第11話 新グループ結成 Formation

 リナとの会話が終わった後、戒斗はリナと話してクエストに行くことに決めた。


  その際にもう一度 招待サーチをすることにした。


  今度はグループ入隊希望者募集だ。


  招待サーチをするためには共通ギルドに行く必要があった。


  序盤から話している組織ギルドとは1つの団体だと思ってくれれば理解に難しくないと思う。


  組織ギルドは2人からなる小規模のものから何百人の名を連ねる大規模なものまで大きさは様々で、グループと呼ぶ人も多い。


  昨日の高校のグループも一時的なものであったが、組織ギルドである。


  そして、その組織ギルドの全てをまとめるのが、「共通ギルド」で、クエストに出発する手続きをするのもここ、共通ギルドである。


  共通ギルドに着いた戒斗とリナは早速グループメンバーを呼びかけた。


  招待サーチのやり方はいたって簡単である。


  共通ギルド内にあるカウンターで招待状を書き、それを受付に持っていけば完了である。


  その後即座に共通ギルド内にいる指定したレベル、魔法系統を持つプレイヤーの元にその情報が届き、承認を得られれば晴れて仲間になる事ができるという仕組みだ。


  数分後。


  戒斗とリナの元に承認の合図が届いた。


  2人は喜んだ。


  こんな低レベルなギルドに入る人が今もいることに驚きながら。


  そして承認してくれたプレイヤーが戒斗とリナの前に姿を現した。


  黒髪ショートの女剣士だ。


  だが、服装は戦闘服ではなく、上は白ニット、下は黒のくるぶしまで伸びたロングスカートだった。


  その大人っぽい服からは大人の香りがした。


  スキンからして年上だろうか。


  腰からぶら下げている大剣が重そうであるが、高い背とすらりと伸びた身体つきからは不思議と重そうには見えなかった。


  レベルも比較的高く34。


  頼りになりそうだ。


  「はじめまして!」


  リナが話しかける。


  するとその女剣士は反応しなかった。


  微動だにせず無言。


  どうしたのかと戒斗とリナは顔を見合わせていると、一通のチャットが来た。


  [はじめまして。大学1年のミズキ、女です。仲良くしてください]


  (なるほど、VC.はできないのか。)


  戒斗とリナは理解した。


  「はーい!よろしくです!ミズキさん!」


  リナが元気よく答える。


  「よろしくお願いします」


  戒斗もいつもより丁寧に答える。


  戒斗は少し緊張していた。


  するとすぐにチャットが送られてくる。


  [ミズキでいいよ]


  すぐに了解したリナは早速呼ぶ。


  「了解です!ミズキ!」


  ちらりと戒斗の方を見るリナ。


  「よろしくな、ミズキ」


  これでいいのかと、目線を送る戒斗。


  戒斗は無視られた。


  ミズキが戒斗とリナのグループに仲間入りした。


  依然としてミズキは無表情である。


  でもどこか嬉しそうな顔に見えた。


  (ミズキか、仲良く出来そうだ)


  そんなことを考えているともう一人戒斗とリナとミズキの元に承認が来た。


  目の前に現れた男は戒斗と比べると背丈が小さい。


  中肉中背で髪が異様なほどにはねている。


  アバターは黒色のコートに黒のインナー、黒の長さが合っていないズボンで腰には2本の剣が刺さっていた。


  スキンからして男だ。


  リナが話しかけようとするとその男が先に声を出した。


  「なんだこのグループは?弱い奴らばっかだな!俺みたいなつえー奴が必要みたいだ!仕方ねえ!俺がいてやるよ!」


  (なんだこいつは)


  声からして小学生だろうか。


  まだ声変わり途中のような声がした。


  でもしっかりとした、ガキ大将のような声だ。


  レベルは39。


  ユーザーネームは"純白の翼"。


  (うわっ。そういう年頃だもんな。年齢知らんけど)


  すると戒斗の元に個人チャットが送られてきた。


  ミズキからだ。


  [コイツ、殺っていい?]


  (怖っ!ミズキ怖っ!)


  戒斗は事を確かめるべく急いでガキ大将もどきの話に入る。


  「ああ、よろしく頼むよ」


  「へ!そうだな!」


  戒斗にはミズキが怒ったのも理解ができた。


  態度が年齢関係なくでかいのだ。


  だが、グループになった以上は仲間だ。


  「君のことをなんて呼べばいいかな?純白の翼って呼びづらいからさ」


  リナとミズキも隣で頷く。


  純白の翼は少し考える素振りを見せながら、

  「へっ、そうかそうだな。俺のことは"翼様"とでも読んでもらおうか!」


  その時戒斗の元に2通の個人チャットが届く。


  リナとミズキからだ。


  [ゴミ]

  [厨二]


  (おい!お前ら。まさかこれアイツの名前案か?)


