第46話 Dブロック本選③ Semi-finals=3
一つの大きな風が吹き、木々がざわめく。
剣と剣がぶつかり合う音は一度途切れた。
戒斗たちはかなりのダメージを負っているのに対し、相手はほぼノーダメージ。
ガンマには身体に触れることもできない。
この状況を打破する為に、戒斗は考えた。
だが、言動や行動からして何故か焦っているように感じ取れるガンマたち『屍の会合』。
そして時折経過時間を確認しては面倒くさそうに舌打ちをする。
「なぁ。そろそろ終わりにするぞ。俺らも暇じゃねぇんだわ」
ガンマが言うと、両隣にいたライムとデルタも剣を構える。
だが。
「あぁ、いい。お前らはまだ手を出すな」
「なんで?全員でやっちまおうぜ?」
「効率、重視だ」
ライムとデルタが疑問に思う。
するとガンマが
「まずは真ん中のリーダーを潰す。そのあとにお前らが左右を破れ。リーダーが潰れれば自然と崩壊するだろ」
両隣の2人は納得したのか、剣を降ろす。
そしてそれを聞いた戒斗は剣を構える。
[カイト、変わる]
ミズキからのメッセージ。
だが、どちらにしろ狙われるのは戒斗だろう。
戒斗はミズキの方を見て
「みんなは下がっていてくれ」
指示を出した。
「ふっ、いいねぇ。それこそ男ってやつだな。あー、カッコいいぜ。んじゃ。いくぞ」
ガンマが剣を構える。
空に向かって剣を上げ、まっすぐに戒斗の方向へ向かってきた。
それも徐々にスピードが増して行く。
【
一瞬ガンマは消えた。
いや、正確には消えたように見えた。
それくらい元いた場所から一瞬で戒斗の方へと進んだのだ。
そして1秒も経っていない。
音が一瞬消えたと思った次の瞬間にガギンッ!という剣と剣がぶつかる音が響いた。
「ぐ……!!」
戒斗はなんとかその剣を捕らえた。
来る方向と剣の向きは分かっていたのであとはタイミングだった。
上からの斬撃なので、横に剣を構えて対応した。
「へぇ。これを止めるんだ。やっぱめんどくせぇな。お前」
(一撃が重い!)
押される戒斗は全身の力を込めて踏ん張る。
思いっきり奥へ押し込もうとしても力の差で負けてしまう。
戒斗はこのままでは押し潰される、と思い、止むを得ず後ろに下がる。
だが。
「それを待ってたぜ!!」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべると距離を取る為後ろにジャンプで下がった戒斗の身体目掛けて一直線に突き攻撃を繰り出した。
戒斗は咄嗟の判断で魔法を使い、木を自身の前に出現させる。
その前方に自身の盾となるように置いた木をまた蹴ることでさらに後ろに飛ぶ。
ザンッ!
木の盾は呆気なく斬られてしまう。
だが、それは戒斗も想定内。
先程の岩石を軽々と斬ったということは今回の木も楽々斬られることは分かっていた。
だからその次の攻撃の準備をしていた。
ガンマが木の幹を斬った後にできた態勢の乱れと次攻撃までの準備時間。
それを踏まえて戒斗は剣技を放つ。
【
不意を突かれたような表情を見せるガンマ。
木の幹が地面に倒れるとともに砂埃が舞った。
戒斗の攻撃は決まった。
確実に相手の不意を突くことができた。
だが、手応えがない。
硬い岩に剣を打ち付けているような感覚。
戒斗は気づいていた。
「んんー、残念。今のは結構良い攻撃だったなぁ。だが。俺にはこの盾があることを忘れたのか?」
戒斗の剣技は全てガンマの持つ盾によって無効化された。
剣を盾に突き刺したまま静止する戒斗。
そのままガンマは話す。
「もういいだろ?お前は限界だ。いくらその魔法を使っても直接俺に大打撃を与えることはできないんだ。そういう魔法なんだよ。紫ってのはな」
ニヤリと笑うガンマ。
戒斗も分かっていた。
このままでは何も進まないことは。
少しは相手の戦力を削れると思ったが、経験値が少なかったのか、相手の経験値が多かったのか。
自分が思った以上なことはできなかった。
それに相手はまだ魔法を使っていない。
最後まで手の内を隠すつもりなのか。
隠したまま戒斗たちに勝つつもりなのか。
わからないが、戒斗の方針は決まった。
「じゃ、終わらせるぞ」
ガンマが自身満々に言う。
戒斗は一度後ろに下がると剣を構えた。
その構えを見てガンマは溜息を付いた。
「だからさぁ。その剣技やってどうすんだって言ってんだよ。何にも起こらねぇだろ?」
しかし、構わず走り出す戒斗。
そしてまた面倒臭そうに盾を構えるガンマ。
また同じか、そう誰もが思った。
だが。
【紫:浮遊魔法=
片手を前に出し、指示を出す。
その対象は"盾"だ。
ゴウン…と盾の所有権を完全に奪われるガンマ。
「は?い、いや、なんでだよ?!」
焦るガンマ。
その盾は自身の身体の正面ではなく、全く関係のない方向の上へと持っていかれた。
戒斗が放った剣は全て盾に直撃した。
盾自体を攻撃してもダメージは入らない。
戒斗はずっと意味もなく盾に攻撃していた訳ではない。
剣と盾の接触部分に【紫:標準操作魔法=
そして結果、180レベルまで下がったその盾は主導権が完全に戒斗の物になった、ということである。
ガンマはなんとか盾を離すことで目前まで迫る戒斗に対応しようとした。
だが、それは遅すぎた。
右手に持っていた剣すらも反応が遅れた。
そのまま戒斗の剣はガンマの身体を貫いた。
【
ドドドドッ!!
ガンマの身体に剣が何発も通る。
「こ…んの…てんめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
ガンマは絶叫する。
それとともにガンマの身体に紅の炎が現れる。
それを察知した戒斗は後ろに下がる。
「く、くははは。やっぱりてめぇはめんどくせぇなぁ!!弱者は弱者なりに弱点抱えて死んでろよカスがぁ!!」
意識が朦朧としているようにフラフラとした足取りになっている。
戒斗が攻撃した箇所が炎で燃えている。
きっとあれは傷口を塞いでいるのだろう。
今にも襲いかかってきそうな雰囲気だが、ガンマは意外にもすぐに落ち着きを取り戻した。
「ふ、いいだろう。お前らは今は逃してやる。言ったが、俺らも暇じゃねぇんだ。だから、また後で潰してやる」
翼が何かを言おうとしたが、それをミズキが止める。
この状況では勝ち目がないことは明白だと分かっているのであろう。
それを見たガンマはニヤリと笑うと
「いい判断だ。おい。てめぇら。いくぞ」
仲間全員に指示を出し、ものすごい速さで消えていった。
戒斗たちにこの戦いの厳しさを伝えて。
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