第21話 探索クエスト① Trial
武器屋に着いた戒斗達はそれぞれ店内の武器を見て回った。
翼は先程クエスト報酬でもらった鉄鉱石と金をふんだんに使って新しい愛剣の耐久値を上げまくっていた。
ツカサとリナは武器よりも防具を買い揃え、一式買って翼同様耐久値を上げた。
戒斗は流石に放置によるレベルアップしかしない武器は使いずらいという事で経験値でレベルアップする武器を購入した。
長剣と短剣の間みたいな長さの結構値のつく良い代物だ。
翼も武器の耐久値を上げるだけ上げた後に防具を買った。
そのため、鉄鉱石と金が底をつき、防具の耐久値を上げることができなかった。
なにしてんだか。
ミズキはガチャで排出した【聖】シリーズの最後の一つである
これでミズキは防具コンプリートである。
各々武器、防具を買い揃え、一気に強そうに見えた。
防御力も防具ゼロの時よりも格段に上がっているだろう。
「よっし!強くなったことだし、俺様のこの愛剣も使ってみたいし、このままクエストに行こうぜ!」
翼が元気よく提案する。
しかし戒斗がその提案を拒否する。
「待て、翼。もう22時を回ってる。また明日にしよう」
「えー、ちぇっ、仕方ないか。明日は土曜日だよな。明日またやろうぜ!」
翼からの提案。
異論はないようだ。
「ああ。じゃあまた明日の午前9時からで大丈夫か?」
リナは元気に答える。
「うんっ!いいよー!」
翼も頷く。
ミズキも答える。
[大丈夫よ]
ツカサは……
「スー……」
「ツカサ?おーい!」
ツカサは立ちながら俯き加減で動かなくなっていた。
戒斗が呼びかけるとツカサは声を上げる。
「うぅん……はっ、ご、ごめんなさい……また寝ちゃってました……」
ドサッ。
隣でショタコンお姉さんが倒れる音である。
(放っておこう)
「明日の午前9時だ。来れるか?」
「はい!もちろんです!」
ツカサは笑顔で答えた。
その後、戒斗達は第8区の公園の広場で解散した。
戒斗はそのままcontactを切り、電源を切る……と思いきや、俺はあることをする為に「カイト」で再ログインした。
3時間ほどプレイしてしまった俺は時計の針が1時を指していたことに謎の危機感を感じ、スマホの電源を切って寝た。
*
翌日。
戒斗は8時半に起きた。
「やっべ!!寝すぎた!!」
布団から飛び出して物凄いスピードで朝ごはんを終わらせ、なんとか間に合わせた。
危ねぇ……。
流石に寝坊で遅刻するのはありえないって……。
はぁはぁ上がる息を整え、クロミナに入る。
時刻は8時58分。
ギリギリセーフだ。
ログインするとそこには戒斗を待っていたかのようにリナが構えていた。
「カイト遅いじゃん!寝坊?」
ギクリ。
別に遅刻はしていないのだが、寝坊なのは確かだ。
その理由としては、戒斗は昨日の夜、解散した後1人でに「カイト」でログインし、溜まりに溜まった104もの輝石でガチャを引きまくっていた。
しかし、夜といってもまだ人はいたため、俺は防具を外し、バレないようにガチャ施設へと向かったのだ。
(ばれていないと思うんだが)
少し不安になったが、大丈夫だった筈だ。
ガチャを回したのも2階の1番端っこという誰が来るの?みたいな場所だったから大丈夫な筈。
そう戒斗は自分を正当化すると少し安心できた。
戒斗達はクエストを受ける為、また共通ギルドに足を運んだ。
今回は翼の希望するクエストを受けてもいいかな。
翼以外の4人はそんなことを考えていた。
翼はクエストが表示されている掲示板を見て悩んでいた。
「なぁ、お前ら。これどっちがいい?」
翼が指差したのは「凶暴モンスターの巣窟の探索・討伐依頼LV.300向け」と、「デスモルガネス討伐依頼LV.500向け」の2つだった。
(いや、高難易度すぎる。しかもデスモルガネスって割と最近まで倒せなかったモンスターだよな?翼、俺らの力過信し過ぎてないか?そこんところ心配だな)
しかし、前回翼の案を却下したため、また否定する勇気などない戒斗はレベルの低い方にしようと提案した。
「まずはレベル300向けのクエストの方から行こう。そこで俺らの力を試すんだ。そしたらその後もう1つの方に行けばいい。お前がいるから心配無いだろ?」
戒斗は翼の方を見る。
翼はあったりめーだ!と自身満々に答えた。
仕方ない、そのクエストに行くか。
リナとミズキとツカサからもOKサインを貰った。
ツカサはともかくリナとミズキに関しては俺に翼の対応を丸投げだな。
翼がクエストを受諾することをクエスト受付係のサクラさんに伝えに行った。
戒斗はその間自分のステータスを確認する。
そこから魔法の欄を選択し、使用可能魔法の更新を行った。
すると意外にも使える魔法は広がっていた。
【紫:伝達魔法=
(※現状上限 6人)
【紫:浮遊魔法=
(※現状上限 浮かせるモノのレベルが53以下)
【紫:視覚補強魔法=
(※明度5)
【紫:視覚補強魔法=
(※現状射程距離 半径2キロ)
【紫:行動補強魔法=
(※魔力消失で効果が切れる)
戒斗は1人でに興奮した。
(千里眼も使えるの?!隠密行動もできるし、暗視の魔法レベルMAXだし!)