  明らかに戒斗に言わせようとしていた。


  「リナはそれでいい?」


  戒斗はリナに問いかけた。


  リナからは静かにチッと舌打ちが聞こえ、俺の方を睨んだ。


  (何だ?ミズキのみならずリナももしかして怖い系か!)


  戒斗は恐怖心を覚えた。


  すぐにリナは答えた。


  「うぅーん、い、いいんじゃないかな?ミズキはどう思う?」


  ミズキも無表情ながらリナの方を睨んでいる気がした。


  なかなか話さないミズキに自称"純白の翼"は気づいた。


  「あ?おねーちゃん喋れねーの?口ついてるでしょ?」


  (ばっか!こいつ!!)


  ミズキが剣に手をかけた。


  「待て純白の翼!ミズキはチャットで話すんだ!ちょっと待ってろ!」


  戒斗は仲裁に入る。


  「そうよ厨二!待ちなさいよ!」


  リナも同情する。


  それより厨二ってお前。


  気づいていなかったみたいだからいいけどな。


  するとグループチャットでミズキの返答が来た。


  [いいんじゃないっすかー( ̄∀ ̄)]


  棒読みである。


  「だとよ」

  戒斗が言う。


  「よっしゃ、よろしく頼むぜ!カイト!リナ!ミズキ!」


 こいつは……本当にブレないな。


  戒斗的には別によかったのだが、ミズキ的にはよくなかった。


  剣を今にも抜きそうだった。


  なんとか戒斗とリナで止めた。


  まぁ、どんなに頑張っても抜刀はできないのだが。


  その威嚇が翼に効いていないのはその事実を知っていたからだろうか。


  するとまた承認の通知が来た。


「また来た!」


  リナが嬉しそうに言う。


  ミズキの溢れんばかりの怒りも収まった。


  4人の前に現れたのはまたもや小さめな男の子のアバターだった。


  レベルは15。


  一番下だった。


  だが、このグループにレベルの制限はない。


  白髪がよく似合う青い目をした童顔の男の子だ。


  上が緑のパーカーで下は黒のジャージだった。


  武器は装備していなかった。


  「よろしくな」


  真っ先に戒斗が話しかける。


  「よろしくー!」


  リナも隣で答える。


  するとその男の子はもじもじしているような口調で話し始めた。


  「あっ、は、はじめまして、あの、ツカサと言います……」


  どんどん小さくなっていく声に可愛らしさがあった。


  するとミズキから個人チャットが届く。


  (なんだ?)


  不思議に思いながらも戒斗はチャットを見る。


  グループチャットじゃあダメなのか?


  [惚れた\(//∇//)\]


  (はぁぁぁぁぁぁ!?)


  戒斗は思わず叫びそうになった。


  リナがツカサと名乗る男の子に戒斗と他2人の名前を紹介している後ろでだ。


  俺はすぐさまミズキにチャットを送る。


  [冗談だろ?]


  すぐに返ってくる。


  [ううん。タイプドンピシャ(≧∇≦)]


  まじかよ。


  こういうのなんて言ったっけ?


  ロリコン?違う、ショタコンか!


  [とにかく、挨拶くらいしろよ]


  戒斗が催促していると翼が声を上げる。


  「なんだよ、もっと声あげろよ!男だろ?しっかりしろっ!」


  まぁわからんでもないが。


  でも年上に囲まれたら誰だって緊張するだろう。


  お前は少し肝が座りすぎた、翼。


  隣にいるミズキの目は暗殺者のような目をしていた。


  あ、るわ。


  ミズキを止めにかかろうとしたが、もう手遅れそうだ。


  手には何か妙な道具が握られている。


  今にもそれで襲いかかろうとした。


  その時。


  「ごめん、翼くん。今度から気をつけます…なので、その、よろしくお願いします!カイトさん、リナさん、それにミズキさん」


  にこっとツカサは笑った。


 俺らに風が吹いた。


  暖かい優しい、春を感じさせる風だ。


  何これ?

  特殊エフェクト?


  隣のミズキが膝から崩れ落ちた。


  「ミズキ!」


  「ミズキ?!」


  戒斗とリナの呼びかけにも動じない。


  これは堕ちたな。


  数分後。


  戒斗の個人チャットに1通の通知が来た。


  [しあわせ…]


  だめだこりゃ。


 戒斗は頭を抱えた。

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