第30話 戒斗の方針 Plan ver.Kaito
戒斗は4人と解散した後、1人で裏路地に向かっていた。
4人が居てはできなかったことがあるのだ。
戒斗は薄々気付いていた。
「カイト」と「カイト2026」のアバターは酷似していることに。
「カイト」のアカウントとは、ここでは超目立つ「聖騎士エグバート」の姿ではなくただの「カイト」の姿を指している。
この姿はこのゲームを始めてすぐに、装備が既に装着された状態だったスキンを手に入れたため、初期装備のままだった。
裏路地に着いた戒斗は周りに誰も居ないことを確認すると、アカウント共有を開始した。
するとAIのアナウンスの声が聞こえた。
[アカウントが共有されました。別アカウント「カイト2026」はスリープ状態に入ります]
所用時間はおよそ2秒ほど。
反映の為の時間がかかるが、それでもとても早い方だろう。
カイトは「ディスプレイ」と小さな声で言うと、ステータス画面を表示させた。
そしてそこからスキンの欄を選択し、スキンを外した。
すると先程の「カイト2026」のアバターの姿とほぼ同じ姿の「カイト」が出現した。
違う箇所を挙げるとすれば目の大きさや肩幅の広さだろうか。
髪の色は黒であったり、身長が175cmであったり、肌の色は自分に一番違い色であったりと殆どは同じであった。
そして「フレンド」機能を開く。
するとそこには「フレンド0人」の表示が。
アカウント共有によって変更されたアカウントと元々のアカウントは干渉しない存在らしい。
つまり、例えて言うと"カイト2026"とフレンドのAさんは"カイト"とはフレンドではないのだ。
この互いに干渉しない設定がカイトにとっては好都合だった。
仮に今回の大会でピンチになり、アカウント共有を使用する事になった場合にメンバーにレベルがバレる事がないのだ。
アカウント共有は
戒斗は事前にメンバーの誰もアカウントを2つ所持していないことを確認していた為、エントリーの際にアカウント共有後のアカウントを入力しておいた。
これで運営には「カイト2026」=「カイト」であることが明らかになるのだ。
その入力をしないと、「カイト」が
何故なら「カイト」のアカウントは無所属だからだ。
だから「カイト2026」は「カイト」であると定義しておく事が必要なのだ。
そして以前翼が話していた2つ目のアカウントの存在は既に消去済みだと言うことを本人から聞いた。
だが、ここで注意しなければならない事が2つある。
1つ目は「カイト」=「カイト2026」であることはメンバーには知られたくない為、アカウント共有を使用する時はメンバーがステータス画面をあまり見ない瞬間が良いということは確実であるということ。
つまり、メンバーが戒斗以外全員戦線離脱し、戒斗のみが戦場に残された場合。
この場合は外部から戦場の
しかし、注意すべき事2つ目は外部からの直接アクセスはないとしても、外部に戒斗の戦っている姿がリアルタイムで放送されることだ。
ここで言う外部とはあくまでクロミナの世界の、仮想世界のモニターであるが、それでもメンバーの目に写れば普段とは違う戦い方に疑問を抱く可能性が高い。
つまり、「カイト」で戦うにしても「カイト2026」のように戦わなければならないのだ。
これが一番難しいと考えていた。
例え今から行く武器屋で「カイト2026」と同じ装備を整え、武器を購入したとしてもその動きや戦術が違ってしまうとバレる可能性が発生する。
だからどうしたものか、と考えていた。
しかし、カイトはアカウント共有などしなくてもいいのではないかとも考えていた。
そんなに高いレベルを目指さなくても、レベル相応のところまでグループで協力して目指せればそれはとても楽しいものだと思うからだ。
アカウント共有なんてしなくても、「カイト2026」の力でどこまでいけるか確かめることも楽しい筈だ。
そう、例え負けたとしても……。
*
カイトは武器屋へ行くと、以前にガチャで引き、溜まりに溜まった不要な武器や、防具、装飾品を"G(ゴールド)"に換金した。
それによってカイトは結構な額のG(ゴールド)を手に入れた。
そのG(ゴールド)でまずは「カイト2026」と同じ装備を購入する。
そして武器も全く同じものを買う。
持っていた金や銀でレベルや耐久力を上げに上げると「カイト2026」が持つ武器よりも強くなってしまった。
それは仕方ないだろう。
その後、カイトは道具屋へ行った。
そして道具を色々買い揃えた。
目新しい物ばかりで、実戦で使えそうな物も多数置いてあった。
その中の1つに
【
地面に叩きつけると、1分間、周囲に煙幕を発生させることができる。
風の影響を受けず、魔法によってもかき消されない。
というものがあった。
カイトはこれを10個ほど買った。
他にも回復薬やポーションがあったが、ほとんどガチャで排出した為、買わなかった。
カイトは装備品を装備すると「カイト2026」と見分けがつかなかった。
満足そうに鏡の前で何度か回ってみせると、大きく頷いた。
それはそうと、「カイト」は魔力が無い為、魔法が使えない。
(そのことも気づかれないようにする為に色々と考える必要がありそうだな)
カイトは再び路地裏へ行くと、アカウント共有で「カイト2026」に戻り、路地裏を離れてからcontactを切った。
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