定義を説明しよう。

 全ての都を手中に収め、ゲーム内最高のレベルを保持すること、である。

 悪魔の場合は全ての都で統率者となり、天使の場合は全ての都の国教を天使教にする、つまりは悪魔の支配から天使の支配へと変革させることが必要である。

 加えて最高レベルを保持していなければならないため、かなり難易度は高くなっている。


 しかし、それもレベルやステータスが一定値を超えれば簡単な作業となる。

 だからレベルの上昇と共に都を陥落させるクエストが出現するのだ。

 もちろん他のプレイヤーに干渉されないことなど有り得ない。

 決まってナンバーワンプレイヤーになるために障壁となるプレイヤーが現れる。

 その相手こそが、シュベインであり、デメルギアスであった。


【悪魔王の血】


 デメルギアスが道具を使用した。

 自身の攻撃力を上昇させる効果だ。

 デメルギアスは他にも攻撃力を上させる効果を誘発させる。

 だが、攻撃力はカンスト値を迎え、それ以上は攻撃力は上がらなかった。

 そこに防御不能の弾丸が通る。

 避けることはしなかった、攻撃力の上昇に酔っていたため、気が緩んでいた。

 その弾丸は道具の効果が付与されていた。


 効果の名は【効果低下ダウナー


 相手の上昇倍率をマイナスに置き換えるというデバフ効果を付与する。

 攻撃力は乗数で上昇する。

 その値がマイナスであるため、カンストした攻撃力は一気に0へ。

 デメルギアスがどれだけバフを付与しても0にいくら掛けてもステータス値は0のままだ。


 デメルギアスは静かに舌打ちをすると飛行能力を使用し、逃げる。

 このデバフの効果には効果持続時間が設定されている。

 その時間は2分。

 2分を耐えれば攻撃力は元通り、カンスト値まで一瞬だ。

 だが、この2分の間はシュベインに攻撃を与える手段が無い。

 防戦一方である。

 だが、シュベインの攻撃は防御不可能なレベルの概念を無視したもの。

 防戦一方だが、防御ができない。

 となれば逃げるほか、やることはない。


 しかし、それをシュベインはみすみす許すことなどなかった。

「逃がすか」

 シュベインの翼が大砲のように変形する。

 開かれた大きな銃口は空へと向いていた。

 機械的な音が響き渡り、エネルギーを溜めているようだった。

 そして光の線が発射される。

 辺り一帯に衝撃波のようなものを発しながらそのレーザービームはデメルギアス目掛けて飛ぶ。


 デメルギアスは避ける。

 空の彼方まで高速で移動することによって。

 デメルギアスは更にスピードを上げる。

 何とか撒いた。

 荒い息を上げながら上空で佇むデメルギアス。

 一度でも当たったら即死という緊張感と今まで体験したことのないスピードの戦いの高揚感を感じていた。

 デバフ持続時間はあと1分。

 安心はできない。


 シュベインの光線は続く。

 音もなく発せられる光線を避けながらシュベインを観察する。

 相手にはミカドという強力な力がある。

 帝を封じ込めることができればシュベインを倒すことができる。

 無条件で帝の力を使えるなんてことがあるのか、とデメルギアスは疑問に思う。

 必ずデメリットや何かしら不利益なことを自身に課しているはずだ。

 ただ、視覚情報から得られるシュベインの帝を使用する際のデメリットは見えなかった。

 体力が削られることによる体力面の負担や視覚や聴覚の制限と言った五感を縛るようなものでもないだろう。


 と成れば。

 弾速自体はそこまで速くない飛んでくる防御不能の弾丸を避ける。

 そして攻撃力が0の状態で異形の翼を展開する。

 追尾機能、散弾型ミサイルを装填。

 バシュッ!!と四方に放たれる弾丸はシュベインが光線を放った瞬間と合致した。

 双方は空中で衝突する。

 だが、四発のミサイルは光線と激突した一発を除いて三発残っていた。

 そのままシュベインの下へと引き付けられるように吸い込まれるようにミサイルは直撃する。

 シュベインにダメージが入った。

 ダメージこそ少なかったものの、攻撃力0の攻撃がダメージとして換算された。

 シュベインは悔しそうに奥歯を噛む。


「見えたぜ…お前のチカラ…!!帝使用時はんだろ!?」


 表情を崩さないシュベインだったが、焦りの感情が生まれていた。

「知ったところでどうする…?!お前に防ぐ術はない…!!」

 音もなく、光線が連射される。


 シュベインの光線を難なく避け、デメルギアスは心底楽しそうに笑う。

「それはお前も同じだ…!!この光線は攻撃力と帝の力を付与している関係上重くなっている。弾速が遅いんだよ…!!避けることなんてカンタンだ。お前はまだレベル100の世界に慣れていない」

 きっぱりと言い張るデメルギアスに反発しようとするシュベイン。

 しかし、相手の言っていることがあながち間違っていないことは確かだった。

 シュベインにとってレベル100を超えたのはものの数分前。

 それに引き換えデメルギアスはレベル100を超えてから実戦経験がある。

 放たれた光線は虚しくデメルギアスの背後の山を削っていく。


「お前はまだチカラの拡張を知らない…!!堕天使の翼はこうやって使うんだよォ!!」

 より一層赤く光り出す堕天使の翼。


「堕天使の翼はいわば想像力により生まれる攻撃…天使が持つトリガーみたいなもんを自由自在に発動できる…」

 異形の翼からジェットエンジンが生成される。


「バフ効果、ステータス上昇効果、自分の想像力と感情の赴くままだ!!」

 一瞬でシュベインとの間合いを詰める。

 その時、デメルギアスのデバフ効果が消えた。

 シュベインはその瞬間に帝の能力を解除するのが遅れた。

 否、できなかったのだ、それほどまでデメルギアスが早かった。


 ≪ザンッ!!!≫


 それは発砲音では無かった。

 斬撃。

 異形の翼からは一本の鋭利な赤い大剣が生成されていた。

 攻撃は当たった。

 カンスト値に加え、シュベインの防御力はマイナス値だった。

 カンスト値を超えるダメージはシュベインを殺した。

「お前の敗因は実戦経験の少なさと帝の濫用だ…俺ならもっと上手く使える」

 経験値が移動する。

 それと同時に帝との契約権も移動する。


『帝NO.002 崩壊帝 』

 特殊効果 【階級無視】ゲーム内に存在するレベルの概念を無視した攻撃を繰り出すことが可能

 特殊技 【秩序崩壊】攻撃時他の物質、デバフ効果を無視し攻撃する


 ニタリと笑うデメルギアス。

 これで一歩、また一歩奴に近づいた。

 もう既に戦いに望む態勢は整っている。

 あとは時を待つだけ。

 ネメシスが出現する5日0時まではあと4時間を切っていた。

 デメルギアスは一時的にこの世界からログアウトした。



 デメルギアス

 装備 フルオートライフル

 LV.156

 体力 1,784,355

 素早さ 165,211

 守備力 1,385,600

 攻撃力 1,689,076

 懸賞金 1,000,000,000


【堕天使の翼】

 飛行能力

 バフによる攻撃力上昇値が乗数になる

 攻撃の拡張



『帝NO.002 崩壊帝 』

 特殊効果 【階級無視】ゲーム内に存在するレベルの概念を無視した攻撃を繰り出すことが可能

 特殊技 【秩序崩壊】攻撃時他の物質、デバフ効果を無視し攻撃する

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