第18話 再合流 Re:Confluence

「お花畑でお花摘み」のクエストで予期せぬ敵、悪魔に遭遇した戒斗らは5周年記念の花火を見た後、電車で中心都市第8区にある「共通ギルド」へ向かっていた。


  電車は24時を回っているというのにも平常運転をしており、ちゃんと目的地に到着した。


  「共通ギルド前駅」に着いた戒斗達はもう0時30分を回っていたことから共通ギルドの前で解散となった。


  流石にみんな眠そうだった。


  ツカサに関しては電車に揺られながら寝ていた。


  寝落ちってやつだ。


  その隣にいたショタコンお姉さんはツカサの寝ているところを見てある意味堕ちていた。


  解散し、戒斗はcontactを切った。


  そして意識が現実に戻るとクロミナホーム画面がただのVRゲームのように3Dに見えた。


  VRMMO-Aをやっているとそこの違いは即座にわかるらしい。


  そして戒斗はHS(ヘッド・セット)を取り外す。


  目を数回擦ると慣れた手つきで携帯をHS(ヘッド・セット)から取り外す。


  その後携帯のホーム画面に戻り、そのまま電源を落とした。


  流石に戒斗は眠かった。


  色々とあった一日だった。


  そのため色々な情報処理を頭の中でした為随分疲れたようだ。


  自分自身分かり始めてはいたが、戒斗はクロミナの世界にどっぷりハマっていた。



 *



  翌朝。


  高校に登校する。


  戒斗が席に着いて眠たい目を擦っていると黒川が登校してきた。


  戒斗同様眠たそうな雰囲気を見せる。


  戒斗は聞いてみることにした。


  「黒川さんも寝不足?」


  黒川は席に座りながら答えた。


  「ええ、昨日のクロミナの5周年アニバーサリーをやってたので……」


  戒斗は感心した。


  それとともに、結構他のプレイヤーもその時間のために待機とかしてるのかと疑問に思った。


  「そうなんだ……実は俺も」


  戒斗と黒川はお互いテンションが低かった。


  今日一日は眠気との戦いになりそうだ。


  今日から授業が始まるのだ。


  高校の授業をとても楽しみだと思っていた戒斗だったが。


  今日は先生と生徒の自己紹介で全授業が終わった。


  まだ入学して間もないというのもあるのか、午後3時には終わった。


  まぁこういう日もあるわな。


  放課後になり、戒斗はまたそそくさと帰ろうと準備をしていた。


  隣では黒川がスヤスヤと眠っていた。


  相当昨日寝てない様子だった。


  そっとしておいてあげようと思い、帰ろうとした。


  ふと戒斗は黒川の声が聞こえた。


  寝言か?


  「うん…むにゃ…え…ばー…ト…わたし…の…」


  (私の?幸せそうな顔して何言ってんだか)


  戒斗は鞄を持ち上げ下駄箱へと向かった。




 *




  帰宅後。


  時計の針は15時30分を指していた。


  (そういえば、みんなとの今日の集合時間の約束してなかったな。今日はどうするんだろ?)


  思い立った戒斗はクロミナを起動させる。


「カイト2026」でcontactすると青空の下に立っていた。


  すぐ後ろが共通ギルドだった。


  戒斗はグループのチャットに呼びかける。


  [いるか?いたら返事くれ]


  このチャットはSNSアプリとしての機能とも連携されているためcontactし、仮想世界に身を投じなくとも閲覧、会話することができる。


  5分ほど待っただろうか。


  通知が届いた。


  [ごめん、遅れて。今からできるよ]


  ミズキからだった。


  するとすぐにミズキの姿が見えてきた。


  俺は依然無表情のミズキに話しかける。


  「早いな。大学は無いのか?」


  するとすぐ返ってくる。


  [大学はまだ無いわよ]


  (そういえばミズキは大学1年生だったよな。


  ということは今年度から1年生か)


  戒斗はミズキにまた話しかける。


  「話変わるけどな、ミズキ。ツカサ見て堕ちるのやめろよ……ツカサも困ってたぞ?」


  チャットは返ってくる。


  [分かってる……でもつい可愛くて。ああもう、あんな弟が欲しい!]


