第45話 Dブロック本選② Semi-finals=2
戒斗たちが降り立った場所は森林地帯の少し開けた空間。
降り立ったその場所だけ木々が生い茂っておらず、空き地の様だった。
舗装された道のようなものはなく、ただ単に人が1人通るくらいの小道があるくらいだった。
始まりまでを知らせるタイマーが30秒を切った。
戒斗は思った。
(視界が悪い……!)
そのため、ほぼ全てのプレイヤーも視界の悪さを苦しく思っているだろう。
この状況下で何より大切なのは、敵をいち早く見つける能力だ。
敵を見つけられなければ何も始まらない。
かと言って何も対策無しに待っているだけではいつしか敵プレイヤーに見つかり、攻撃対象とされる危険性もある。
しかもそれは相手に先制という大きなハンデを与えることにもなる。
その事をメンバーに伝えているとタイマーが0を指し、静かに戦いが始まった。
とりあえず戒斗がすることは早期の敵の発見だ。
そのためにも戒斗は
【紫:視覚補強魔法=
を常に発動させる。
半径7キロ圏内だが、何もしないよりは断然良いだろう。
その時、戒斗の千里眼センサーが光った。
「みんな!あっちの方向から敵が近づいてきてる!」
戒斗は指を刺しながら全員に伝える。
「数は1.2.3...6人だ!1人を先頭に6人接近してる!全員戦闘態勢に入れ!」
戒斗が叫ぶと4人は各々の武器を構える。
戒斗も【紫:標準操作魔法=
それからすぐ。
戒斗が指差した方向からガサガサと草木を掻き分けるような音が複数響いた。
(7キロからここまで数秒か……)
戒斗はそのスピードに驚いていた。
そして先頭の1人が出てくる。
すると、ようやく戒斗たちに気づいたのかそのスピードを地面を使って殺すと、一つ舌打ちをした。
後方からも複数のプレイヤーが到着し、同じように止まる。
先頭のプレイヤーはリーダーだろうか、まるで指示をしたかのように正確な陣形を保っている。
一番先頭に1人、その後ろに2人、一番後ろに3人という陣形だ。
リーダー格のプレイヤーは赤黒いまるで血のような色の鎧で全身を覆い、顔はマスクをしていてよくわからなかった。
腰には剣が装備されていた。
マスクをよく見るとガスマスクのようで、そのリーダー格のプレイヤーは口を覆うだけなのに対し、他のプレイヤーはフルフェイスだった。
奇妙なプレイヤーたち。
何か、底知れぬ恐怖心があった。
するとリーダー格のプレイヤーが話し始めた。
「お前らには用事はねぇ。さっさと消えるか俺らに倒されるか。どっちがいい??」
煽るように首を左右に傾けるプレイヤー。
声からして男のようだった。
「どっちもお断りだ!!」
余程イラついたのか、珍しく翼が吠える。
そのリーダー格のプレイヤーは一つ溜息をつくとあたかも面倒臭そうに頭を掻き、
「じゃあ消してやるよ!おい、ライム。デルタ」
男に呼ばれ、2人のプレイヤーが前に出てきた。
「何何?やっていいの?」
「暴れ、ていいのか?」
リーダー格のプレイヤーの左右に立つように並ぶと武器を構えた。
どちらがライムでどちらがデルタかは戒斗たちにはわからなかったが、片方が両手剣、片方が双剣だった。
「あぁ。許可する。ただ。お前らは手を出すな」
リーダー格のプレイヤーは後ろで待機していた3人のプレイヤーに指示を出す。
その後方のプレイヤーたちは何も言葉を発する事なく静かに従う姿勢を見せた。
「んじゃ。まずは礼儀ってやつだ。倒す相手に敬意を払って」
ニヤニヤとするリーダー格のプレイヤー。
「俺の名前はガンマ。
すると続いて双剣使いが言う。
「俺はライムだよ」
両手剣使いも続く。
「俺、はデルタ」
リーダー格のプレイヤー、ガンマが盾を装備した。
そして剣を抜き、構えた。
「じゃ、いくぞ」
冷たく、消えかけた声。
その瞬間に3人は戒斗たち向けて走りだした。
しかし、戒斗はその動きをしっかり見ていた。
【紫:浮遊魔法=
戒斗が魔法を放つと岩石の塊が地面から生えるように出現し、3人に直撃した。
そして3人はその岩石の塊とともに空中へと飛び上がった。
【紫:標準操作魔法=
「よし!流石カイト!」
翼が叫ぶ。
撃破まではいかなくとも、大ダメージを与える事ができたと思ったのだろう。
それは戒斗も思っていた。
だが。
その岩石の塊はバラバラに砕けた。
(な、に?)
確かに攻撃を喰らった後に武器で攻撃すれば破壊はできる。
だが、それにしては反応が早すぎる。
ドンッ!
