第34話 Dブロック予選② Pre:Contest=2

 亜空間アナザーフィールド=草原

  経過時間 5:32

  残り人数 1664/1480

  現在地 森林地帯



  「ツカサ!左だ!」


  「わかりました!」


  ツカサが弓を引く。

 


  【緑:弾速強化魔法=突撃弓矢ブレイクアロー



  放たれた弓は対象に吸い込まれるように移動した。


  当たった瞬間対象の敵冒険者プレイヤーは後ろに飛ばされて行った。


  森林地帯。


  木々が生茂る中、その木と木の間を移動する対象に向けて放つ矢。


  大分高難易度の技だが、なんなくやり遂げた。


  「よくやったぞ!ツカサ!」


  「ナイスショット!」


  戒斗とリナから褒められ、ツカサは頬を赤くする。


  今倒した敵でその組織を壊滅させることができた。


  少し木が無く、太陽光がよく当たる開けた場所に集まった5人。


  5人が顔を合わせたその時。


  「伏せてください!」


  ツカサが声を上げた。


  その瞬間どこからか5本の矢が飛んできた。


  それもちょうど全員が立っていた位置に。


  なんとかツカサの声に即座に反応し、伏せることで避けることができた。


  「何?私たち、狙われてる?」


  何故ツカサが矢に反応できたのかは一先ずは置いておいて、一同はどこから来たか判らない攻撃を警戒し、辺りを見渡した。


  戒斗は魔法を展開した。

 


  【紫:標準操作魔法=接触低下タッチダウン



  戒斗がしゃがみ込みながら手で触れた地面には紫の波紋ようなものが広がり、周りの木々まで覆い被さった。


  そして戒斗の目の前にはその土地のレベルが表示され、そのレベルが1秒ごとに減少していく。


  操作可能レベルに達した。


  そして、ほぼ地面と並行して放たれた矢が来た方向に向かって魔法を放つ。



  【紫:浮遊魔法=意思移動テレキネシス



  対象を木全てに設定し、土地を開拓する。


  メキメキという音を立てながら木々が道を作るように左右へと避ける。


  その時戒斗は横に逃げる影を2つ見た。


  すかさず戒斗は魔法を唱える。



  【紫:視覚補強魔法=千里眼セカンド サイト



  半径7キロ圏内のものを上空から見ることができる。


  それは縮小拡大自由自在である。


  そして木の影に密かにこちらに向かって矢を向けている冒険者プレイヤーを見た。


  その冒険者プレイヤーの前に無数の矢が出現していた。


  あの魔法はどこかで見たことが……。


  戒斗は一瞬引っかかった程度だったが、すぐに思い出した。


  (あれは…自動標準弓矢オートアローだ!)


  「リナ!防御を頼む!」


  「え?ど、どこに?」


  「こっちに向かって!早く!」


  「わかった!」


  戒斗が指差す方向に立ち、魔法を展開するリナ。



  【金:防御魔法=金色障壁ゴールドバリア



  金色の障壁バリアが展開された瞬間に矢がその盾に直撃する。


  その数と正確さでツカサも気がついた。


  「こ、これは自動標準弓矢オートアロー?!」


  「そうだ。この方向のほぼ直線上で打ってきてる」


  「さすがカイトね。よくわかってる」


  「これは助かったぞ」


  矢が止まる。


  それと同時に障壁バリアも解かれる。


  戒斗はもう一度【千里眼セカンドサイト】を使用した。


  するとさっきまでいた場所に2つの人影は無かった。


  ということは。


  「みんな!対象がこちらに向かって来ている。人数は2人だ!」


  「了解!」


  翼が声を上げる。


  ミズキも剣を構える。


  それから5秒も経っていない。


  ガサガサという木々の中を走る音が近づいて来たと思った瞬間。


  上に飛び上がった1つの人影。


  戒斗たちは一歩下がった。


  その冒険者プレイヤーは鎧など重い装備はしておらず、とても軽い装備で俊敏性に長けている様子だった。


  背丈は小さく、少年少女な感じがした。


  上は黒のTシャツにパーカーでフードによって顔を隠し、下はホットパンツに黒のタイツという女性っぽい服装。


  両腰には短剣。


  ということは双剣使いか。


  その冒険者プレイヤーの周りには何やら霧のようなものが発生していた。


  その霧はまるでその冒険者プレイヤーから発せられる覇気のような演出していた。


  そのまま無言で走り出した。


  ツカサに向かって。


  「ツカサ!」


  リナが反応したが、一番早く反応したのはミズキだった。


  ガギンッ!