  (だめだこのショタコン)


  「どこがいいんだ?」


  戒斗は問いかける。


  [どこがいいって、全てよ。あのもじもじとした仕草、くりっとした目、柔らかそうな白い肌!]


  (うわぁ)


  「でもさ、ミズキ。それはゲーム内のスキンだろ?現実世界だったら全然違うかもしれないぞ?」


  [それはないわ]


  即答だった。


  「な、なんで?」


  少し怖かったが、普通に聞く。


  随分と長いチャットを書いているみたいだった。


  そして届く。


  [ツカサ君のアカウントの特徴から色々なツカサ君らしき人のソーシャルネットワーキングサービスを調べたわ。そしたら投稿してる写真とか発言とかが全部幼かったし、目の色は違うけど顔は似てたの。それで私が思うにツカサ君の年齢は推定だけど10歳くらいね。まぁ絶対なる確信はまだ持ててないんだけど。]


  (こっわ。何このショタコンお姉さん。


  普通に特定しててまじ怖いんですけど。


 顔を特定したとか、怖すぎでしょ。


 なんだ?もしかして同い年を装って近づいたとかそんなところか?


 いや、考えるのをやめよう…。


  でも、こんな人近くにいるって思うだけで寒気が凄いんですけど。)


  「そんなことしてるんなら俺がツカサに言っとくわ」


  [やめてぇ?!]


  急に平常心を乱すお姉さん。


  戒斗の両腕を掴んでくる。


  無言ながらも仕草で訴えてくる。


  「ツカサにこのことを知られたらツカサはどんな顔でどんな事を言うんでしょうねぇ?」


  戒斗は全力で煽った。


  ミズキはたくさん弁明していた。


  しかし、その話もすぐに終わったのである。


  「僕の話ですか?」


  ツカサが微笑みながら入ってきたのだ。


  びくんとミズキが数センチ飛び上がった。


  戒斗はミズキの方を見てニヤリと笑ってみせた。


  ミズキは俺を力ずくで止めに入った。


  [ごめんごめんごめん、もうしませんもうしません]


  という個人チャットを打ちながら。




 *




  ツカサが入ってきた2分後。


  すぐに翼も入ってきた。


  ツカサの話を聞いているとツカサはやはり小学生。


  年齢は11歳でミズキの推測とニアピンだった。


  翼は年齢や職業など個人的な情報は何も教えてくれなかったが、戒斗が

  「もしかして、本当はおっさんで、ニート?」


 と、全力で煽ると激怒して口を滑らせた。


  年齢は13歳。


  職業は中学生だそうだ。


  何をそんなに隠す必要があるのだろうか。


  もしかしたら自分が二番目に下だということをバレたくなかったのかもしれない。


  (見栄っ張りだな。そういう時期だもんな)


  戒斗は勝手にそんなことを考えていた。


  4人で20分ほど話しながら待っていてももリナは来ない。


  明らかおかしいな。


  だが、高校によっては例え入学したてであるとしても帰りが遅い学校もあるだろう。


  まだ学校かもしれない。


  戒斗を含めたリナ以外の4人はこれからクエストの棄権リタイアの知らせを共通ギルドに伝えに行くことにしようとした。


  翼は早く行こうぜと言っていたが、みんなで行ったほうがいいよとツカサが言ったことにより、ツカサ様第一主義者のミズキが賛成、2:1で賛成多数より待つことになった。


  それから15分後にやっとグループに通知が来た。


  [今行きます!]


  「やっとかよー!何してたんだ全く!」


  翼が愚痴をこぼす。


 するとリナは顔の前で手を合わせながら


  「ごめーん!寝ちゃってたー!」


 と、謝った。

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