第36話 Dブロック予選④ Pre:Contest=4
術者がいると思われる山の頂へ行くために戒斗たちはひとまず下へ降りることにした。
滑り台のような傾斜の坂をゆっくり降りて行く。
そこからはただの凹凸のある地面を歩いていくだけ。
途中からは全員走り出した。
「残った人たちはどうやって魔法を避けたんでしょうか…?」
残り人数を確認し、疑問を抱いたツカサが全員に問いかける。
それにはネムが答えた。
「地下深くに潜伏していた場合と山に登っていた場合はほぼ無傷でしょう。最上位魔法の範囲は地上だけだったみたいですし」
何も形状が変化していない山々を見てネムが言う。
確かに、山に居た場合は魔法は食らわなかったのか。
その術者たちの目的が最上位魔法での他
前方を走っていたミズキとミズナの足が止まる。
クレーターのような穴の中から3人の
その
「お、お前らがこの攻撃をしたのか?」
「いや。聞くまでもねぇだろ。こいつらに違いない。あんな魔法食らって無傷でいられる訳がねぇ」
「2人とも、やっちまうぞ!」
誤解をしているようだが、3人の男達が突撃してきた。
前方の2人は同時に剣を抜くと、
【青:剣技強化魔法=水
【黄:補強魔法=
同時に水と雷が2人の身体に付与された。
そしてミズキが脚を曲げ、腰を落とす構えをすると一瞬で3人の男達の間合いに飛び、一筋の雷のような光が3人の男達の身体を貫いた。
その攻撃によって一瞬怯んだ瞬間を見逃さなかった。
ミズナは軽い身体を利用し、一瞬で間合いに入ると
【
キーンという音が響くと3人の男達は一瞬静止した。
そして次の瞬間一瞬にして10メートルほど前方へ飛んで行った。
一回遠くの方で身体をバウンドさせると、そのまま消滅した。
「3人同時かよ……」
戒斗は思わず声を出す。
「時間がないんで」
ミズナが吐き捨てるように言った。
再び走り出した戒斗グループとミズナグループは山の麓まで来た。
麓、といっても大きな岩が砕け、大小さまざまな大きさの石が落ちているただの斜面なのだが。
少しキツイ傾斜だが、物理的に登るのが不可能な傾斜ではなかった。
なんとか難所を抜け、緩やかな傾斜の登山道が見えてきた。
稲妻のようにくねくねに曲がった道。
それによって道が緩やかではあるのだが、距離が長くなる。
それに加え時間もかかってしまう。
戒斗は山の頂にいる術者たちは奇跡的に山の頂に転送されたと考えた方が良さそうだと考えた。
10分で魔法が放たれるとすれば転送と同時に魔法を展開したのは明らかであるから。
頂上に辿り着いた。
風が吹き荒れ、少々肌寒かった。
その山の頂には更に上に登る階段があり、その場所は神社のような作りになっていた。
左右には狛犬が設置され、石で作られた灯籠のような物もあった。
そしてなにやらその上からは光が漏れていた。
「みんな!上だ!」
キョロキョロと頂上の周りを探索していた6人に戒斗が言う。
経過時間18:38
発動まであと2分も無い。
戒斗に続いてミズキ、ミズナ、翼、ツカサ、リナ、ネムの順で階段を登った。
光が増している。
陣形がバラバラである為、山が攻撃対象範囲となった場合魔法攻撃を防ぐことはできない。
あと1分。
戒斗とミズキはほぼ同時に山の頂にある神社にたどり着いた。
その神社は半壊していた。
攻撃を受けたのか、それとももともとこの様な建物なのか。
その神社の前の開けた空間に1人の
「よし!あの人を攻撃すれば!」
ミズキと戒斗が戦闘態勢に入る。
後ろからミズナもやって来た。
3人の同時突撃。
しかし、その術者はなにも表情を変えない。
依然として魔法を展開し続けている。
ミズキが一瞬で間合いに入ろうとしたその時。
≪キィン…!≫
すかさずカバーに入った1人の男剣士。
長い日本刀のような形をした剣だ。
そのままミズキの剣を強引に押し込み、態勢を崩させ、ミズキの頭狙って横に大きく振った。
ミズキは首を後ろに曲げることでなんとか避けたが、それでもかすったのか、右の頬が切れた。
攻撃を止めることのない男剣士は左右に斬り払い、ミズキを揺さぶる。
ミズキは頬を切られたことに動揺しているのか、先程よりもキレが無くなっているように感じた。
「ミズキさん!」
ミズナが声を上げる。
なんと奥の方から3人の男が出てきたのである。
その男達は術者を守るように各々武器を構えた。
「おらぁ!」
ミズキを押しつぶす勢いで剣を下に叩きつける男剣士。
だが、何かに気付いたのか、その手を止めた。
そして密かに笑い始めた。
「残念だったな。ここまでだ。あと20秒もすればこの山は吹き飛ぶ。助かるのは、俺たちだけだ!」
(20秒?)
