第25話 探索クエスト⑤ Interpersonal

 4体の銅像は翼に攻撃を仕掛け始めた。


  これで敵NPCであることは間違いないだろう。


  戒斗は4体のレベルを確認する。


  全員500レベル。


  レベルで単純計算すると2人がかりで1体倒せるくらいだろうか。


  だが、そこで弱点や相性がわかれば勝率は格段に上がる。


  「こ、この敵は"守護兵ガーディアン"です!宝箱などを守る敵NPCAIです!」


  (ツカサは本当に頼りになるな!)


  「弱点とかはわかるか?」


  戒斗がツカサに聞く。


  しかしツカサは少し困ったように


  「それが…。この敵NPCAIは自動的に学習し、相手の行動パターンを解析し、常に変則的に行動する厄介な敵でして…。弱点という弱点がないんです」



  戒斗はそれを聞いて頭を抱える。


  ツカサはそれでも続ける。


  「でもそれはこちらも同じです!こちらも相手の行動に対応し、常に変則的に攻撃すれば勝てます!」


  (つまり普通の人間と戦うようなものだろうか)


  だが、対人戦などしたことなどない戒斗はどうするかと考えていたが、ツカサの言葉を聞いたある2人が珍しく同じタイミングで答えた。


  [それなら私得意だわ。]

  「それだったらいけるぜ!!」


  ミズキと翼だ。


  「どういうことだよ……?」


  戒斗の質問には答えず、ミズキは静かに抜刀した。


  そして剣の銅像向かって歩き始めた。


  剣を前に構えて。


  (あれは……!)


  その"競技"のことをあまり知らない戒斗でもわかった。


  両手で剣を構え、身体と剣の角度は45度ほど。


  あれは"剣道"の構えだ。


  「あー!ミズキ!俺がそいつやろうとしてたのに!」


  翼が3体の敵に追われながら声を上げる。


  その声を気にも留めずミズキは剣を振り上げた。


  そして"面"目掛けて振り下ろす。


  だが、剣を持った敵NPCAIは横に剣を払い、防いだ。


  さすがに1発では決められないか。


  しかし、そこからミズキと剣の銅像は激しい攻防戦を繰り広げる。


  時には足元を払いに下に剣を振り、それも跳ぶことで対応。


  剣を前に突き出しても下へと、避けて対応。


  明らかに対人慣れしている動きだ。


  そして何より強い。


  そこらの中級者よりは断然強いだろう。


  だが、その時。


  弓の銅像がミズキ目掛けて弓を引いた。


  それを瞬時に察知したツカサは同じく弓を引く。


  そして放つ。


  その矢は空中でぶつかり合った。


  (待て……!)


  戒斗は一つ気がかりに思った。


  「ツカサ、今お前弾道補正魔法使ってないな?」


  するとツカサはあたかも普通のことのように


  「魔法を使ってる時間がなかったので!」


  ともう1発放った。


  それは確実に弓の銅像の頭に当たった。


  ヘッドショットだ。


  弓の銅像は一瞬態勢を崩した。


  (ツカサもか……!)


  戒斗は薄々感じていた。


  ツカサの放つ矢の正確さに。


  そしてそのリロードの速さにも。


  態勢を崩した矢の銅像目掛けてツカサは更なる追撃を見せる。



  【緑:弾速補強魔法=突撃弓矢ブレイクアロー



  ドギュンッ!という音を放ちながら一直線に弓の銅像の頭へと矢は向かう。


  そして直撃し、後ろへ倒れこんだ。


  「やったな!凄いぞ、ツカサ!」


  戒斗が褒めるとツカサは照れる。


  遠くから見ていたリナも遠くからエールを送る。


  ミズキはというと。


  ガンッ!ガンッ!と剣の銅像への面を連続していた。


  時には突きも交えながら確実に相手を圧倒していた。


  しかし。


  金属と金属がぶつかり合うような音が聞こえたと思うとミズキの前に盾の銅像が剣の銅像を守るように立ち塞がった。


  2体1はさすがに厳しいか。


  戒斗はミズキに声をかける。


  「ミズキ!無理だったら言えよ!」


  その言葉にミズキは一瞬で


  [楽。盾とやるのは初]


  と返信した。


  (頼りになるなー、あのお姉さん)


  戒斗は1人でに関心していた。


  しかし、安心してはいられなかった。


  弓の銅像の様子がおかしかった。


  目が赤く光り、さっきのダメージはなかったかのようにすっと立ち上がった。

  そして静かに魔法を放った。

 


  【緑:弾数増加魔法=暴風弓矢エクストリームアロー



  放った矢は全方位へと飛び、翼やミズキにまで攻撃を与えながらツカサへと向かった。


  しかし、あまりの多さにツカサは怯んでしまった。


  そこへ横から魔法を唱えながらリナが走ってきた。



  【金:防御魔法=金色障壁ゴールドバリア



  ガガガガ!


  何本もの矢が盾に直撃した。


  戒斗もなんとか壁をうまく使って攻撃を防いだ。


  なんとか収まった矢の風。


  ツカサはどうすればいいかわからず矢の銅像の様子を伺っていた。


  そこで戒斗は作戦を伝えた。


  「ツカサ。お前は何とかあの矢の攻撃を抑え込め。それはリナの防御があったとしても構わない。2人がかりでもいいから止めるんだ。そしてミズキと翼を遠距離から守るんだ」


  ツカサとリナはこくりと頷いた。


  「そして俺が合図を出した瞬間に最大火力の魔法を放ってくれ」


  ツカサはわかりましたと真剣な顔で答えた。


  そして弓の銅像の魔法攻撃がまた始まった。


  その瞬間にツカサは魔法を唱える。



  【緑:弾道補正弾数増加魔法=自動標準弓矢オートアロー



  ツカサの前に無数の矢が出現し、一気に放たれた。


  その瞬間に弓の銅像も矢を放つ。


  矢の銅像の魔法攻撃は殆どツカサが放った魔法によって空中で何かに当たる前に防がれていた。


  カバーしきれないものはレベルの差だろうか。


  だが、それでもツカサとリナの元へ矢が飛んでくることはなかった。


  矢はまだ止まらない。


  (この後最大火力の魔法攻撃を放つとしたらあと少しくらいしかこの魔法を維持できない……!)


  ツカサは終わりに向かっていた魔力を心配していた。


  リナも心配そうに見ていた。


  戒斗は……。


  ≪ドゴンッ!≫


  矢の銅像の後ろから剣で思いっきり叩きつけた。


  その瞬間矢の銅像から飛んでくる魔法攻撃は止んだ。



  【紫:行動補強魔法=隠密ステルス



  ツカサからの矢に対応している間に後ろから攻撃させてもらったのだ。


  「今だ!!」


  身体をふらつかせる矢の銅像。


  その一瞬を狙撃手は見逃さなかった。


  狙う場所は一つ。



  【緑:弾速補強魔法=突撃弓矢ブレイクアロー



  もの凄い回転を見せ、空気を切り裂きながら一直線に矢の銅像の頭へと向かう。


  そして狙い通り頭に直撃した。


  その瞬間、その銅像は崩れ落ちた。


  これであと3体。

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