  二本の短剣と一本の長剣が衝突する。


  そして連撃を繰り出す。


  ミズキは後ろに下がりながらも全ての攻撃に対応していた。


  (少し押されてる?……いや、違う)


  あれは相手の様子を見ているのか。


  速すぎて何が起こっているのかわからない。


  (連撃を繰り出す敵冒険者プレイヤーもすごいと思うが、それを全て見切って対応してしまうミズキもすごいな)


  ミズキは短剣の攻撃を受け流すと、突きによって敵 冒険者プレイヤーの顔を狙った。


  だが、それは避けられてしまうが、フードが斬れた。


  中からは水色の髪をした大きい水色の目の女性の顔が現れた。


  「お姉さん、強いね。まだ本気も出してないみたいだし」


  その敵冒険者プレイヤーは斬られた頬から流れる血を触り、口まで運び、ぺろりと舐めた。


  「こっちも本気で行くよ」


  双剣を構え、ミズキに向かう。


  再び斬り合いが始まろうとしたその時。


  「ミズナ〜?どこ〜?わ、私を1人にしないで〜!」


  双剣使いの冒険者プレイヤーが現れた方向から1人の少女が現れる。


  銀髪で泣きながら現れたその少女は周りをキョロキョロと見渡していた。


  双剣使いはずるりと滑った。


  そして声を高々と上げた。


  「私はこっちだよ!いまいいところなんだから話しかけないで!」


  ミズナと呼ばれる双剣使いは怒り口調だったが、本心は呆れている様子だった。


  「そんなぁ〜。私はどうすればいいの?」


  「そちらのお兄さんお姉さんと戦って!頼むから!」


  「えー?やだよ、負けちゃう!」


  大分弱気な声を上げる銀髪の少女。


  「だーいじょうぶ!あんたが負けることなんてないから!……多分」


  それを聞いた銀髪の少女は強く頷き、


  「わ、わかった。わ、私、やってみる」


  「よし。それでいいの」


  話がひと段落ついたのか、再びミズキの方に向くミズナ。


  「お姉さん優しいね。私たちの話を遮らないで待っててくれて」


  ミズキは以前無表情。


  「でも。後悔するかもよ!」


  ミズナは魔法を展開した。



  【青:剣技強化魔法=水 まとい】



  ミズナの剣が青く光った。


  そして水が短剣の周りを循環し始めた。


  そして勢いよく前に飛び出し、ミズキの剣と衝突した。


  ≪ズドンッ!!!≫


  隕石か何かが落ちたような音。


  それはミズナの振るった二本の短剣がミズキの長剣に当たった音だった。


  ミズキは態勢を崩される。


  後ろに押されている。


  重そうだ。


  (まさか、あれは"水圧"か?!)


  魔法によって水を纏い、その力で剣をインパクトの瞬間に一気に重くしているらしい。


  ミズキの方を見ていた戒斗は翼に声をかけられる。


  「カイト!俺らはあの銀髪をやるんだ!」


  我に返った戒斗は頷く。


  そして翼が銀髪の少女のもとに突撃する。


  剣を大きく振りかぶり、思い切り下ろす。


  だが。


  ≪ガギンッ!≫


  その剣は少女の周りに発生した木のようなものに弾かれた。


  「なんだこれ!切れねぇぞ!」


  ツカサも弓を引く。


  そして放つ。



  【緑:弾速強化魔法=突撃弓矢ブレイクアロー



  だが。


  キンッという音と共にツカサ目掛けて返ってきた。


  「うわぁ!」


  ツカサはなんとか伏せたことで避けられたが自身の攻撃で自分にダメージがくらうところだった。


  するとその銀髪の少女が口を開いた。


  「ごめんなさい。私、魔法攻撃が効かないんです。なので弓で魔法を強化されちゃうと、私に跳ね返されますよ」



  (((え…)))



  するとミズキと剣を交えていたミズナが声を上げる。


  「ばかー!ネムのばかー!なんで自分から言っちゃうのよ!」


  「え、あ、ご、ごめんなさい!わ、忘れてください!」


  「無理よ!ばかー!もう知らない!」


  ヤケ気味になりながらも剣を大きく振るうミズナ。


  それにしても魔法攻撃無効化のスキルか。


  それと木を生成することで物理攻撃も防ぐ。


  (俺と同じ紫系統の魔法の応用か?)


  それに無効化だけじゃない。


  ネムと呼ばれる彼女のスキルは

 "魔法攻撃無効反射オートマジックリフレクター"だ。

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