第2話 4年後① Four years later

 

 大人気VRMMOゲーム「Crosslamina ver.5.12」は今年で4周年。


 このゲームは、大手ゲーム会社"ZONE"が手掛ける最新仮想現実大規模多人数オンラインアプリケーション(Virtual Reality Massively Multiplayer Online application)通称、"VRMMO-A"(アプリケーションを除いて簡単に"VRMMO"という場合もある)である。


 VRMMOとは簡単に言うと人間が持つ五感全てをゲームの中へ投入、反映させるシステムのこと。


 人間がゲームの中でもまるで本当に現実世界にいるかのような感覚が味わえる。


  アプリは全世界で20億ダウンロード、プレイヤーの数も比べ物にならないほど多くなっていた。


 その理由として、いくつかの特殊な特徴が挙げられる。


 まず、このアプリケーションはゲームとしてだけでは無く、SNS(ソーシャル ネットワーキング サービス)としても機能し、チャットは勿論のこと、無料電話やビデオ通話ができる。


 その際にVRHSをつけなくても作動するというのがまた注目を浴びているのだろう。


  さらにこのゲームは単なる仮想世界を冒険するアクションゲームではない。


 このゲームには"放置"という概念が存在する。


 ゲームを終了する際に「ログアウト」ボタンを自身のステータス欄から選択すると、ゲーム内の自身の特定の武器のレベル及び自身のステータスが自動的に上昇するという仕組みである。


 これはゲーム業界でも新たな試みとして話題を呼んでおり、キャッチコピーの1つとして。がある。


 とは言っても、つい面白そうなダンジョンが実装されたり、報酬欲しさにアプリを起動させてしまう事もありそうで、己の欲求との戦いになると踏んでいる人もいるらしい。


 放置すれば強くなるのは分かるが、なんやかんやで放置できないのが悩みになりそうなゲームなのである。


 このように、このゲームは1つのゲームアプリケーションの発売という肩書だけで無く、新たなSNSアプリケーションの誕生という二つの意義を兼ね備えているのだ。


 その結果、会社側も予想しなかった程、VRHSが爆発的に売れ、転売やオークションに連日かけられているという。


 メーカー側も対応しているが、VRHSの入荷は3ヶ月から半年待ちらしい。




 *




 4年を経て、変わったのはプレイ人口だけではない。


 大きなアップデートによって多くの機能が追加されたのだ。


  1つの例として挙げると、この世界に"魔法マジック"という概念が追加された。


  約1年前のアップデートでステータス欄に"魔力"のステータスが追加され、プレイヤーはそれぞれアップデート時に選択する"魔力系統マジカルディセント"により系統それぞれの魔法をレベル上昇と共に自在に扱えるようになったのである。



  例えば、【系統=赤】は主に炎魔法を扱える、などと言ったゲームでよくあるシステムである。


 それは【系統魔法】と呼ばれる。


  その中には系統構わずレベルによって全プレイヤーが扱える魔法もある。


 それは【基本魔法】と呼ばれる。


  【基本魔法】はまたゲーム内の実績等で大きく変動する。


  これが"魔法(マジック)"のシステムである。


 また、最近では"組織ギルド"を作って協力して対戦するケースが増えており、メリットとすればダンジョン攻略が早い事がある。


 しかし、デメリットとしてはレアなアイテムがドロップしたとしても獲得できるのは1人だけ。


 なので組織には入らず、ソロでプレイするプレイヤーも多いそうだ。


 しかし、初心者なら楽にレベル上げをすることができる"組織ギルド"への入隊が勧められるようになっていた。


 このゲームは世界中で社会現象になっていた。

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