空中から3人のプレイヤーが降りてきた。
パラパラと砂埃が舞い落ちる。
どうやら無傷のようだ。
まるでその攻撃が来ることを知っていたかのような反応の速さ。
「脆い脆い。岩石が脆いなぁ。もっとレベルの高い岩石だったらそのまま押し倒されてたかもしれんなぁ」
ガンマは持っている盾の底で一度地面を叩いた。
「さ、ライム、デルタ。行け」
ガンマの指示で左右にいたプレイヤーは走りだす。
ガンマは1人で歩いて近づいてくる。
戒斗も指示を出す。
「ミズキは両手剣使いを!翼はツカサと一緒に双剣使いを!リナは後方の3人の監視を頼む!」
「「「[了解!]」」」
戒斗の左右から2人が抜けて行く。
左側からはミズキが突撃、そのまま両手剣使いのデルタと衝突した。
右側からは翼が走り抜け、そのまま双剣使いのライムとぶつかり、ツカサも後ろで弓を構えた。
真ん中を歩いていた戒斗とガンマの距離はまだ遠い。
2人のちょうど真ん中で左右に分かれた部隊はぶつかった。
デルタが両手剣を斜め上から下へ振り降ろす。
その剣をミズキは自身の剣で流した。
キキキキ…という音と火花を散らしながら流すと一気に後ろに足を引き、腕を曲げ、思いっきり突き刺した。
狙いは顔と首のあたり。
だが、デルタは大柄な身体からは想像できないほど俊敏な動きを見せ、下にしゃがみ込み、ミズキの突きを回避した。
(あの速さの突きを回避できるのか?)
ミズキの突きはものすごい速さだ。
それに反応できるとは、相当な実力者なのか。
戒斗は考えた。
ガンマはニヤリとデルタの方を見て笑った。
ライムは体を回転させながら双剣を振り回し、翼に襲いかかった。
金属がぶつかり合う音が響く。
それは何度も響き、翼が押されているように感じた。
翼が持つ剣がその回転によって弾かれ、その身体能力の高さから繰り出される上から下へ落とされる剣。
翼の脳天直撃だった。
しかし、それを。
【緑:弾速強化魔法=
その剣に当てたツカサの矢。
バチンッ!と剣が弾かれ、ライムも後ろに下がった。
「へー、今の当ててくるんだ。
再び翼とライムがぶつかる。
ツカサも矢を引くが、気がかりに思っていたことがあった。
(やっぱりってなんだ?僕たち初めて戦ったよね?)
その疑問は戒斗も抱いていた。
(さっきの反応といい、どうなってるんだ?)
謎は深まるだけ。
縮まるガンマとの距離。
そしてガンマが剣を振ってきた。
「おらぁ!!」
ドッ!
戒斗の足元に刃が落ちる。
咄嗟に戒斗は後ろに避けたのだ。
「へー。能力だけじゃなくて動体視力も高いんだ」
またニヤリと笑うガンマ。
何か見透かされているような気がして気持ちが揺さぶられていた。
今度は戒斗が攻撃する。
戒斗の剣はガンマの盾にぶつかる。
そしてそのまま力勝負に出た。
力比べをするように押し合う両者。
だが、やはり盾は強かった。
戒斗は後ろに飛ばされた。
ズザザザ…と足を踏ん張り、なんとか留まる戒斗。
なんの迷いもなく魔法を使う。
【紫:浮遊魔法=
地面からガンマを捕らえるようにガンマの周りの4方向から針のような岩石の塊が出現する。
それもガンマは5メートルほど飛び上がることで対応した。
しかし、その間に間合いに入っていた戒斗は剣を再び振る。
しかし、またそれも盾に捕らえられてしまう。
「無駄だよ。お前は俺に攻撃を与えられない。」
全てはこの盾だ。
この盾があるから敵の剣との接触すらもできない。
再び盾と剣で押し合う戒斗。
しかし、ガンマの右手は動かせる。
長剣を戒斗の身体目掛けて突いてくる。
そのため戒斗は一度後ろに下がった。
盾との押し合いを中断して。
だが、また戒斗は動き出す。
今度は剣技の構えで。
【剣技(ソードスキル)=
ドドドドッ!と連続して放たれる剣はガンマ目掛けて一直線に通った。
だが。
またもや当たるのは盾のみ。
盾に何度も接触した後、最後のフィニッシュも弾かれた。
そしてまた押し合いが始まる。
「お前さぁ……。何がしたいわけ?言ってるだろ?俺には攻撃できないって」
戒斗は悔しそうに奥歯を噛む。
その時ツカサのの声が響く。
「翼くん!」
バッ!と翼の方を見る戒斗。
そこには押されている何度かダメージを喰らった翼の姿が。
「つば……!!」
叫ぼうとしたが、
「どこ見てんだ?」
ガンマの声に我に返った戒斗だが、反応が遅れてしまった。
ドッ!
突き出した長剣に捕まり、遠くに飛ばされた。
「カイト!」
リナが心配そうに戒斗に呼びかける。
戒斗は起き上がるとミズキの方を見た。
どうやらダメージはかすった程度にしか入っていないようだ。
リナとツカサはノーダメージだったが、翼の体力は半分以上削られていた。
そして戒斗もガンマに攻撃ができない。
その上体力も4分の1ほど削られた。
「ここで終わりだ。無記名
またガンマがニヤリと笑う。
それに同調するようにライムとデルタも笑う。
その発言で戒斗はある可能性に気づいた。
そして戒斗が考えたその可能性は何故か戒斗たちの攻撃が効く前に反応され対応されてしまった事実にも筋が通った。
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