戒斗は案外この魔法を気に入っていた。
単純な火力魔法とは違い、頭を使える魔法で使い所によってはとても強くなる。
それが戒斗の的を得た。
このクエストで使ってみようと考え、戒斗はクエスト受諾通知を見てそう思った。
「よし!みんな行くぜ!」
翼の掛け声で一同は共通ギルドの前にある転送装置から
目的地は西に位置する広大な荒野地帯の「カルム」だ。
*
所用時間は1秒だった。
「速ぇー!
「私、初めてだったからすごい驚き……!こんな便利なのね!」
一同感激している様子だった。
さらにこの転送装置から「カルム」にある幾つかの場所に設置されている転送装置に飛ぶことができるのだが。
「魔力結構減るわね……」
リナの言葉に一同ステータスを確認する。
すると魔力の数値が1割ほど減っていた。
距離も結構あったからかもしれない。
だが、今日の一行の目的は魔法などの試行練習を兼ねたクエスト。
この
目の前に広がる砂漠を見て
「荒野地帯じゃないね。これは砂漠地帯だ」
と、この地帯と説明書きに書かれていた事の違いをリナは指摘した。
「
ツカサが
「じゃあそこまで行くか!」
戒斗の言葉に一同賛成した。
が。
「はぁ?!また歩きかよ!」
さっさと歩きはじめた戒斗とリナとツカサとミズキを見て翼は吠える。
「
「あのな、翼。確かに時短も大切だが、今回は魔法も多く使ってみたいんだ。お前も使ってみたいだろ?今は少しでも温存だ」
「ちぇっ」
翼は露骨に悔しがると素直に従って付いて来た。
少し歩いているとミズキからチャットが届いた。
[敵の反応を感じた]
「マジで?!」
戒斗がミズキの方を勢いよく向くとミズキはこくりと頷いた。
ミズキの、微量な敵NPCAIが放つ電気反応を察知し、敵の反応を感知する魔法だ。
「どこにも見えねーぞ?」
疑いの目を向ける翼。
確かに目の前にはそのような敵の存在は確認できない。
そうだ!
戒斗はここで思い立つ。
そして魔法を唱える。
【紫:視覚補強魔法=
一気に自分の目が鳥になったかのように空へ視界が向けられる。
そして地上を上空から見ると戒斗達からは死角となっている岩陰に敵の存在を見た。
「居たぞ!斜め左前の岩陰だ!」
戒斗の言葉に翼は
「なんで敵の位置なんてわかるんだよ」
「紫の魔法だ。お前が馬鹿にした……な」
ぐっ、と返す言葉が無かった翼は口籠る。
「ミズキ!頼む!」
戒斗の言葉に1番初めに動いたミズキは岩陰を覗いた。
そこには、3体の敵NPCAIが潜んでいた。
身体は骨で構成されており、肉が無く、カタカタと不気味な笑い声を放っていた。
「ヒューマ・ボーンです!気をつけてください!」
ツカサが声を上げる。
ミズキは魔法を唱えた。
【黄:補強魔法=
バチッと電気がミズキの身体を駆け巡り、周りの砂が飛び回った。
そして腰に下げた剣を構え、
【
バチッと火花を散らしながら一瞬にして構えた位置から消え、一瞬で3体の敵の頭を首から吹き飛ばした。
「す、すご」
リナは思わずその鮮やかな剣捌きに感嘆の声を漏らした。
「まだです」
ツカサが言い放った瞬間切断され、分裂した骨の各部位はそれぞれ動きだし、集まろうとしていた。
「そいつは頭を完全に破壊しないと消えません!」
「!つまり頭が弱点か!」
戒斗は気付く。
ミズキは頭単体目掛けてもう一度剣を構えようとした。
だが、間に合わない。
すると戒斗はヒューマ・ボーン一体のレベルが10なのを確認すると魔法を放った。
【紫:浮遊魔法=
その瞬間3つの今にも胴体と結合しそうだった頭はフワフワと宙に浮き、下半身はあたふたと困ったように動きだした。
「今だ!ミズキ」
戒斗が言うとミズキは
ボンッと黒い小煙幕を放ちながら身体諸共消えるとミズキに経験値が付与された。
[はした値ね]
ミズキはそう言い放った。
「カイト!今のは、カイトの魔法?」
リナに強く問われた。
「そう。
へぇー!とツカサとリナから羨望の眼差しを向けられる。
戒斗は少し嬉しかった。
ミズキは鞘に剣を仕舞いながらこちらに戻ってきた。
「い、意外と強いじゃねーかお前の魔法……!見くびってたぜ……」
翼は少し悔しそうにしながら言った。
すると戒斗は
「まだまだこれからだぞ翼。腕試しちゃんとしとかないと、後日行われる大会で結果出せないぞ」
「!」
翼は今思い出したかのように焦り始める。
「そ、そうだった!は、早く強ぇー敵倒しに行くぞ!」
翼の掛け声に一同賛成した。
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