第26話 探索クエスト⑥ Melt-Change
ガラガラ……。
石像が崩れるような音を立てながら剣の銅像と盾の銅像は崩れた。
途中から魔法により雷を纏い素早さを補強していたミズキ。
初めから力の全てを見せればすぐに対応されることをわかって初めは力を抜いていた。
対人慣れした動きに更に魔法によって、捕らえることができない素早さを兼ね備えたミズキはレベル500など楽勝だったらしい。
あとは杖の銅像。
翼が追い詰めていた。
だが、不審に思ったミズキがチャットを飛ばす。
[経験値が獲得できない]
そのチャットの意味は戒斗にはすぐに分かった。
(まだ完全に倒せていない?)
その時ツカサは何かを思い出そうとしていた。
(何か……あった気がする……。あの杖を持った銅像が1体だけになった時に……)
だが思い出せない。
その時。
「カイトー!何かコイツ魔法唱え始めたんだけどー!」
「?!」
近くで監視していた翼からの情報。
遠くから見てもわかる。
持っている杖を空に大きく掲げ、魔法を唱えている。
「翼!何としてでも阻止してくれ!」
戒斗の言葉に翼は魔法を唱える。
【銀:空間魔法=
以前悪魔に対して放って失敗した魔法。
今度はちゃんと決めてきた。
杖の銅像の周囲の空間が歪んだ。
そして平衡感覚を失った様子の杖の銅像は膝を地面に落とした。
そして次の瞬間。
ガコンッ!
金属が押し潰されるような音が響き、杖の銅像の体はぐにゃりと芸術作品のように歪んだ。
これが空間を操る銀の系統魔法。
地面に叩きつけられた杖の銅像は動かなくなった。
「翼!よくやったぞ!」
「これで全員撃破だね!」
リナが歓喜の声を上げる。
だが。
「まだです!」
ツカサが声を出す。
「杖の銅像はこの中でも一番強力な敵です!杖の銅像は特性として"
それを聞いた翼は
「な、なんでそれを早く言わねぇ!くそっ!コイツがあまり動かなかったのもお前が親玉だったからか!」
翼は心底悔しそうな顔を見せる。
そして杖の銅像は特性を使用し始めた。
曲がっていた体が足元から液体へと変化を始め、遂にはただの水溜りとなった。
だが、そうなったのは杖の銅像だけでなかった。
今まで倒したと思っていた銅像全てが水溜りとなったのだ。
そして次の瞬間にその水溜りは1つに集まり始め、1つの大きな集合体となった。
全てが合体したには小さい鎧兵の体だが、明らかに他の3体とは違う何かを感じ取った。
目は正面から見て左目が紫で右目が黒というオッドアイ。
まさかとは思うが……。
戒斗の思った通りだった。
「うわぁ!な、なんだこれ!」
「翼!」
翼の足元の地面が浮遊し始めたのだ。
(これは、
鎧兵は左手を前に突き出していた。
やはり戒斗と同じだ。
「翼!飛び降りろ!」
しかしそんなすぐには対応できず、鎧兵の手中に首を掴まれてしまう。
そして鎧兵の左手に宿した"黒"の魔法で至近距離から翼に攻撃をした。
【黒:対象攻撃魔法=
≪バンッ!!≫
空中で何かが破裂したような音。
その音とともに翼の身体が宙を舞った。
「翼!」
4人の方へ倒れ込む。
翼のHPはゼロになっていた。
「ツカサ!翼の蘇生を頼む!」
「え?!い、いいですけど、カイトさんは?!」
ツカサの声に戒斗は当然のように答える。
「決まってんだろ?あいつを俺らで倒す!」
リナとミズキは強く頷く。
戒斗はリナに聞いた。
「リナは金の魔法をどこまで覚えてる?」
「え、えーっと、上位攻撃魔法は1つ…覚えてる」
「なら大丈夫かな。ミズキ。ミズキも薄々気付いていたとは思うが……。あれはおそらく"銅"だ」
[わかってる。抑えて見せる]
すぐにチャットが飛んでくる。
ならば大丈夫そうだ。
(あとは俺がやった事が実っていれば……)
戒斗は魔法を使って銅像の周りを見て回った。
すると見えた。
正面から見て左側の脇の下のあたりに変色している物質が。
戒斗は何となくわかっていた。
あの銅像に今の戒斗たちの物理攻撃は効かないことは。
ミズキの神速攻撃で態勢を崩しつつ戦えることも戦えるかもしれないが、ミズキの剣の方にダメージが入り、その上相手は紫の魔法も使用できる。
近距離戦及び物理攻撃戦は部が悪い。
だとすれば頼れるのはリナの上位魔法だけ。
その威力等は全て信じることしかできないが。
「よし、行こう!」
戒斗の掛け声にミズキとリナは頷く。
そしてミズキが魔法を唱えた。
【黄:放電魔法=
ミズキの手から放たれた電気は銅像に直撃した。
そして銅像は電気によって身動きが取れなくなった。
銅は電気を通しやすい。
必死に動こうとするが、動かない。
「リナ!」
戒斗の合図とともにリナは魔法を唱え始める。
【金:"上位"対象攻撃魔法=
リナの頭の上には大きな光の球ができた。
周囲の光を吸収しているのか、みるみる球が大きくなっていく。
更に銅像が動けないにも関わらず、戒斗は魔法を放つ。
(俺の予想が正しければ…!)
【紫:浮遊魔法=
対象は敵の"右手"だ。
ガッチリと意思のままに動かすことができる状態に入った。
(やっぱりそうか!)
敵の身体は右と左で使用可能な魔法が異なる。
先程翼を一撃で瀕死の状態に陥れたということは殆どのレベルを左手に割り振っているということ。
翼はあれでもこのグループ一番のレベルだ。
それを一撃で、となると左右でレベルが違うのではと考えられる。
そして何より翼単体を
その時点で右手の魔法のレベルは250以下だとわかる。
しかも戒斗自身わかっていた。
自分のLV.(レベル)と魔法のレベルはイコールではないことを。
だから懸けてみた。
少しの可能性に。
紫の目をした戒斗は手を前に突き出し、鎧兵の右腕を上に持ち上げる。
「リナ!あの色が変わっている場所が弱点だ!」
「わかった!」
リナは頭の上に溜めていた魔法を一気に放った。
大きな光の球は脇の下に直撃した。
大きな音とともにあたり一帯を覆い尽くす目を覆うほどの閃光が輝いた。
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