第44話 Dブロック本選① Semi-finals=1

 4月10日、Dブロック本選当日。


 この日はDブロックだけでなく、他のブロックでも当然予選を勝ち抜いたプレイヤーが本選に出場する。


 そのため、決勝へ進出するプレイヤーを一目見るために集まった予選敗退プレイヤーや、単純にお応援をするプレイヤーなど数多くのプレイヤーがこの中心都市に集まるのは必然と言えるだろう。


 特にこの中心都市の第8を中心とした区画には大勢のプレイヤーが集まった。


 そんな中、第5区画の闘技場に姿を現した戒斗たちは第5区画闘技場に着いた途端から周りの歓声が聞こえた。


 以前にも述べたが、このDブロックはエントリープレイヤー数が一番多いブロックである。


 そのため例え予選敗退プレイヤーが他のブロックの応援へ行ったとしても多数のプレイヤーがこのDブロックの本選会場に行くため、数が多くなるのは当然のことだと言える。


 数多のプレイヤーの頂点に立った計9の組織ギルドには注目が集まるだろう。

 それに自分が敗退したブロックの予選通過者を応援する流れもできてきた。


 戒斗たちはそのプレイヤーたちの波を押し除け、予選通過プレイヤーだけが入ることができる、あの石碑のあるエントリー会場へと向かった。


 そこは広い空間。


 前回同様円形の部屋だった。


 中央には石碑のような物体が設置されていた。


 既に多数のプレイヤーが立ったり座ったりして開始の合図を待っていた。


 戒斗はエントリーを終わらせると、緊張で固まっているメンバーに話しかけた。


「確かに、たくさんの人に見られる状況だ。緊張するのは当然だ。だが。俺らはいつも通りやるだけだ」


 戒斗の声に4人は頷く。


 オロオロとしていたツカサが、口を開く。


「あの、カイトさん。作戦とかって決めないんですか?」


 余程心配なのだろう。


 だが、それはメンバー全員がそうだった。


「そ、そうだな。まず、始まったらいち早く他プレイヤーを倒しに行く」


 その言葉に4人は目を見開く。


「わかっているとは思うが、10分経ったらあの魔法が飛んでくる可能性も否定できない。だからなるべくプレイヤー人数を減らしておくんだ」


 最低リナの防御魔法がある。


 戒斗が狙っているのはそれを知らない他プレイヤーが一度の玲の魔法で倒れ、全滅することだ。


 玲の魔法は知らなければ対処できない。


 だが、逆に言えば知っていればいくらでも対処できる。


 これは大きなアドバンテージだった。


 だが、それは他のプレイヤーも同じ。


 他のブロックで秀でた成績を収めたプレイヤーを戒斗たちも知らないのだ。


 だからアドバンテージと呼べるのか、わからないが、そこに掛ける事自体は悪くはない。


 そう、戒斗は思った。


 すると、石碑の上にNPCが現れた。


 あれは説明用NPCAIの、マナだ。


「やっほー!みんな元気?」


 張り詰めた空気に流れ込む場違いなテンション。


 場を和ますためなのかもしれないが、一同シーンとしていた。


「なんだよ、みんな。つれないなー!ま、余談はこのくらいにしてー。みんなには話しておかないといけない事があります!」


 マナがはっきりとした声で呼びかける。


 その声に応じるようにプレイヤーは顔を上げる。


「この本選からは気絶したプレイヤーは決勝へは進めないことになってるの。つまり、1人が生き残ったら他のプレイヤーも全員決勝進出!っていうのは無理ってことね」


 周囲がざわつき始める。


「それは、結構多かった、1人のプレイヤーを残して自爆する"自爆戦法"を封じる為なんだよ?了承してねー」


 運営も色々と手を回しているのだろう。


 確かにそれは良い封じ方だ。


「そして、これが予選通過組織だよ!覚えておいた方がいいかもねー?」


 マナが言うとモニターのような場所に組織一覧が表示される。


 9つの組織が縦に並べられていた。




『Dブロック本選出場組織一覧』

【D-1】

 組織名:DARKside(6人)

 組織名:鳥好き集まれ(6人)

 組織名:玉砕(5人)

【D-2】

 組織名:暇人の集い(6人)

 組織名:無記名(5人)

 組織名:無記名(2人)

【D-3】

 組織名:屍の会合(6人)

 組織名:Dandelion(6人)

 組織名:青の弾丸(4人)




 戒斗たちは顔を見合わせた。


(そういえば、俺たち組織ギルドの名前無いわ)


 モニターに無記名と表示されていた。


 きっと、いや、あの5人の表示のやつが俺らだろう。


 逆に目立っていた。


 だが、まぁ2人組(ミズナとネム)も無記名だったらしく、遠くの方で呻き声を上げているのを聞いた。


 同じ境遇の人がいて少しほっとした。


 まぁ、そんな事はあまり気にしない。


「さ、これで私からのお話は終わり!あとは頂点目指して頑張って!」


 戒斗はマナの言葉を聞き、バトルフィールドへと転装された。


 闘技場内は歓声に包まれていた。

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