第80話 ミズキvsデメルギアス Sword vs Gun

 ミズキはデメルギアスをじっと見つめ、相手の動きを観察した。

 腕に貼られたワッペンは「W」。

 あれは西都の所属を表すワッペンだ。

 使用する武器はフルオートライフル。

 広範囲に弾が広がり、一発に何発もの弾が発射されるショットガンとは違い、狙った場所、位置にのみ直線状の弾道を描きながら着弾する。

 つまりは相手の銃口の向きを観察していればその直線状に居なければ弾は当たることはない。

 もちろん発射されてからコンマ数秒の時間しか行動することができないため、かなりの反射神経と動体視力が必要だ。

 目安としては次相手が銃を構え、向けた銃口の先から逃げること。

 それができれば弾が当たることはない。


 ガチャリ。


 銃がミズキの方向目掛けて構えられた。

 即座に左に体を反らせる。

 ドッと発射された弾丸は後方の木に着弾した。

 デメルギアスは一瞬不意を突かれたような表情をあらわにしたが、すぐにニコリと顔に笑みを戻すと連射を始めた。


 狙いは完璧だった。

 全てミズキの居る場所に弾が着弾した。

 しかし、ミズキが居る場所ではなく、元居た場所、既に立ち去った場所に着弾していた。

 身体を反らしたり、頭を傾げたりしながら全ての弾を避けていく。

 狙いが完璧であるということは確実に今いる場所に弾を当ててくるということである。

 つまりはその前に場所を移動するだけで難なく弾は避けることが可能である。


 逆に厄介なのは狙いが定まっていない初心者の銃使い。

 彼らは狙いもバラバラであるがために着弾する場所も完全ランダム。

 本人すらも着弾する場所が分かっていないほどだ。

 その場合は掠ることはあるかもしれないが、銃口を覗けば弾が出る方向は予測ができる。

 天使は圧倒的な不利な状況で戦うために、この戦い方をマスターしなければ悪魔一人を倒す事すら難しい。


(どうなってやがるッ…!!弾が当たらねえ!!)


 カチカチッ。

 弾切れだ。

 リロードをしなければ次弾を放つことはできない。

 それを待っていた。

 ミズキの羽が展開される。

 ステータス上昇、移動速度2倍。



 ≪ザンッ!!≫



 斬撃がデメルギアスの身体を掠める。

(避けてくるか…)

 着地し、次の斬撃を放とうと構える。

 しかし、デメルギアスは既にリロードを終えていた。

 広範囲にランダムに放たれる弾丸。

 デメルギアスは自身が回転しながらトリガーを引き続け、乱射を続けた。


(攻撃を避けながらリロードを済ませるなんて…器用な)

 ミズキは二発の弾丸を体に掠めた。

 合計2000ダメージ。

 一発1000ダメージ。

 ここで改めてダメージの換算方法を明記する。

 ダメージは相手の攻撃力から自分の守備力を引いた値である。

 ミズキの守備力は185.491であるため、相手の攻撃力は187,491であることがわかる。

 もちろん守備力を超えられなければダメージを与えることはできない。

 相手の守備力、攻撃力を加味しながら自身にバフを与え、攻撃パターンを考えなければならない。

 それがこのゲームの戦いの醍醐味と言えるだろう。


「ダメージ弱ぇな…攻撃力上げるかぁ…」


 面倒くさそうに舌打ちを打つとインベントリを開く。

 そして道具を使用する。


【悪魔王の血 攻撃力値3倍】



 誘発、特殊効果発動。

【攻撃力上昇時効果 攻撃力1.5倍】



 誘発。

【攻撃力上昇時効果 攻撃力1.3倍】



 誘発、誘発…。



(いくつ攻撃力上げるバフ持ってんのよ…!!)

 ミズキが心の中で叫んでいるとそれを読んだかのようにデメルギアスは微笑む。

「一旦攻撃力が上がるとそれに連動して攻撃力が上がる仕組みだァ…おれって天才じゃねぇか?!」

 ミズキは特に何も反応せず、剣を静かに構える。


「守備力上げなくて大丈夫かァ?俺の攻撃力は50万を超えたぞォ?!」

「当たらないから大丈夫よ」

「言うじゃねぇかァ…!!んじゃ、よく守っとけ!!」



 ≪ダンッ!!!≫



 放たれた弾丸はだった。

 瞬間、弾道がミズキの目に映った。

(弾が散っているッ!!!)

 攻撃力を上昇させている時にカスタムを変えたようだ。

 弾道が見えたのは弾速が遅いから。

 目で追えるほどの速度…しかし当たれば即死。

 後方に飛ぶミズキだが、弾は地面に着弾した瞬間、跳ねる。


(跳弾ッ!!)


 地面で跳ねた弾丸は加速し、速度を上げる。

 そして地面を跳ねたいくつかの弾丸はミズキに迫る。

(避けられないッ!!)



 ≪キンッーーー≫



 正面に向かってきた弾丸を斬った。

 加速など元から無かったように。

 難なく斬る。

「おいおい、マジか…お前、何モンだァ…?!」

 ミズキは持っていたロングソードを強く握る。

 そして立ち上がるといつものように剣を構えた。

 剣道の構え、背筋を伸ばし腕をピンと張り、剣を45度に構える。

「私はミズキ。愛する者しょうがくせいを守る者」

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