後ろから来ていたメンバーが合流した。
「やはり攻撃範囲は山全体でしたか」
ネムが戒斗の隣に来て言う。
「カイト!ど、どうするの?!」
リナからの質問。
戸惑いを多く含んだ質問。
「悪あがきかもしれないが。やってみるか」
戒斗は手を広げ、前に突き出すと魔法を使用した。
【紫:浮遊魔法=
突如半壊の神社が呻き声を上げながら握り潰されていき、術者の頭上に大量の石や岩となって降りかかった。
「む、紫の魔法か!」
「ま、守れ!」
だが、遅い。
一つか二つは防げたかもしれないが、それ以外はしっかりと術者に当たった。
ドォン…。
降り注いだ石、岩が石の山のように術者に覆いかぶさった。
「し、しまった!」
男達が頭を抱えて嘆く。
「すごい!カイトさん!」
頂上に来た瞬間から魔法を展開していた。
【紫:標準操作魔法=
接触場所は足だ。
足がその土地に触れている以上、魔法は扱える。
時間は20分を過ぎていた。
魔法を封じ込めることに成功した。
と、思っていたのだが。
≪キィン――――――!!!!≫
空に打ち上がる神々しいまでの光。
「おいおい、まじかよ」
戒斗が声を上げる。
あの状況下でも魔法を唱え続けていたのだ。
[カイト]
ミズキからのチャット。
[私はあの魔法を避けながら敵を倒す]
光は空に上がっている。
「無理だ!そんなことできるわけ……」
空で空中分解した。
しかし、ミズキは決心したような顔をした。
なら止めることもない。
「わかった。ミズキを信じる」
戒斗たちの上に降ってきたその時。
ネムの"
その瞬間にその光魔法は術者の方に跳ね返った。
「きゃ」
≪ズドォンッ!≫
術者は間一髪で避けたが、石の山が砕けた。
すると1人の男が声を上げた。
「お、お前だったのか!おかしいと思ったんだよ!打った魔法攻撃が返ってくるんだからよ!」
(なるほど、だから神社も半壊してたのか)
しかし、そうこうしている間にも光魔法攻撃は降ってくる。
「ミズキ!上!」
遠くから見ていたリナが大声を上げる。
(間に合わ……)
ミズキは魔法を使用した。
【黄:補強魔法=
ミズキの体に電気が走る。
ミズキが構える剣には雷が纏い、ミズキの周囲には黒い砂と共に電流が回転を始めた。
ミズキは頭上に降ってきた光魔法攻撃を難なく避ける。
(避けることができるのか?あの速さの魔法攻撃を)
リナと翼とツカサとミズナはリナの防御魔法によって守られていた。
「おらぁ!」
男剣士がミズキに突撃する。
(そうか!味方の攻撃は当たらないんだ!)
これがPvPで最も重要な点である。
故に頭上から降ってくる光魔法攻撃には気にせずに剣を振るうことができる。
ミズキは剣を一回交じらせると、一歩下がった。
先程までいた場所には光魔法攻撃が降ってきた。
全て避けている。
まるで稲妻のように。
光魔法攻撃が落ちない場所に移動するのだ。
時には身体を捻らせ、時にはスライディングをすることで対応。
「な、なんだこの人はぁ!み、見えねぇぞ!」
男剣士が大声を出しながら剣を強引に振り回す。
後ろに回られていることにも気づかずに。
【
≪バチッ!!!!≫
男剣士の体を横一文字の雷が走る。
その男剣士はそのまま動かなくなった。
ミズキはそれで止まったりせずに、再び避け始める。
しかし。
「カイトー!もう、無理!」
「リナ!」
リナの魔力に限界が来たようだ。
戒斗は何故か自分の周りに光攻撃が来ない事を解明することができないまま安易に移動することもできない為、動くことができなかった。
そして。
≪バリィン!!!≫
防御魔法は破れ、4人の瀕死体が転がった。
「くっそ!」
「ミズナ!」
戒斗の隣にいたネムが声を上げる。
彼女なら瀕死の彼女を助けることができるだろう。
だが。
「助けに行かないのか?」
動かないネムに戒斗は聞く。
「はい。動くと、戒斗さんも瀕死状態になってしまうので」
「え?」
「話はあとです。取り敢えず今はミズキさんの援護を」
「わ、わかった」
もう少しで10秒。
ミズキが光魔法攻撃の雨に襲われながらも、その術者の前に一瞬で近づく。
「ミズキー!行けー!」
そして首を斬ろうとしたその時。
魔法攻撃は止まり、それどころか経過時間も止まったのであった。
一瞬身体が動かなくなった。
それはここにいる
その呪縛のようなものはすぐに解けた。
その瞬間に上空に説明用NPCAIのマナが現れた。
「みんな!お疲れ様!よく頑張ったね!ここにいる3組が本選出場!おめでとー!パチパチパチパチー!」
戒斗はステータスを開く。
するとそこには残り人数15人の表示が。
ここに来てようやく隠れていた
なんとかメンバーが敗退して退場することは無かったようだ。
みんなほとんど瀕死の状態だが。
すると全員の身体が光り始め、足元に転送魔法が作られた。
そのまま15人の
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