第33話 Dブロック予選① Pre:Contest=1
トッ。
戒斗は自分の足音に気づく。
どうやら転送は完了したようだ。
目を開けるとそこは広大な草原地帯だった。
地面は草で覆われ、ところどころに岩が置いてあった。
遠くの方を見てみると山が360度囲むように連なっており、その麓には木々が生い茂っていた。
風が比較的強く頬をかすめる。
とても気持ちが良い自然地帯である。
転装場所はランダムなようで、周りには他の
これなら即死の可能性はゼロに近いだろう。
「よっしゃ!出会った敵を全員なぎ倒していくぜ!」
翼は既に他の
「頑張りましょ!」
「足を引っ張らないように頑張ります!」
[頑張ろう!]
全員意思表示を見せる。
タイマーが30秒を切った。
だが、戒斗は少し気がかりなことがあった。
360度守り、障壁となるものが何一つとして無いのだ。
遠くからの、例えばあの山の上からの遠距離射撃なんかされたら避けようが無いのだ。
だがまぁ、まだ誰もやったことがないイベント。
何が起こるかわからないことに事前に対策を練っておくことも大切だが、そんなことを何通りも考えていても仕方がない。
戒斗は取り敢えず未来の話ではなく、今の話から進めることにした。
*
特に音はなかった。
タイマーをよく見ていなかった人なら始まったのかどうかもわからないほどすんなりと始まった。
戒斗はステータス画面を開くと、その左上に現在の経過時間と、残り
残り
何人か出場しなかったのか、やられたのか、既に数が減っていた。
ステータスを見ていた戒斗にツカサは声を上げる。
「カイトさん!」
戒斗が顔を上げると、目の前から4人の
「悪い、ツカサ」
「いえ。それよりも、どうしましょうか?」
「肩慣らしと行くかー!」
翼が答えた。
ミズキも頷く。
「防御なら私に任せて!」
リナも杖を構える。
「よし!みんな戦闘開始だ!」
戒斗の言葉に一同動き出す。
ミズキと翼は剣を構え、前へと走りだした。
戒斗は一瞬後ろに下がり、4人の敵の死角となる場所に移動すると、魔法を使った。
【紫:行動補強魔法=
敵の背後に周る作戦だ。
4人の敵はミズキと翼の突撃を見て、1人は剣を、1人は盾を、1人はハンマーを、1人は杖を構えた。
そして杖を持った
【炎:対象攻撃魔法=
放たれたその魔法は一直線にミズキに向かって移動した。
だが。
【黄:補強魔法=
ミズキはバチッと残像を残しながら横に避けると一直線に杖の敵へと向かい、剣を振るった。
≪ザンッ!!≫
一撃。
杖の敵は倒れた。
「くそっ!速すぎる!おい!右からも来てるぞ!」
1人の男が声を上げる。
翼の方を向いて警戒を促す。
だが。
「どこを向いているの?」
と、言わんばかりによそ見した盾の敵を後ろから回り込んで2連撃を送る。
盾の敵も倒れ込んだ。
ミズキはどうやらHPが低そうな
今倒した杖の盾の敵は魔力寄りの
ハンマーを持った敵とミズキが動いた。
ハンマーを上から勢いよく下ろすが、後ろに一歩下がるだけで対応されてしまう。
横に振り払ってもミズキの速さにハンマーという鈍器は重すぎる。
「く、くっそ!こうなったら!」
ハンマーの敵はドン!っとハンマーを地面に勢いよく下ろし、野球のバットのように構え直すと、
【
周りに土煙を立たせながら物凄いスピードでミズキに向かってくる。
だが、ミズキは冷静だった。
ハンマーが回転し、当たり判定のあるのは上半身の周りで回っているハンマーの周りのみ。
となると、下半身はガラ空き。
ミズキは足を曲げ、低い体勢で一瞬で相手の下半身に入り込むと、
【
一瞬目を塞ぐほどの光とともに斬られた瞬間ハンマーの動きは止まり、どさっと倒れ込んだ瞬間に、
≪ドォン!≫
と雷鳴が鳴り響いた。
キンッ!と剣を収めると、魔法を解いた。
どうやら残りは翼に任せるらしい。
その翼も剣技で相手を圧倒していた。
金属と金属がぶつかり合う音がなり響く。
互角のようにも見えたが、相手を確実に揺さぶっているのは翼だ。
敵はただ左右上下の攻撃なのに対し、翼はそれに加えて斜め、突き、払い、受け流しのスキルを持っていた。
(翼の奴、本当に肩慣らししてるな)
明らかにあと一撃で勝てるところで手を抜いている。
まだ長続きしそうだし、終わらせるか。
戒斗は剣の敵の後ろから剣を振った。
「ー!な、なんで?!」
その
「やったー!凄いみんな!」
「さすがです!」
遠くからリナと翼の声が聞こえる。
「おいカイト!なんで先に倒しちゃうんだよ!俺が倒したかったのに!」
翼はご立腹のようだ。
「長かったからついな。悪い悪い」
[同感。倒せるのなら早く終わらせてくれない?自分の戦っているところをわざとらしく見せるのは寒いわ]
ミズキの厳しい言葉。
翼は「くそっ」と言うと「次だ次!」と次の戦いの準備を始めた。
にしてもこの戦いでミズキはもちろん翼の実力も測ることができた。
言っていたことは嘘ではなかったようだ。
戒斗たちはまだノーダメージ。
魔法やスキルは使ったとしても小さな回復薬で回復できる程度の魔力しか使っていない。
「よし、進むぞ!」
戒斗の声に一同は賛成した。
*
経過時間09:00
残り人数1664/1287
現在地 とある山の山頂
「もう少しだ」
「あぁ、そうだな」
「これで冒険者(プレイヤー)どもを一掃できる」
雪が積もる山の上。
そこには6人の
2名が女性、4名が男性である。
全員フードを被り、顔があまり見えない。
大きな魔法陣の中心に立つ1人の女性は魔力を貯めていた。
その魔力は魔法陣に蓄積されており、みるみる内に巨大になっていくのである。
「楽しみだな。これがどれだけの力を示すのか」
「もうすぐ時間よ」
10分を経過した。
その瞬間、魔法陣が光りだし、光線のようなものが天高く打ち上がった。
そしてその光線は空で分解を繰り返し、草原が広がる地表に何千何億という光線が降り注いだ。
【金:"最上位"対象破壊魔法=
すかさず魔法を放っていない
1664/135
それを見た
「すげぇ!1000人以上消えたぞ!?」
「強すぎる!やべぇ!!」
魔法を放った
それを見てもう1人の
「お疲れ!大丈夫?」
「う、うん。大丈夫。でもやっぱり魔力尽きちゃった……」
「そのための私たちでしょ?」
「そ、そうだね……!」
「じゃあ、2発目いくよ!」
そして
【金:魔力操作魔法=
その瞬間、
「じゃあ、2発目よろしく!」
「う、うん!」
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