第49話 Dブロック本選⑥ Semi-finals=6
「情報が流されてる?!」
翼が周囲を気にせず大声を出す。
「それって、本当なの?」
リナも疑いの目を向ける。
「た、確かに。少し攻撃が読まれていた気がします…」
ツカサは思い当たる節があるのか、感じたことを口にする。
その声に翼も腕を組みながら言う。
「確かに、俺の攻撃が当たらねぇわけがねぇもんな」
翼は自分の攻撃が当たらなかったことを思い出し、その可能性を肯定した。
「みんな戦い辛いって感じた筈だ。それは相手が俺たちの
戒斗は再び可能性を伝える。
戒斗はずっと考えていた。
紫の魔法の初手岩石攻撃を完膚なきまで破壊された時。
他にも、あたかも自分の魔法がバレているような気さえしてならなかったのだ。
ミズキも思い当たる節があったのか、何度か頷いている。
だが、これはあくまで可能性。
だが、確信に近いことは確かだ。
まぁ、前回の予選の記録映像なんかを見れば研究をできるんだが、それにしては細かい箇所まで知られ過ぎている。
研究熱心と言ってしまえばそれで片付いてしまうのかもしれないが。
すると、戒斗たちの背後から前方に向けて一つの風が吹いた。
それは突風のように背後から少し圧力を感じるほどの強さ。
戒斗は一番先頭にいた。
だから背後から聞こえてくる森のざわめきはわかった。
葉が宙に舞い、木々が少し揺れる。
風か?
そう思い、背後を確認した為、"標準"が少しズレた。
そして僅かにだが。
その風の中心に黒い"影"を見た。
戒斗は声が出なかった。
あまりに早かったからだ。
「なんだ?今の背後を押されたみたいな感触。キメェ」
「?!」
翼の言葉に戒斗は驚く。
「つ、翼。お前、今何かに押されたって言ったか?」
戒斗が聞くとなんと戒斗以外の全員が背後に違和感を感じたという。
戒斗は突風による風圧すら感じなかった。
これは…?
ただの風、それなら話はそこで終わりなのだが。
ここは戦場。
少し強い風すらも緑系統の魔法なのかと疑ってしまう。
しかし、それは当然の心理のようにも思える。
何故ならここは
一瞬の気の緩みが、勝敗を分けるのだ。
「な、なによこれ?!」
リナの声に戒斗は驚く。
リナたちの方を向くと互いに背を見せ合っているメンバーがいた。
その背には、紫の紋章が奇妙な光を帯びて存在していた。
(紫?!)
その紋章は戒斗以外のメンバー全員に刻み込まれていた。
「どういうことだ?」
焦ったような口調で話す戒斗。
戒斗は頭の中で最悪なシナリオを思い描いてしまっていた。
それが本当に実現してしまったらまずいことになる…。
その時、先頭を歩いていた戒斗の前方に一人の冒険者(プレイヤー)が立っていた。
木に寄りかかりながらこちらの様子を伺っているよつだつた。
全身を黒いタイツのような装備で固め、顔もほとんど黒いマスクで覆われている。
全身から溢れ出す奇人変人感。
否めない"犯人"感。
戒斗が話しかけようとした時、その
「お前も"対象"になってたら早く仕事終わったのに…」
「どういうことだ?」
その"対象"とやらになっていない戒斗が聞く。
「俺の魔法は接触した"モノ"を確実に殺す"
その
まるでこの戦法に慣れてしまい、飽きているかのように。
戒斗は怒りよりもこの烙印をどう対処すべきかを考えていた。
だが、またもやその思考は遮断される。
「えーっと、カイト、だっけ?あんたが死んでくれたらこの
なに?!
戒斗は思わず目を見開く。
そして名前を呼ばれたことから可能性は確信へと変わる。
だが、それはもはやどうだっていい。
このままではあいつの一声で戒斗以外のメンバーが全滅だ。
「あれ、知らなかったの…?もう王手なんだよ…。これでね…!」
またもや溜息混じりの声で言ったあと、魔法を唱えようとした。
戒斗は思考よりも先に身体が動いた。
普段なら考えてから身体を動かすタイプなのだが。
今回は動いてくれた。
「させるかぁぁぁぁぁぁ!!」
一気に間合いに入る戒斗。
一瞬で剣を抜き、突き刺す。
だが。
「…
その
何かが空中で動く気配を感じた戒斗は身体が止まった。
そして、背後から聞こえてくる人間が地面に落ちる音で気づいた。
背後にいたメンバーが倒れていることに。
「か、い、と」
呪縛のようなモノに取り憑かれた四人は痙攣しているように地面にひれ伏している。
重力に耐えられなくなり、地面に顔をつけてしまっているようにも見えた。
[ごめん、油断した]
ミズキからのメッセージ。
嘘だろ?
「か、カイトは早く逃げろ!!」
翼の弱々しい声が響く。
「早く行って!お願い!」
リナの声も響く。
戒斗は明らかな違和感に気付いた。
「あ、気づいた…?でも遅いよ…。僕の呪殺魔法は同時に対象者に‘‘
ハッタリかもしれない。
だが、明らかに違う。
何故なら、四人の体に触れることができなくなっていた。
体の周りに障壁が展開され、その障壁に触れると時空が歪んでいるように手が動かない。
「………」
戒斗の身体が震えていた。
俺に何かできただろうか。
あの時俺がいち早く敵に気づき、倒していたら。
助けられていたかもしれない。
音声すら遮断された障壁の中でゆっくり死を待つ存在となったリナは‘‘行って‘‘と叫んだ。
ギリッと戒斗は奥歯を噛んだ。
そして感情的になりそうな自分を抑え、しっかりと敵を見る。
みんなの笑顔が目に浮かぶ。
そういえば、この大会の後にみんなで家を買うって言ってたな…。
だったら俺は、そのためにも精一杯のことをするだけだ。
戒斗は一人になった今、心に決めた。
みんながいない戦いなんてどうだっていい。
ここからは"手加減"は無しだ。
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