放置すればするほど強くなるゲームを5年間放置したらいつの間にか最強プレイヤーになってました。〜ぼっちは嫌なので最強であることを隠します〜
第51話 公式組織 Official organization
第51話 公式組織 Official organization
戒斗はバトルフィールドから中心都市へと帰還した。
もちろん、アカウント共有をした後に。
多分今回の戦いではなんとか隠し切れただろうと思っていた。
煙幕のお陰で姿を見られることはなかっただろう。
戒斗は周囲の歓声に耳を傾けることなく、そそくさと出口へと向かった。
空は夕暮れ。
赤い夕焼けが白い雲を染めていた。
歓声はというと主にガンマへの歓声が多かったか。
まぁ、一番活躍したと見受けられたのだろう。
表面だけ見ていればそう思うのも当然だ。
裏でどんな暗躍をしていようが、知ったことではない。
ガンマの
マルスの
そして無記名
この三組織が明後日行われる決勝戦へと進む。
マルスは何やら肩を落としていた。
勝ったのにも関わらずだ。
決勝戦へ進出したにも関わらずだ。
戒斗には考えていることがあった。
それは情報が流れた源だ。
どこから情報が漏れたのか。
そこで戒斗が考えたことは予選を勝ち上がった
そしてその情報の集約場所は一番生存人数が多いガンマたちの
となると、内通者は最低二人でいいということになる。
浪河 玲に会ったあの炎の戦場でガンマはマルスが前に居たのにも関わらず浪河 玲を優先して倒した。
それは危険度なのかもしれないが、それにしてはマルスとは至近距離で接していた。
何か、あるのか?あの二人の間には。
実を言うとこの中に内通者が居るとは確信がつけない。
それは記録映像を見た部外者からの調査報告があった…みたいなことも否定できないからだ。
取り敢えず、戒斗は勝ち残った。
そして例え情報が漏れたとしてもそれは「戒斗」の話。
「カイト」は誰にも知られていない。
*
「カイトー!!」
外の広場で待っていた四人のメンバーに戒斗は会う。
どうやら最後の最後まで見てくれていたようだ。
「よく生き延びれたな!」
翼の言葉になんとかな、と返す。
なんだかいつも無表情のミズキを除いて他のメンバーはどこか目を泳がしているような雰囲気だった。
なんだ?
戒斗は不思議に思ったが、特に疑問視することでもないだろうと思い改めた。
「そ、それにしても、戒斗が決勝進出なんて、考えてもいなかったぜ!」
「そ、そう?私は意外と行けるかもって思ってたよ?」
「はは、」
なんだ?この違和感の塊みたいな会話は。
この会話はただ場を繋ぎ止めているだけのように感じた。
にしても、なんだ?みんな、どこかおかしい気がするが。
ツカサの乾いた笑いなんて久々に聞いたぞ。
「そうだ!この後カイトの決勝進出祝いでもしよう!」
リナの提案。
戒斗を除くメンバーは賛同した。
残る戒斗は。
「悪いな、今日は落ちさせてくれ」
その言葉だけで察してくれたのか、メンバー全員は特に執拗に勧誘することはなかった。
「そうだよね。カイトも疲れてるだろうし」
「悪いな」
「主役がいないと始まりませんからね」
「全くだ!」
[今日はゆっくりお休みなさい]
本当に良いメンバーに巡り合えたものだ。
戒斗はメンバーたちがいる前でログアウトをした。
*
「やっぱり勝ち上がったぞ。アイツ」
ここは第8区画『ラミ=cafes』大通り路地裏店。
人が密集した大通りから少し外れたこの場所はあまり人は集まらない。
隠れた名店。
上級プレイヤー御用達のこの店は比較的安価な価格でレアアイテムや武器が連日取引されたりしている。
だが、このイベント中はそのようなプレイヤーはいなかった。
中は暗い雰囲気が漂い、等間隔でカウンターテーブルの天井に設置されているライトだけがその場を照らしていた。
そこに二人。
頭から悪魔のような角を生やした大柄な男。
その隣でトランプをシャッフルしている黒いスーツに身を包んだ若い男。
その二人は手元のグラスに注がれた赤い液体を飲みながら談笑している。
「それは勝ち上がるでしょうね。なんたってクロミナ界最強のプレイヤー。いやぁ、惜しい」
「フン…。アンタの思い通りに進まねぇもんだなぁ」
そう言うとギラは赤い液体、【
「何を言ってるんですか。貴方を勧誘したことでかなりの利益になった。それは私にとってプラスでしかない」
「これだから目先の利益しか考えない大人は嫌いだ」
「それで何が悪いんです?」
するとそのスーツの男は手に持っていたトランプの束を裏にしてカウンターテーブルの上に置いた。
そして一枚上からめくった。
それはハートの3だった。
「先のわからない世界。これをめくれば次にもっと良いカードが来るかもしれない。そう思い、まためくる」
次に出たのはダイヤのキングだった。
「運良くとても良い人材を得ることができた。だが、それは…」
次に出たのはジョーカーだ。
「全てを失う可能性もある」
「何が言いたい?」
ギラは目を細めながら聞いた。
するとそのスーツの男はつまりですね、と言うと束ねてあったトランプを表にしてバラバラに崩した。
そしてそこから"クイーン"のカードを手にした。
「目先に広がる利益、それを一つ一つ、しかし確実に得ることで確実に成功するんです。例え、その環境を作るのに時間が掛かったとしても」
するとギラは溜息を一つ付くと、
「つまり、失敗はしたくないと。そして確実な成功方法を得られるまで待つと」
「環境を整えると言ってもらいたいですね。まぁ前者は合っているのですが」
するとそのスーツの男はトランプを纏めると懐にしまった。
そしてギラの方を再び見ると、話しかけた。
「"仕事"の方はどうですか?」
「あぁ、いつも通りだ。いつも通りくそ共を成敗するだけのくそ仕事だ」
「それは結構ですね。問題はありますか?」
「問題か…」
ギラは少し考えると思い出したかのように言った。
「最近このクロミナの世界を利用したいじめが多発してる。例えば、痛覚無効を強制的にオフにさせてリンチしたりとかな。」
「ふむ。それはあってはならぬ事態ですね」
「そこでなんだが」
「?」
スーツの男はギラからの突然の声に驚く。
「俺がそのいじめをしている軍団を見つけたらそいつらを無条件BANできるような環境を作ってくれないか?」
「ふむ」
「アイツらをどうにかして根絶しないと事態は収束を見せない。だから頼む」
「わかりました。貴方が指名したプレイヤーを調べ、その事態が発覚したらそのアカウントを対処致しましょう」
「助かる。いつも悪いな」
ギラの声にスーツの男は首を振る。
「いいえ。これも全てこのクロミナの治安のためですから」
するとそのスーツの男はまた残念そうな顔を見せる。
「やっぱり、彼女を核として公式組織を形成させたいものだね…。そうすればより一層治安維持に努められるんですけど…」
「それは最高レベルであるが故か?」
「ええ、それが大きいですね。公式組織形成の
するとギラは嫌なものを見るように顔をしかめる。
「チッ、だからああいうくそみたいな奴がリーダーになるんだよ…」
「しかし…公式組織のリーダーになれば収入も得られるのに…何が嫌なんだろうなぁ」
互いに独り言を言い合う二人。
そしてスーツの男は立ち上がる。
「時間を取らせてしまいましたね。僕はここで失礼致しますよ」
「あぁ。今回も色々助かる」
「いいってことですよ」
そのスーツの男は一つ区切ると
「では、引き続きお願いします。公式組織『黒龍』リーダー」
「フン、誰に言ってやがる」
するとスーツの男はまるでクロミナの世界へ吸収されていくかのように地面の中へと消えていった。
彼が運営の人間であることは、ギラしか知らない。
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